2012/04/09 00:00 | by Konan | コメント(1)
Vol.135: 中央銀行は打ち出の小づちか(その2)
まず思い浮かぶのは、「金利の引下げ」です。ある世代以上の読者の方は「公定歩合」という言葉をご存知と思います。これは日銀が民間銀行に貸し出す際の金利を意味し、その引下げが金融緩和の最も普通な手段でした。因みに、現在は公定歩合という言葉は使われなくなり、「基準貸付利率」という言葉が用いられています。そして、日銀が金利引下げのターゲットとするのは、日銀から民間銀行への資金供給金利ではなく、インターバンク市場(民間銀行間でお金を貸し借りする市場)における無担保オーバーナイト金利(担保無しで、一晩お金を借りる際の金利)となっています。こうした細かい点を忘れれば、「金利を引き下げる」ことが緩和の第一の手段であることに、昔も今も違いはありません。
この「金利引下げ」には、上記の基本形に加え、2つのバリエーションが加わっています。上記の基本形では、「金利」は「オーバーナイト」のようにごく短い期間の金利を指しますが、景気をより刺激しようと考えるなら、「もっと長い金利を下げよう」と考えることが自然です。そのやり方が2つあります。
1つは、長期国債のように期間が長い商品の買い入れを増やすことです。1年物国債だけを買うと1年物金利にしか影響が及びませんが、10年物国債を沢山買えば、10年物金利の低下も望めるとの考え方です。
もうひとつのバリエーションが、以前日銀が行い、また今も別な形で行っている「時間軸効果」です。金融政策は通常、その時その時の情勢を踏まえて実施するもので、今月金利引き下げを行う際、来月更に引き下げるか、据え置くか、逆に引き上げるか、何ら約束を行いません。ところが、たとえば「物価が前年比+1%上昇となるまで絶対に利上げは行わない」と約束するとします。市場関係者が「どう考えても物価上昇率が+1%を超えるのは3年先」と考える場合、この約束は、今後3年間引上げ方向の政策変更は無いと解釈され、その結果、3年物金利まで低位安定します。
ひとつは、量的緩和と呼ばれる政策です。「大量のお金を市場に供給する」という量で勝負の政策です。ここで前回の話しを思い出して下さい。中央銀行が大量に資金を供給するためにどうすれば良いかと言うと、民間銀行から大量に資産(例えば国債)を購入し、その代金として民間銀行が中央銀行に預けている預金口座に大量のお金を振り込みます。民間銀行からみると、資産が国債から中央銀行への預け金に変化する訳です。国債は金利リスクを伴いますが、中央銀行への預け金は金利リスクが無い分、民間銀行が抱えるリスク量は減少します。また何にでも使える流動性が極めて高い持ち金が増えることも意味します。そうなると、民間銀行は「もう少しリスクを取って企業や家計への貸出を増やしてみよう」といった行動をとりやすくなり、結果として金融が緩和する訳です。因みに、最近話題のECBの最新の金融政策、いわゆるドラギマジックは、「短期ではなく3年間」と、この量的緩和(担保がある限りいくらでも貸してあげるよ)を組み合わせた画期的新政策ととらえることができます。
以上まとめると、「短期金利引下げ」という古典的政策に加え、「長めの金利」という点で2つのバリエーションが加わり、さらに「量的緩和」と「質が悪い資産の買い入れ」というバリエーションも加わったというのが、ここ10年ほどの世界の中央銀行の「進化」の歴史です。そしてこの全ての点での先駆者が日銀でした。日銀の悪口を言う人は多いですが、少なくとも新たな施策を恐れないという意味で「臆病でない」ことは確かと思います。
次回さらに中央銀行の話しを続けます。
当社に無断で複製または転送することは、著作権の侵害にあたります。民法の損害賠償責任に問われ、著作権法第119条により罰せられますのでご注意ください。
One comment on “Vol.135: 中央銀行は打ち出の小づちか(その2)”
コメントを書く
いただいたコメントは、チェックしたのち公開されますので、すぐには表示されません。
ご了承のうえ、ご利用ください。
とすると・・
人材が要・・鍵・・
任期が切れる・・総裁・・我等の守護神・・あるいは・・守護天使・・
白雪姫を取り巻く・・七人の小人・・二人欠けていては・・?
CNN・・今評判の書籍紹介・・
デフォルト通史・・行詰ると・・国は古代から踏み倒してきた・・
中央銀行総裁の愛読書になるだろうか・・・??