プロが語る世界情勢・政治・経済金融の最前線!

The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2011/07/18 00:00  | by Konan |  コメント(2)

Vol.97: 原発と成田闘争


ぐっちーは原発問題に関し「日本政府は命を大事にしていない」と批判しています。私もその意見に共鳴しますが、最近、この点と関連し自分が子供の頃起きた成田闘争を思い出すことがあります。

成田空港建設時、建設反対派住民から土地を強権的に収用しようとした国の動きに対し、強力な抗議行動が起こりました。浅間山荘事件に似た武力抗争が行われました。

日本国憲法では国民の財産権は保障されます。ただ、「正当な事由」がある場合、「正当な補償」を行えば財産権の制限も可能とされています。成田闘争に即して言えば、世界第2の経済大国の首都に相応しい国際空港の建設という正当な事由と、土地代の正当な支払いがあれば、所有権を国に移すことができることを意味します。

成田闘争では、過激とも言える反対運動に対する批判もありましたが、国に対する批判が相応に強かった記憶があります。余り便が良いとは言えない成田を選んだことが批判の背景にはありましたが、「国が強権的に土地を収用する」こと自体への反発も強くあった印象です。その背後には、第二次世界大戦に至る国家主導への反発・反感があったのかもしれません。

こうした動きを経て自信を失った日本政府は、その後、強権的な物事の進め方を控え、「時間をかけ、十分金を払う」ようになりました。

福島において「命を大事に」ということは「危ない原発周辺から強制的かつ半恒久的にに退去させる」こと意味します。「危ない原発」は、事故発生前後を問わず国の原発政策の失敗を意味し、責任逃れをしたい立場から認めたくない部分です。それに加え、「強制的・半恒久的退去」は成田での土地の強制収用と同じことを意味し、そうした強権手法への自信を失った政府には取り得ない手法です。責任逃れと自信の無さの2つが重なった悲劇的な事態と思います。

メルマガ「新・CRUのひとり言」を購読するためにはご登録のお手続きが必要です。

当社に無断で複製または転送することは、著作権の侵害にあたります。民法の損害賠償責任に問われ、著作権法第119条により罰せられますのでご注意ください。

2 comments on “Vol.97: 原発と成田闘争
  1. ベルドン より
    関連

    冷静な観察・分析と思います・・

  2. st より
    結局分った事は

    人類は戦争と原子力には手を出したらいけないと言う事なんでしょうね。

コメントを書く

* が付いている欄は必須項目です

*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>

いただいたコメントは、チェックしたのち公開されますので、すぐには表示されません。
ご了承のうえ、ご利用ください。