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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2012/05/28 00:00  | by Konan |  コメント(3)

Vol.142: 消費税(その1)


今回から数回にわたり、消費税問題を取り上げます。結論を先取りすると「極めて重要な問題。しかし同時にどうでも良い問題」とのやや変な主張をしようと思っています。流れとしては、消費税問題に関するいくつかの立場に触れた後、「仮に消費税を引き上げなければどうなるか」考えてみようと思います。
さて、消費税について政治の世界で様々な議論が戦わされ、ぐっちーも引上げ反対の論陣を張っています。しかし、各論者が何を主張しているか分かり難いというのが、私の実感です。例えば小沢さんが未来永劫消費税を引き上げるべきでないと主張しているかと言えば、そうでもないように思います。

様々な主張は以下に分類できると思います。

(1)消費税は未来永劫引き上げるべきでない。
(2)最終的に消費税引上げは避けられないかもしれないが、少なくとも当面は引上げ議論は封印し、まずは歳出削減等他の施策の議論を優先させるべき。
(3)消費税引上げは不可避であるし、議論も必要かもしれないが、少なくとも今の経済情勢を考えると、引上げ実施は愚の骨頂であり、議論を行うことすら控えるべき。
(4)消費税引上げは不可避で議論も行うべき。ただ、実施時期は景気情勢を慎重に見極めるべき。
(5)すぐに消費税を引き上げるべき。
(なお(6)として「税上げは必要だが、消費税ではなく所得税や法人税で」との立場もありますが、今回は税上げ=消費税上げと焦点を絞ろうと思います。)

恐らく実際には(1)の主張は無く、また野田総理は(5)から(4)に後退しているので、(2)から(4)に絞り、そのうえで2つの観点から整理してみたいと思います(なお私の冒頭の変な主張は、(1)も選択肢ということを意味します)。今回はそのうち1つの観点を取り上げます。

これは、主張(3)、(4)に関係する「タイミング論」の問題です。経済学の中で「経済主体の期待をどう捉え、どう理論に取り込むか」重要な論点ですが、(3)、(4)はまさにこの点の判断に関わってきます。消費税を巡り、以下の点で期待の問題が関係してきます。

(a)消費税引上げは当然消費抑制、景気後退のリスクを伴います。現実に引上げが実施されればその影響は顕著ですが、実際には「消費税引上げ」が予想されると、その前に消費を増やし、引上げ後反動で消費を大きく減らすことが予想されます。別な言い方をすれば、「来年4月消費税引上げ」となると、間違いなく来年3月までの消費は増え、景気回復に寄与します。仮に来年4月以降は欧米を含め世界経済が回復し、その恩恵を被ることが出来ると読めば、実は消費税1年後引上げが賢い選択となります。逆に読みが外れると、来年4月以降悲惨な状況に陥ります。

(b)消費税引上げは将来の社会保障関係費の確保を目指しています。仮に現在の景気、とくに消費停滞が「将来が不確実で不安なので、消費を控え貯蓄を増やしておきたい」との行動に起因するとすれば、消費税引上げによりその不安感が解消され、消費税引上げに伴う直接的な消費削減効果を相殺する可能性があります。この効果をどう読むか。

(c)消費税を引き上げないと国債が暴落するとの議論があります(この点は後で取り上げます)。仮にこの議論が正しい、ないし正しくないが多くの人が正しいと(誤って)信じているとすると、消費税引上げは国債金利安定効果を生み、その結果投資行動を促す効果が考えられます。そうした効果をどう読むか。

結論から言えば、どの見方が正しいか判断は難しく、何かを推奨する自信はありません。あえて言えば(a)は余りに楽観的で止めた方がよいと思います。そのうえで、(b)や(c)の議論には一理はあるような気がしています。消費税引上げに伴う負の直接効果の方が大きいことは間違いありませんが、(b)や(c)によりある程度相殺されるはずということです。FRBのバーナンキ議長は、米国における歳出削減議論に関し、上記(4)の論陣を張っています。実際の削減時期は慎重に探るとしても、削減議論を行うことで市場に落ち着きを与えることは可能で、そのメリットを享受するためにも議論はしっかり行う方が良いとの主張です。彼の威を借る訳ではありませんが、(3)か(4)か問われれば、(4)を支持したいと思っています。

次回は(2)に絞り、財政の現状や問題について記したいと思います。

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3 comments on “Vol.142: 消費税(その1)
  1. ペルドン より
    さりながら・・消費税

    まず最初に・・
    歳出削減等他の施策確定(国民の了承を得られる内容・・例えば橋下市長の公務員給料25%カットと統一)
    次いで・・
    実施時期は景気情勢を慎重に見極める・・益税の穴を塞ぐ・・
    と考えるのが・・国民の常識なのでは・・・?

  2. パードゥン より
    年貢と同じ消費税

     ”景気に左右されず、年齢分布に左右されず安定的に税収入がある”ようにという消費税の発想そのものが、為政者の都合を表していて、幕藩体制で庶民を苦しめた年貢制度への回帰であって、初めからボタンのかけ違いでしょう。 現に戦後すぐに実施されながら、吉田内閣で廃止され、その後の日本の高度成長へ向かった事実があるでしょう。 国の強さは中間層の厚み、それあればこそ、グッチ指摘のオートパイロットが可能に。

     水戸光圀、上杉鷹山、歴史は産業を作ってその上米を取るのは容認されても、凶作にいつもの年貢を取り立てた殿様、代官は何と名を残しましたか? 為政者は庶民と良きも悪きも共にしなければ。

     ヨーロッパは、10%、20%の消費税だ? 何が起きてますか? 不遇な若者を作り、貧富の差を拡大し、中間層を壊滅へと導いていますよ。 

     腹の虫だって宿主を殺さないようにしているし、アレルギーを抑えるとかサービスもしえいるそうではないですか? 凶作(不景気)の時に税を納めるのがいやなら、飯を食うな、学校は休学させるというのですか?
    なぜ、江戸時代に戻そうとするのですか?

     消費税を上げれば上げる程、あづかり金を納めないでいい益税で、越後屋さんや、中小企業、商業を見方につけて、国民を分断までして推し進めなくても良いと思います。

  3. Cielon より
    畏れながら

    選択肢の中に、
    (7)増税はしない。歳出を半分にカットして税収の範囲とする。弱肉強食上等。

    いかがでしょうか。

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