2012/11/19 00:00 | by Konan | コメント(8)
Vol.167: 総選挙の争点(その1)
ついに衆議院が解散されました。賭けに出た野田総理の命運がどうなるか、第三極がどの程度躍進するか、そして最終的にどのような合従連衡が行われ政権が構成されるか、興味は尽きないところですが、今回から総選挙の争点について感想を記そうと思います。順番は悩みましたが、(1)統治機構、(2)消費税、(3)原発、(4)外交、(5)成長戦略の5つの話題を、4回(選挙までの月曜日の数です)にわたり取り上げていきます。この順番は、「原発も消費税も大した問題ではない。霞が関に支配された日本の統治機構をどう壊すかが最大の問題」との石原さんの発言に触発されたものです。彼の発言は、維新の会やみんなの党などのいわゆる第三極の一致団結が難しいことへの焦りの現れのように思えますが、考えてみると、民主党の政権奪取時も、小沢さんが声高に叫んでいました。
しかし、前の財務事務次官の勝さんが「日本の支配者」とまで揶揄されたことは、記憶に新しいところです。では、なぜ霞が関支配の打破が難しいのか、官の一員の私が問うのも変な話しですが、以下の理由が思い付きます。
(1)国民に官に依存する傾向があること:以前、ぐっちーのブログで「安全な高速バスや航空会社を見分けるのは自己責任」との主張が物議を醸したことがありました。事故が起きる都度、規制強化を求める声が強まるようでは、官の支配力は維持されてしまいます。
(2)政治家に官を使いこなす力量が欠けていたこと:政治家が官僚を疎んじ遠ざけているだけでは、物事は進みません。他方で、官僚の神輿に乗るだけでは駄目なことも自明です。結局、大きな判断を示し責任もとる一方で、細部は官に任す度量や、両者の適切な役割分担が不可欠です。
(3)官が優秀であること:ここでカチンとこられた方が多いと思います。ただ、率直に言えば、共通一次第一期生だった私たちより数歳上の世代までは、とくに東大の場合、文系の学生の最優秀層が霞が関と法曹に向かっていたのは、紛れもない事実だったと思います。その官僚を御すのは容易ではありません。
ところで、この(3)は大きく揺らいでいます。私の世代では、外資系への就職は稀でした。その道を選び生き抜いたぐっちーと公一筋の私を比べ、現在世の中の役に立っているのが彼であることは一目瞭然です。そして、更に若い世代では、優秀な人ほど官離れの傾向が明らかです。たまに優秀な学生に採用プロセスで会うと、思わず「民に行ったら」と言ってみたくなります。このように質が低下してきた官に権限をそのまま残してしまうと、悲惨なことが起きます。やるべきことは、権限とそれに付随する人の数を減らすことです。
このための方策として各党が主張するのは地方分権です。県庁や市役所も同じ官なので、官の間の権限移譲は無意味に見えますが、地方では首長が直接選挙で選ばれる分リーダーシップが発揮されやすく、また地方の方が東京に比べ民より公務員を選ぶ優秀な学生が残っているようなので、意味はあると思います。
むしろ気になるのは中央と地方の線引きの問題です。次回以降のテーマとも関係しますが、例えば「基地は出ていけ」と主張する地方と維持を求める中央政府のいずれが優先するのか、あるいは、「地域振興のため原発を誘致したい」と主張する地方と(仮に原発ゼロ政策を決めた場合の)中央政府のいずれが優先するのか、すっきり答えることが難しい問題です。
総選挙の公約では、「霞が関打破」「地方の時代」とのお題目だけ取れば、似たような主張が並ぶと思います。その中で、「何は中央政府に残る役割」「何は地方に移す役割」「何は民に任すべき役割」との境界をどれだけ明瞭に示せるか、注目したいと思います。
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8 comments on “Vol.167: 総選挙の争点(その1)”
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清水寺に行けば・・
「此処から飛び降りないで下さい」
看板・・
だが・・
飛び降りた方・・
レミング(旅ねずみ)の如く・・後に続く・・集団落下・・
ネズミ・・ひどい近眼・・
美味しい臭いに・・ただ・・曳かれたに過ぎないのか・?
