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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2012/09/17 00:00  | by Konan |  コメント(2)

Vol.158: シャープ


日本を代表する家電メーカーのシャープの経営が苦境に陥っています。今回はその感想を書こうと思います。

シャープの経営難の原因については既に様々書かれています。私の家のテレビも「世界の亀山モデル」と書かれたAQUOSですが、巨額の液晶パネル関連設備投資の回収が十分できない中、韓国メーカーの攻勢を受けTV価格が大幅に下落しシェアも奪われたこと、円高の影響(あるいは韓国ウォン安の影響)、経営者が一時の成功でいい気になり過ぎ、銀行界との関係が悪化していたことなどが指摘されています。他方、トヨタなどとの比較で「円高は理由にならない」との冷めた意見も聞かれます。

私の理解は第1説と同じです。シャープは液晶パネル製造に関し間違いなく世界トップレベルの技術力を持ち、どんどんパネルを大型化していくことでパネル製造の最先端を走ろうとしました。また、世界的にみて、アナログからデジタルへの流れ、あるいは新興国市場の拡大など、TV市場は「バラ色」に見えました。ここで圧倒的なシェアを確保し、他のライバルを駆逐しようと考え、亀山に大きな工場を作ったというのが数年前までの成功ストーリーでした。しかし、もっとも大型の最先端パネルで世界一の技術を持っていたとしても、その一回り下の大きさのパネルの生産技術は韓国、台湾など他の国にすぐに追いつかれ、その分野で今までにない安い値段でTVを売られ始めると、途端に話しが変わります。採算悪化に加え、ブランド的にも「日本製でなく韓国で良い」さらには「韓国製が良い」との意識が消費者に強まると、むしろ過大な投資の重荷がのしかかってきます。シャープは「選択と集中」ということで液晶TVに賭けたため、これがこけるともう駄目です。これが現状と思います。
昔、シャープの方に次のような話しを聞いたことがありました。「以前、VTR(若い方はもう知らないかもしれませんが、10年ほど前までの標準的なAV機器です)は、機械の上の方にカセットの取り出し部があった。しかし、これでは上にものも置けず不便との消費者の声が出た。そこで、ビデオテープをフロントローディングで出し入れできる機能を当社が開発し、シェアを拡大した。こうした消費者のニーズを一足先につかみ、技術開発を行うのがシャープの強み」との話しです。恐らく、電子レンジのヘルシオの成功はこの路線でのものと思います。

液晶TVの方は、こうした昔ながらのシャープ路線というより、「技術と投資で勝負」という米軍さながらの焦土作戦のようなものでした。シャープの復活があるとすれば、ひとつには昔のシャープに戻ることかもしれません。現に、一頃誰も見向きもしなかった「白物家電(冷蔵庫、洗濯機の類です)」が再び脚光を浴びており、そうした分野ではシャープの底力が失われていないかもしれません。

もうひとつは、日産路線でしょうか。今回は詳しく書きませんが、日産は日本企業であることを捨て、真にグローバル企業となることで復活を果たしたと思います。台湾企業との提携を越え、もっと大胆なグローバルベースでの統合を目指すことが、過剰競争と言われるこの業界では不可避なのかもしれません。

シャープ商品の1ユーザーとして今後を見守りたいと思います。

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2 comments on “Vol.158: シャープ
  1. ペルドン より
    シャープ

    単一栽培の怖さ・・
    農業専門家ならずとも・・
    でありますから・・
    落とし穴・・深い・・

    友人が・・営業一筋・・重役・・
    の関係上・・我が家は・・一時・・電化製品全て・・シャープ・・
    今でも・・
    書院・・一番使い良かった・・
    が・・
    軽く百万を超す・・出費・・
    問題も・・多かった・・
    いい加減な処も・・多かった・・

    それが・・
    液晶一筋・・世界をリードした・・
    リードで・・
    陥穽が待っていた・・
    あの・・関西のド根性・・
    這いあがってくれるでしょう・・・

  2. 視界の狭窄? より
    にゃん。

    奢りというには酷かもしれませんが
    「持っている」という自覚のあるひとは、それだけに視界が狭くなるようです。

    昔、地方からある第三セクターの方が当時私がいた業界の東京の各社へ
    PRに来ていました。
    上司が忙しいから、おまえ話をきいておけというので応対したら
    私たちにしてみたら、あまり有益ではないお話でした。
    その方は、就職氷河期にそういうところへ就職できる
    (どちらかといえば)エリートで、話し方も明朗で、紳士的でした。
    しかしその内容は、現場で働く私たちにしてみたら、
    ままごとみたいなお話でした。
    わざわざPRにくるくらいですから、じぶんたちに自信はあるのだと思います。
    内容をうかがっても、ひとつひとつはたしかにすばらしいし、
    売り込みたい気持ちはとてもよくわかります。

    ただ、残念だったのは、その「とてもよいもの」を
    わざわざ私たちが使う理由が、見つからない、ということです。
    PRというのは、たくさんある類似の商品のなかから
    私たちが「それ」を選ぶべき理由を用意するってことですよね。

    いま成功していて、まわりに必要とされていても
    それがいつまでも続くかどうかはわからない。
    客先に対する自分たちの価値が何なのかということ、素直に考えないとと
    いつも思っています。
    エンドユーザーの現実が想像できなくなったら・・・
    崩壊ははじまるのだと思います。
    すくなくとも、客はおまえだけじゃないという気持ちが芽生えるようなら
    それは危険信号です。(あ、これはシャープの話ではありません)

    良いものが売れるのは当然です。私も小さいけど、テレビは
    AQUOSです。タイマーで目ざまし替わりにもしてます。
    でも、それを買う理由を持つ人が、どのくらいいて
    他にそれ以上の理由を提供できる競合が、どのくらいいるのか
    古い人ほどその理屈が理解できないみたいで、
    自分の仕事でも辟易するときあります。(これもシャープ関係ありません)

    私は、「ものづくりの国」とかいうキャッチフレーズは
    すごく危険だと思っていました。
    技術は、技術だけでは、必要とされません。
    それを使える販売相手がいなければ、、、そこのところをどう思っているのか
    その言葉で胡坐をかいているように見える人にはきいてしまうのですが
    まあ、プライドを傷つけられるのかまともな返事はかえってきたためしが
    ないです。
    (相手がわたしみたいな、名無しの猫だからかもしれません。
    とはいっても、商売がらみですから、説明できない人とは
    いっしょに仕事したくないです)

    CRUさんのコーナーは、文章の書き方がすごいので、そういう意味でも
    勉強させていただいてます。私は、そういうのが下手なので・・・

    シャープとかトヨタとかグローバルなことは私の視界の外ですが
    案外、身近な足元で起きていることも、問題はにたものなのかもと
    思いました。

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