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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2011/01/10 00:00  | by Konan |  コメント(1)

Vol.70: 新年特集(その2、世界経済(1))


新年特集の2回目。世界経済(その1)です。今回は欧州と新興市場国、次回は米国とまとめという構成を考えています。

欧州については、ユーロという通貨の問題と、実体経済の問題を分けて考える必要があります(無論両者は関連しますが)。通貨ユーロはとても無理がある存在です。ドイツとギリシアで同じ通貨が使われる、政策金利が欧州中央銀行が決めるもの1つであるということにより、欧州域内で、為替変動や国ごとの情勢に応じたきめ細かい金融政策対応による調整が行なえないためです。ドイツでは、常に通貨が安過ぎ、金利が低過ぎで、景気が過熱しインフレが生じる恐れを抱え、逆にギリシアでは、通貨が強過ぎ、金利が高過ぎで、景気が一段と後退する恐れを抱える仕組みが、単一通貨ユーロです。良く言われるように、ドイツマルクが離脱する、ないし、ギリシア、ポルトガル、アイルランド等の通貨を切り離すこと無しで、問題は解決しません。しかし、これまでの欧州統合にかけてきた努力を無に帰す決断も容易ではなく、結局、不安定な国を沢山抱えながら、そして不安定さが増幅されながらも、必死に支えようとする動きが続き、通貨ユーロは不安定なままというのが、恐らく最もあり得る姿です。

ただし、ドイツのような国の景気にはユーロ安がプラスに働くため、欧州景気全体の崩壊にもならず、傍から見てとても不思議な状況が続くとみています。

次に新興市場国、とくに中国です。既に金融政策は引き締め方向に変化しています。単純に言えば、リーマンショック後の世界経済の混乱に際し、財政・金融両面でアクセルを踏んだ結果、世界経済の下支え役となってきた中国が、インフレ等の問題を無視し得なくなってきた訳です。考えてみれば、金融を引き締めるのではなく、人民元を切り上げることが対応の正論にも思います。インフレ圧力は弱まり、輸出減速が景気の過熱を抑えるからです。この点、なぜ為替ではなく金融政策を選んだのか、理由は良く分かりません。ただ、最近何度か「中国は、日本経済が駄目になったのは、プラザ合意以降の円高化政策のためと考えているのではないか」との話しを聞いたことがあります。真偽は不明ですが、案外事実なのかもしれません。

さて、問題なのは、これまで牽引役であった中国をはじめとする新興国経済がブレーキを踏み始めたことです。長い目でみれば、加熱を防ぐことは極めて大事で正しい政策ですが、仮に先進国経済がもたつく中でのブレーキとなると、世界経済にとって打撃となりかねません。結局のところ、「米国はどうか」という点に論点は帰着します。次回はこの点に触れたいと思います。

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One comment on “Vol.70: 新年特集(その2、世界経済(1))
  1. ぺルドン より
    ブーメラン政策

    投げて・・
    当たらなければ・・
    手元に戻ってくる・・
    当たれば・・
    みんな・・幸せ・・

    ユーロには・・
    青い血が・・流れている・・・

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