下には・・セーフネットはない・・
地面・・トランポリンのように・・柔らかくはない・・
舞台に・・跳ね戻れる・・保障ない・・
選挙という・・ネズミ取り・・並列・・
旧大蔵省・・友人の高級官僚・・
『官僚を動かすには・・官僚以上勉強しなければならない』
官僚は無類の勉強好き・・
とすると・・
正しい・・ツボを押さえる・・コツを・・マスターしなければ・・政治家は・・
まず・・
正しい・・リーダー選ぶ・・コツを・・
それが・・一番・・難しいか・・(笑)
地方分権・・
地方の方が・・腐敗しやすい・・
公務員の質も・・都会を除くと・・レベル低い・・
分権するなら・・
指導ではなく・・厳格な監視権限・・必要では・・・?!
違います。
その御友人とか仰られている高級官僚なる方は、間違えておられます。
古今東西、専門家集団(官僚、軍隊、etc.)を動かすために必要だったのは
『原理原則を示すこと』
です。
専門家集団以上に、専門分野について勉強をすることは
政治の政治家たちの仕事では、ありません。
何故なら、専門家集団以上に専門分野について詳しくなることは不可能だ
から。
たとえば、小泉純一郎について例に挙げてみましょう。
彼が、いわゆる郵政民営化という政策を実行に移させることが出来たのは
郵政問題について彼が、官僚以上に勉強をしたから、では
ありません。
いわゆる「事業仕分け」が何故、失敗をしたのかを考えれば分かり易い
です。
個別の事業について、無駄か否かを官僚(専門家)と議論をしても
政治家で無くても誰でも専門家に対しては勝てるはずが無いんです。
あらゆる事業が、必要であることになってしまう。
一方で、大阪府知事だった当時のいわゆる橋下維新についても例に挙げて
みましょう。
それでは何故、橋下徹は府政を「仕分け」ることが出来たのか?
官僚(府職員)以上に、府政について勉強したから、では
ありません。
もしも府政について専門家以上に勉強をして府職員と彼が議論をしてい
たら、あらゆる大阪府のあらゆる事業が必要である、ということになって
しまう。何故なら、必要な事業ばかりだから。
橋下徹が官僚を動かせたのは、
『歳入以上の歳出を認めない』という<原理原則>を示した、からです。
議論をした上で(これを否定してはなら無い)、それぞれについて必要で
あることを明らかした上で、「全部、必要(正しいこと)である」のを明
らかにした上で、それでも
『歳入以上の歳出を認めない』という<原理原則>を
示して、その上で
「その原理原則に基づいて、『優先順位』を付けなさい。」
と、指示したんです。
「全部、正しい。」けれども「全部は、出来ません。」と、やったんです。
古今東西、官僚を動かした政治家は
官僚以上に勉強をしたから官僚を動かせた、のでは、ありません
(こんなもんいくらでも実例を引き合いに出して、挙げて並べることが出
来ますよ)。
政治家の仕事は、専門家集団(官僚、etc.)「以上に」専門について勉強すること、では無くて(勉強は必要ですよ)、
『原理原則を示す』
こと、です。
その御友人なる高級官僚は、正直なところ
あまり大した政治家を相手にすること無く職務を過ごせた人物じゃあなか
ったのかしら、とその発言を読めばいちころで分かっちまいますよ。
自民党の安倍総裁が、日銀に対して物申しておられますが、これは、日銀の独立性を脅かす発言なので、政治家としていかがなものかと。。。 安倍総裁は「円安」誘導にも言及されていますが、私も、konanさんやぐっちーさんのおっしゃる通り、「国の強さ=通貨の強さ」だと思っていますので、「自民党、大丈夫かな~。。。」と不安に感じます。
ぐっちーさんがおっしゃっているように、なんでTPPを選挙の政策課題にしている政党がいるのかもわかりません。 事務レベルで話せばよい段階でしょうに。。。
解散総選挙が決まったことにより、日和見で右往左往している政治家の人たちもいるようですね。 ここ1カ月半ほど、どこに、そして誰に投票すればよいのか悩んでいましたが、このところの政治家の人たちの動きと態度を教訓にして、どうすればよいのか、かなり固まってきました。
