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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2012/12/03 00:00  | by Konan |  コメント(2)

Vol.169: 総選挙の争点(その3)


今回は原発と外交を取り上げます。1回で2つ収まる小さなテーマではありませんが、それぞれ過去にこのコーナーで取り上げたこともあるので、簡潔さを心がけます。

原発については、一時「2030年代の原発依存度0%、15%、25%」の選択肢を巡り政府内で議論が行われ、0%に近い結論になりかけましたが、結局正式な方針とはならず現在に至っています。世論調査では多くの人が0%を望んでいます。経済界は強く25%を望んでいます。この問題では、自民党とその他で大きな立場の違いがあります。自民は経済界に近く、その他の多くの政党は世論に近い構図です。そして嘉田新党立ち上げにより、本件が報道上の最大の論点になりつつあるようにみえます。

この問題、例えば仮に大飯原発の下に活断層が走っているとすれば稼働を止めて欲しいと思いますし、南海トラフで大地震が発生した際の津波に浜岡原発が耐えられないのであれば稼働を止めて欲しいと思います。また、原発維持派の根拠でもある「原発の安さ」について、福島第一の教訓をもとに計算し直すと、かなり構図が変わってくるとの各政党の主張も正しいと思います。更に、原発以外の技術の開発が新たな産業フロンティアを創出する可能性もあります。他方、そうは言っても、代替エネルギーを量的にどの程度確保できるか、またその価格がどの程度か全く不透明であることも事実で、(恐らく新党大地を除き)この不安に具体的な回答を与える政党が無いことも現状と思います。また、国家安全保障上の問題(核の抑止力をどう考えるか)や使用済み核燃料の問題(「ごみ溜めが無いから稼働を止めろ」が正しいか「再利用し続けないとテロリストに狙われる」が正しいか)など、国際的にみても原発ゼロが許容されるのかという問題もあります。

結局のところ、私はこの問題について立場を決めきれません。逆に言えば、安直に0%を主張する政党も、世論を無視し現状維持を叫ぶ政党も、いずれも信じられないと言い換えることも出来ます。官的に言えば、最も格好は悪いが、足して2で割る15%支持ということかもしれません。

外交については、中国、韓国、ロシアを巡る問題についてこのコーナーで取り上げたことがありました。その後の情勢も踏まえると、ロシアについては少し展望が持てるかもしれません。資源開発への協力とのバーターで領土問題に関し日本に譲歩する可能性が必ずしも非現実ではない状況になってきたと感じます。また、韓国についても沈静化の兆しがあります。私の仕事上も、少しずつ韓国との行き来が出始めています。対中国と異なり国力で韓国に負ける心配はない点で、少しどっしり構える余裕もあるかもしれません。竹島の実効支配を奪い返すことは極めて難しいですが、他方、例えば通貨スワップのような問題も、ウォン安が進むとサムソンの競争力を更に高めてしまうと考えると、韓国を助けることが日本のためにもなるかもしれません。

他方、中国については泥沼化しています。中国の新指導部が突然親日になるはずもなく、むしろ政権を固め切るまでは強硬姿勢を維持すると考えることが自然です。日本が実効支配している尖閣に関し、海上保安庁だけで守り切れるのか、自衛隊の投入も最後は視野に入れるべきではないかとの思いを私自身も持つところです。この主張は自民党に近いもので、この点に限っては自民支持です。ただ、最近バナナの価格下落で話題になったフィリピンや中国に対抗しうるアジアの大国インド、あるいはベトナムなどとの連携を深める外交力がより重要な鍵のようにも思います。

