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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2011/08/01 00:00  | by Konan |  コメント(2)

Vol.99: ポールケネディ


3週間ほど前になりますが、読売新聞(7月10日)を眺めていたら、「地球を読む」というコーナーで、英国の歴史学者であるポールケネディ氏が「ドル支配終えん」という投稿を行っていました。ぐっちーは有料メルマガで「門外漢」と切り捨てていましたが、ぐっちーや私の世代にとり、Rise and Fall of Great Powers(日本語題「超大国の興亡」)という本で1990年頃大ブームを巻き起こしたビッグネームであり、記事に目がとまった次第です。
読んでみると、彼がドル支配が終えんすると信じているかどうか、曖昧な投稿内容で、むしろ「仮に2025年にドル支配が終えんし、ドル、ユーロ、人民元の3準備通貨体制に移行するとすれば、どうなるか」との問いかけが投稿の主な内容です。まず、世界銀行が5月17日に公表した地球規模の経済バランス大変化予測に触れ、「2025年に3準備通貨体制に移行する」との見方が世界銀行から出されたことに触れています。次に、6月2日のウォールストリート紙の中国特集を紹介し人民元の地位向上に触れ、さらに米議会での民主・共和党対立の中で、ドルの信認が揺らいでいると触れます。

そのうえで、「ユーロにも人民元にも問題はある。ドルは粘り強いかもしれない。しかし、仮に2025年に3準備通貨になったとしたら、世界はどう変わるのだろうか」と問題提起します。

答えは必ずしも明確ではありません。まず、中国も欧州も国際的責任を引き受けざるを得ない点で、単純な勝者ではないとします。次に投資家が最大の勝者であることは間違いないとします。そのうえで、ドルを刷り増しさえすれば巨大な債務から逃げられた米国がその逃げ道を失うことの深刻な影響に触れています。最後に「通貨の問題は新型iPodの発売より重大な問題」として記事が閉じられます。

私自身は、おそらくぐっちーもそうであるように、ドルは粘り強いという見方をとっています。欧州は今回の危機で曝け出されたように、地域の意思決定プロセスに問題をかかえています。中国はどこまで市場機能を信じ切ることが出来るか疑問が残りますし、何よりも人口減がそう遠くない時期に始まるわけで、中国が経済的にどこまで超大国になり切れるか、十分確信を持てないからです。

基軸通貨は、価値が下がっても受け取ってもられる特権通貨です。その特権に胡坐をかき、信認が突然失墜すると、まさに世界危機です。しかしほかに有力候補がいなければ、結局信認が失墜せず、その地位に踏み止まることができます。2025年まであと14年。さすがにぐっちーも私も生きていると思うので、基軸通貨の興亡問題、楽しんで見ていきたいと思います。

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2 comments on “Vol.99: ポールケネディ
  1. ベルドン より
    ポール・・

    公安の調査と似て・・
    まず結論・・それを割り当てていく・・歴史観・・では・・?

    「楽しんで見ていきたいと・・」
    我が国の首相次第・・楽しめるか・・否か・・なんと楽観的な・・・(笑)

  2. st より
    今更、

    今更、財政債務をどうのこうのしようとしても無理だ、ドルも円も紙切れになるまで行くしかない、物価さえ安定していれば遣って行けると思う、結局石油文明世界だから石油が自由に消費出来なくなった時点で人類社会のパラダイムシフトが起こる筈、それを世界の知識人が作る事になるんでしょう。

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