いいえ。(1)でも(2)でも、ありません。
日本では、「国家の予算を作成する権限が、政治の側に無い」からです。
国家の予算を作成する権限があなたたち官僚の側にあるように現在、法の
下で日本では定められていることは、当り前のことではありません。
いや、むしろ資本主義制市場経済社会を国体とする国家では
国家の予算を作成することは、政治の側の仕事であることの方がふつうで
ある、と言っていい。
あらゆる組織を動かす為の権力の源泉は、古今東西
人事と予算という2つです。だからそのような国家では、優秀な人物は
官僚では無く政治の仕事を志すのです。
日本にも、「国家の予算は、政治が作成をするべきだ」と考え
闘争を挑み続ける人たちがいました
(あなたも「公」の側の人間ならば、党人派と呼ばれる人々のことは聞い
たことが必ずあるはずです)。
政権交代を果たした際に、民主党(とりわけ、小沢一郎を中心とする人々
)が掲げていた『政治主導』とは、超長期的にはこの国家の予算を作成す
る権限を官僚から獲り上げることまでを射程とし、目指すものでした。
しかし、破れました。
この敗北から政治の側が再び態勢を立て直し闘争を挑み直す為には、おそ
らく四半世紀はかかるでしょうね。
いちころで分かる・・
のは・・
霞が関の原寸大・・御存知ない事・・
友人の名・・出せないが・・
誰でも記憶にある・・日本の方針を決めた・・男です・・
其方の指摘・・CRUさんに・・解答して頂くのが・・適切かと・・・
バッファローはどこへだって連れてゆけるさ、やつらが行きたがっているところへならね。
誤読をされていらっしゃる恐れがあるかもしれませんので、繰り返しま
すが、わたしのコメント送信を読み返して下さい。
分かる、と書きましたのは、大した政治家を相手にすること無く
です。
その高級官僚の方の、たとえば優秀さだとか、について
わたし、否定してい無いんですよ。
わたしのコメント送信を読み返していただければ、たとえば(3)につい
て、日本という国家の経営に携わりたければ
優秀な人物たちはこれからもしばらくは、政治の側では無く
官の側に立って仕事をするよう志す仕組みになっていることが読み取れ
るとおもうのです。
日本の政党政治が志し取り組み続けそして破れ続けてきている大きな闘
争の一つに「主計局移管」というい有名な、いわば理念のようなものがあ
るんです。
お願いですから、あなたが、勉強をして下さい。
そしてその主計局移管という闘争の歴史について知っていただければ、わ
たしが大した政治家を相手にすること無くと畷ったのは、暗にいわゆる「
財務族」と呼ばれ続けた政治家集団たちのことであるのが分かるはずなん
です。
ぽよんぽよんさんへ、
全くあなたがお書きになられています通りです。
たとえばですね、勉強をするというのがウェッブで検索カチャカチャかけ
て摘み食いをするとかいう程度のレベルの話だとして、試しに「党人派」
と検索をかけてみて下さい。
そしてその上で、たとえばこういう出来事の新聞記事
http://www2.asahi.com/senkyo2005/news/TKY200508260337.html
を読み返してみれば、官と政治の関係について随分と見方が変わるとおも
うのですよ。
先送させていただいたコメント送信で、たとえば小泉純一郎についてわた
しがまるであたかも評価をしているかのようにも読めるかもしれませんで
したがね、わたしに言わせれば郵政改革というのは官と政治の喧嘩ではあ
れは無かったんです。
官僚同士が喧嘩をして総務省と財務省が殴り合ったら、そりゃあ財務省が
勝つに決まってるだろ、ってえ話なんです。
何故なら、そのような仕組みであるように法の下で定められているから。
まさに「バッファローが行きたがっているところへ連れていった」に過ぎ
無い話なんです。
そしてそのような政治家を相手にして職務を過ごせる官僚といいますのは
ですね、官の側の立場にしてみれば「幸せ」ですよね当然、ってお話なわ
けです。