この2つのテーマを通じ感じることは以下の2つです。

第1に、政権には安定と構想力が求められること。安定の面では、民主党もよれよれながら3年以上政権を維持していますが、総理は1年単位です。「同一総理4年」を実現しない限り、原発や外交のように極めて息の長い検討や交渉、そして決断を要する懸案の解決は不可能です。その意味で選挙後の合従連衡の中でどの程度の安定多数が参議院も含め形成されるか、あるいはその勢いを来年7月の参議院選挙まで維持できるか失速してしまうか、極めて重要な分岐点となります。構想力の面では、分かりやすい例を挙げると、介護の関係でどの程度外国人を受け入れるかという厚生労働省が扱う問題をバーターに、外交という外務省が扱う領域でフィリピンを味方につけることは官のレベルでは実現不能です。官の常識を越える構想が政治に求められると思います。

第2は、前々回も少し触れた中央と地方の関係。この点原発と外交は少し違いがあるのかもしれません。外交は定義上国そのものの問題です。例えば中国問題を考える際、米国との同盟維持が不可欠ですし、そのため米軍基地の維持は不可避です。地元住民の方の不安を低減する施策を最大限講じつつも、いざというとき米軍が出動できる環境を維持しておくことは、どうしても避けて通ることが出来ないように思います。他方、原発は地域の判断に任せる手があるのかもしれません。最近あまり道州制という言葉を聞かなくなりましたが、道州制のエリアと電力会社のエリアにはかなり共通な面があります。こうした道州の単位で「我々は原発を維持する」「我々は原発を無くし代替を求める」と決めていくこともあり得るのではないかと思います。廃炉まで無事持っていくための技術、使用済み核燃料の問題、いざ事故が起きた際の対応など、国単位での判断が不可欠な点もありますので、全て地方に任せ国が関与しない体制はあり得ないのでしょうが、それでも地域ごとの判断が入り得る余地は相対的に大きいように感じます。

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2 comments on “Vol.169: 総選挙の争点(その3)
  1. ペルドン より
    装填・・争点・・

    組織として・・
    国家・・という組織として・・
    有機体論・・必然・・

    その点・・
    官僚組織・・単眼的・・縦割り・・神経組織よりも・・
    複眼的・・横割り・・斜め割・・神経組織・・
    生存の為には・・
    進化しやすい・・
    突然変異・・不可欠・・なのでは・・・?

  2. Audley End より
    今回の選挙は

    将来への影響が大きいでしょうし、私たち国民ひとりひとりにその選択肢がありますので、責任重大ですね。 以前は機能していた国の舵取りのシステムや方法論が、時代の流れに合わなくなっているのをまざまざと思い知らされたのが「311」でした。

    「国家の安全保障」の考え方と捉え方の根本が、長い時間の経過の中で、どうやらズレてしまっていたらしいことにも驚愕しました。 これは、海外の主要国では考えられないことなので、太平洋戦争の負の遺産のひとつかもしれませんね。

    民主党政権は多くの混乱をもたらしましたが、これは、政権を担う経験が少なかったことも一因として否めないでしょうし、日本の政治が過渡期にあることの表れとも思います。

    日本は、利便性を追求する一方で、合理的な視点があまり生かされないようなところがありますが、バランスを取りながらも、思考回路のスイッチを切り替え、直面している変化に対応できなければ、淘汰されてしまいかねないのも現実。 改革には常に痛みが伴いますが、避けては通れませんし、そこを乗り越えていかないとハードランディングする可能性が。。。

    政治家にしても官僚にしても、次の時代を担うにふさわしい人たちが既にいらっしゃると思いますし、さらに増えていくことを期待しています。 メディアも、存在意義が問われる時代になり、再編の速度が増しているような。。。 「311」は、そのことも浮き彫りにしたのかもしれません。

    ところで、中国と北朝鮮は互いの利害が一致している上に、中国にとっての北朝鮮は、ある意味、防波堤であり、前線基地。 一心同体とまではいわないまでも、セットで考えたほうが、その行動原理や深層心理が分かりやすいような気がしてきました。 シリア情勢も危険水域に入りそうで、オソロシイです。 地球にとって、人間は今や迷惑な存在になりつつあるので、本当に「待ったなし」の時代になってきましたね。

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