プロが語る世界情勢・政治・経済金融の最前線!

The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2010/08/23 00:00  | by Konan |  コメント(1)

Vol.50: バーゼルⅢ


金融ネタの3回目。今回は、バーゼル委員会で議論中の、銀行に対する新たな規制(バーゼル3と呼ばれます)について取り上げます。まだ議論の途上で、山場は9月から11月にかけてとなりそうなので、恐らく後日もう一度取り上げることになると思います。

バーゼル規制と言えば、1980年代、日本の金融が隆盛を極めていた頃、「競争条件の公平性を確保する」ことをひとつの目的に、国際的に活動する銀行の最低自己資本比率が8%と定められました。わが国でよく「邦銀叩きのための欧米の陰謀」と語られる話しです。ただ、結果的にみると、大手行が増資を迫られたお陰で、バブル崩壊後の金融危機においても、三菱、住友のような銀行が生き残れたとみることも出来ると思います。

バーゼル2は、漸く一昨年頃から導入され始めた第2段階の規制。米国では未導入のまま、今回の金融危機が発生しました。バーゼル2の発想は「金融機関の高度化したリスク管理技法を信じよう」というもので、バーゼル1が一律の規制であるのに対し、高度なリスク管理技術を持つと監督当局に認定されれば、ある程度自己資本を削減することが認められます。腕がよければ備えが小さくても良いと言う発想で、これを梃子に、金融機関にリスク管理の高度化を促す戦略とも言えます。

しかし、今回の危機により「銀行の資本は危機の備えとしては小さ過ぎた」ことが炙り出されたとの考えの下、更なる規制の強化を目指す動きがバーゼル3です。ポイントは、
(1)銀行に求める自己資本の質と量を高める、
(2)自己資本比率の分母となるリスクアセットの計算方法を厳格化(分母が膨れ、比率が下がる方向に)する、
(3)流動性や、レバレッジ(リスクアセットの計算上、例えば国債をいくら持っていてもゼロとカウントされますが、そうした資産内容の差を捨象し、持っている資産の額対比で一定の自己資本の保有を義務付ける考え方)に対する規制を新たに導入する、
といった点です。

これまでの議論では、上記の(2)、(3)について概ね合意が得られ、(1)のうち「質」の点も議論は終息して来ました。残る論点は(1)の「量」、すなわち、現在の「Tier1とTier2合計で、リスクアセット対比8%」という基準をどこまで引き上げるか(上げないか)、また、新基準の実施タイミングをどうするかという点に絞られて来ました。

新たな基準のイメージとしては、Tier1を「質が特に良い中核的なもの(普通株式や過去の利益の内部留保など)」と「その他」に分け、「普通株式等の資本の比率」「Tier1比率」「Tier1 とTier2合算に対する比率」の3つの最低基準が設けられることになりそうです。また、さらにその上に、「念のため」ということで、自己資本のバッファーを持たせることも検討されています。バッファーを割り込んでも国際的な銀行活動自体は継続できますが、配当規制がかかることが想定されています。

この水準がどうなるか、実施のタイミングがどうなるかという点は、世界経済にとり重要な問題です。危機を繰り返さないという観点からみれば、「早く高い基準を求める」ことになりますが、そうなると、金融機関が資産削減に走り、ただでさえ脆弱な世界経済に大きな打撃を与えかねません。このため、9月の「総裁・監督当局長官会合」から11月の「ソウル・サミット」にかけての最終的な議論の行方について、是非注目して頂ければと思います。

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One comment on “Vol.50: バーゼルⅢ
  1. ぺルドン より
    バーゼル

    異端審問所の・・
    レバレッジを使った拷問・・
    これを使うと・・
    身長が・・
    驚くほど・・伸びだ・・
    伸びても・・
    健全とは・・言えない・・

    新異端審問所の・・隆盛が・・興るのだろうか・?・・・

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