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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2011/06/13 00:00  | by Konan |  コメント(1)

Vol.92: ストラスカーン


今回も旧聞ネタで申し訳ありません。IMF専務理事問題の感想です。

ストラスカーン前専務理事の逮捕劇は衝撃的でした。私は一度彼の話しを直接聞いたことがありますが、IMF内で確固たる地位を占め、指導力を発揮し、かつ次のフランス大統領選挙で野党最有力候補とまで言われた人が起こした事件ですから、最初に感じたのは「まさか」「サルコジの陰謀では」ということです。ある知人の米国人女性は「娼婦でも呼べば良いのに」と話していましたが、これも「信じられない」ということの裏返しの表現と思います。結局、フランス系ホテルなので揉み消せると油断した説が濃厚ですが、「ぐっちーも気を付けてね」というのが、友人としてのメッセージです(笑)。

ところで、IMFの専務理事とは何かということは余り理解されていないかもしれません。IMFは第二次世界大戦後のいわゆるブレトンウッズ体制構築の一環で作られた組織で、ワシントンに本拠を置き米国が最大の資金拠出国ですが、そのトップである専務理事は欧州出身者が占めるという、米欧のバランスの上で成り立ってきました。IMFのもともとの役割は固定為替相場制度を維持するための各国経済の監視でしたが、最近ではギリシアやポルトガルの危機でも注目されているように、危機対応が役割の中心となっています。具体的には、(1)世界各国から拠出金を集める、(2)国が通貨危機等に陥った際に拠出金を元手に資金支援を行う、(3)危機が起きないよう各国経済を監視し、万一危機が起き資金を貸し付けた場合には、返済を確保するよう借入国を指導するという役割を負っています。新興市場国、途上国は勿論、米日をはじめとする先進国の経済政策にも文句を言ってくる口うるさい組織でもあります。単純に言えば、世界の中央銀行のような役割でしょうか。

そうした組織のトップですので強い力を持ち、例えばG7やG20の財務大臣・中央銀行総裁会議にも参加する、ガイトナー長官やバーナンキ議長クラスの地位とも言えます。

後任にはストラスカーンと同じフランスのラガルド経済相が選ばれそうな雰囲気です。「またフランスか」との批判もあるでしょうが、彼女の優秀さ、英語力の高さは万人が認めるところで、容姿も目を引くものがあり、何といっても「ストラスカーンのようにメイドを襲ったりしない」という点が強みと思います。

他方、欧州以外ではメキシコ中銀総裁等何人か名前は挙がりましたが、難しい情勢です。日本では10年ほど前に当時財務官だった黒田さん(現アジア開発銀行総裁)を専務理事に推す動きがありましたが、今回全くそうした動きはありません。中国やインドの台頭を考えると、今回が事実上最後のチャンスだったとも言え、本当に残念です。世界に通用する公の人材作りという点で、日本が完全に後れを取っていることが改めて印象付けられてしまいました。

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One comment on “Vol.92: ストラスカーン
  1. ベルドン より
    ストラスカーン

    よりも・・
    黒田さんの事を・・書きたかったのでしょう・・

    そのような国際的人事は・・御承知のように・・日頃の根回しが・・

    目は口ほどものを言う・・にしても・・やはり・・口の方が強い・・ウインクばかりしていても・・眼筋を鍛えるだけでは・・・

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