2013/01/21 00:00 | by Konan | コメント(2)
Vol.176: 新年特集(その3、国際)
新年特集の3回目。国際関係を取り上げます。日本の外交と世界情勢の双方を考えてみたいと思います。その前に今般のアルジェリアの件はまだ情報が錯綜していますが、より多くの方のご無事を心よりお祈りします。
日本の外交の課題は、日米関係の再構築と日中関係の改善です。安倍政権は最初の訪問先として米国を選び(ただし実際には、全くの根回し不足だったことが露呈し、訪問先はアジア3か国に切り替わりましたが)、「民主党政権下で弱体化した日米関係を再構築する」と息巻いています。私はこのコーナーで何度か外交について取り上げたことがあり、その際、沖縄の方に申し訳ないと思いつつも、米軍の存在が日本の安全のうえで不可欠であり、日米関係の重視は不可避な選択肢である旨の意見を記してきました。その気持ちに今も変化はなく、その意味で、新政権が日米関係再構築を最大の課題と掲げることには賛成です。ただ、日米関係は軍事面に止まらないことに注意が必要です。米国のアジア・太平洋州における重要戦略はTPPであり、この協力無しで米国との良好な関係を維持することは困難だからです。また、報道によれば、安倍政権の円安政策への不協和音も聞かれるようです。私は幸い(笑)TPPも円高も賛成派なので一貫性がありますが、今の自公政権はまだTPPについて踏ん切りをつけることができませんし、円安は民主党政権にとってのマニフェスト同様、選挙圧勝の原動力でした。要は政権の対米重視が中途半端に終わるか否かが大きなポイントとなります。
中国との関係については、少しずつ政冷経冷から、政冷経熱とはいかないまでも政冷経温程度に戻す気配が出てきているように思います。中国経済を支えるうえでも、日本企業や日本経済との関係は不可欠で、さすがにそれを無視・軽視し続けることは中国にとっても難しいと思います。また、胡主席の面子を失わせた尖閣国有化の決定者である野田政権の退陣により、安倍総理のような「右」の色彩が強い総理であっても、かえって関係を改善させやすいようにも思いますし、習総書記は思ったより合理主義者との話しを耳にすることもあります。しかし、尖閣について解決が難しいこともまた事実です。日本として実効支配を失う方向の行動は選択肢となり得ず、結局は日米関係の改善、あるいはフィリピンやベトナム、インドネシア、そしてインドのような国との連携により中国をけん制しながら、凌いでいくしかないのだと思います。その意味で政冷から政温程度に戻すにも、相当時間がかかるように思います。
さて、現在世界の大きな火種はイランやシリアのような中東地域や今回不幸な事件が起こった北部アフリカ地域です。こうした地域の最大の武器は資源、その中でも石油ですが、この点で大きな地殻変動が起き始めています。シェール革命です。また、地球温暖化により、北極海航路の商業ベースでの採算化も現実味を帯びています。図式的に言えば、石油をホルムズ海峡を通して輸送する時代から、シェールガスやオイルを北極海を通じて輸送する時代に変わっていく訳です。そうすると、経済的にはぐっちーも最近強調するように米国の復活の含意を持ちますが、政治的には中東の影響力低下を意味します。短絡的に言えば、中東に対し一段と強い姿勢を示しやすくなり、対イラン・シリアへの強硬策も容易になります。
こうした流れは一見すると世界の安定に結び付くようにみえます。イランがイラクのようになってくれれば安心というストーリーで、実際に長期的にはこうした方向が期待できるかもしれません。しかし短期中期的にみると、切羽詰まった中東の不安定化が、世界の一段の不安定化を招く危険性もあります。分かりやすい例は、イランからの核の拡散のような問題です。こうした暴発を防ぎつつ、少しずつ中東やアフリカ地域の民主化を進めていくことができるかどうかが、日本からは縁遠いようにみえても、国際的にみて最大の論点なのかもしれません。
今回で新年特集は終わりです。次回から日銀を取り上げてみたいと思います。
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2 comments on “Vol.176: 新年特集(その3、国際)”
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まだ、良くわからないのですが、中国に対して、昨年の初頭と違い
強気になっている気がします。経済的に中国にかなり重みを置かざるを
得ない状況から、すこしフリーハンドになっている気がしています。
アメリカから見たときの中国の経済的な重要性を徐々に減らしている
のかなと感じました。
TPPですが、江戸幕府の不平等条約、第2次対戦前の軍艦の削減、日本外交は力不足の失敗の連続だから、理念の良し悪しでなくて、庶民は懲りているだけなのです。 子供がやりたいやりたいといったて、実力不足がわかっていれば、親は止めるでしょ。
吉田さんが例外的に戦後成功したのは、第2次大戦中に軍との関係で現在の中国政治家のように、文字どおり生きるか死ぬかの可能性を潜りぬけていた経験からでしょう。
現在の日本外交力では、国連の原理原則に従い地域連携ではなくて、世界平等の取引をうったえていたほうが、良いでしょう。 その為に輸出機会が減るなら、日本人全員で節約生活をしたほうが良いと思います。 ただし、全員でですよ。 調子よく口の立つ人だけが規制緩和でもうけるのはだめです。