2010/07/26 00:00 | by Konan | コメント(7)
Vol.46: 消費税問題(その2)
前回に続き消費税問題です。「他人任せにせず、日本国内でもしっかり考えないと」という趣旨で前回締めくくりました。
ひとつの観点は、日本経済の生産性や成長率、すなわち成長戦略の問題です。今回は立ち入りませんが、前回の資金余剰・不足に則して言えば、家計の余剰が急速に縮小しないようにするため、何が出来るかという観点です。前回のブログにコメントも頂いたように、財政の話しだけを議論していても閉塞感があり、先が見えてきません。
そのうえで、今回は、もうひとつの観点として、「財政の不足が膨張してもよいのか」という点を取り上げます。「成長できなければ、結局こういう悲しい選択を迫られる」という感じでお読み頂ければと思います。
財政については、これまで、景気対策として実施される公共事業の財源として、国債が大量発行される構図が続いてきました。小泉内閣時代よく「プライマリーバランス」と言われたのは、そうした財政の持つ景気循環を調整する機能を余り発揮せずとも、日本経済が自律的に成長してける状況を作り出し、税収で(国債費を除く)支出を賄えるようにしようという議論でした。
今後直面する課題は、こうした景気循環対応ではありません。年金、医療に代表されるように、少子高齢化、人口減少という日本経済が抱える文字通り構造的な問題に対応するための支出が増えてしまうことです。消費税問題の根幹は、そのための財源を手当てせずに支出を膨らませ、財政赤字を更に拡大してもよいのか、という点にあります。
ひとつの答えは年金や医療に関する公的支出を抜本的に圧縮することです。もうひとつの答えは消費税引き上げ。さらにもうひとつの答えは「赤字が膨張しても良い」と考えること。3つめについて、繰り返しになりますが、「運次第では結果的に大丈夫かもしれないが、他人任せで良いのか?」というのが私の感覚です(「官」の感覚と言い換えることも出来ます)。
圧縮と消費税は実は表裏の関係です。圧縮でつらくなるのは高齢者。他方、所得税でなく消費税を選択することでつらくなるのも、収入が無く支出が多い高齢者。結局のところ問われるのは、「お年寄りを大事にするという日本の美風を壊す」か、「運に任せ美風を維持する。運が良ければよいが、運が悪いと子供たちが悲惨な目に会う」かです。ちなみに、触れなかったもうひとつの選択肢があります。それは、所得税率や法人税率の引上げです。しかし、これにより日本経済の活力を失わせてしまうと、成長力アップどころではなくなってしまうというのが、私の見方です。
くどくどと書きましたが、日本経済の生産性、成長率を維持する努力を前提としたうえで、それが上手くいかない場合、
1)お年寄りに負担いただく(消費税、あるいは年金等のカットで)
2)企業や金持ちに一段と負担させる
3)財政赤字が膨らんでも大丈夫と運に任せる
のいずれを選択するかが問われるということです。3年後の総選挙(タイミング的には、衆参同時でしょうか)で蹴りをつけなければならない、恐らく最大の問題です。
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7 comments on “Vol.46: 消費税問題(その2)”
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CRU様、いつもぐっちー氏とは違う視点からの深い論考を興味深く拝見しています。
さて、今回の消費税問題ですが、欧州では軒並み高率の消費税を取り、年金には手厚く分配しています。また、食料品などは税率が軽減されています。老後に備える貯金の必要を減らすには、これが一番ましな答えではないでしょうか。金持ちほど多く支出しますから、消費税は、ある程度金持ちの負担も増やせます。
今、税金を上げることに我々が懐疑的になってしまうのは、分配の不公平性が温存されているために、増えた税金が本当に我々に還元されるか信じられないからです。
そして、分配の不公平性が温存されている最たる原因は、一票の重みの格差ではなかったでしょうか。マスコミはそこに口をつぐんで、官僚政治にその責任をかぶせようとしていますが、本当に問題なのは、地方の有権者の票を不当に重くし、地方により多くの税金を分配することで、組織票を固め、発言権を維持して来た自民党政治の構造です。小沢流の最大の問題は、その構造を維持したまま利用しようとしたことでしょう。
子供手当、高校無償化など、晩婚少子傾向の都市住民に不利で、早婚多子傾向の地方住民に有利な政策、郵政法案など、地方票重視の根幹は、票の重みの違いにあると考えれば理解しやすいです。
20年前までは都市票を重くしたら共産党に有利だったでしょうが、時代は変わりました。そろそろ都市票を重くして、高付加価値を生んでいる我々知識産業従事者に厚く還元した方が、財界の利益にも、マスコミ人の利益にもかなうのではないでしょうか。
公平に税金が還元される見通しが立てば、消費税をあげることに抵抗は少なくなるはずです。
公務員人件費の削減・・が・・ない・・
それに
財政的観点・・からの・・再生・・のみならず・・
相当歪んできている・・司法の再構築も・・・
国家財政の破綻に関して、公務員には反省して頂きたいと思います、もう二度とこの様な事が起きない為にも、みんなの党が言っている様な抜本的な公務員制度改革を断行して頂きたい、問題の本質をよく分っているようです、昔公務員の管理職の人がこんなこと言っていました「公務員の管理職の仕事は部下が仕事しているか見張る事が仕事なのでそれ以外の仕事をするとそれが出来ないから、それ以外の仕事をしてはいけない事になっている」と、これには驚いた、天下りの官僚はこんな感覚で仕事場に通ってるんだろう、一事が万事とは言わないまでも、公務員制度改革は遣らないといけません、しかしみんなの党は増税しなくても経済成長4%この先続けて行けば財政再建可能だと能天気な事を言っている、画餅もいいとこだ、経済の本質がまったく分っていないんじゃないんだろうか、政治家や官僚に経済成長なんか出来っこない、それが出来るのは民間です、民間に頑張って貰うしかない、この先の経済成長は分らないが民間は必死に頑張るのは間違いない、npo業界も大きくなって社会成長に尽力してくれるでしょうから、後は公務員の反省を待つだけです。
国家公務員の給料は若いうちからもっと引き上げるべき、それとセットで天下りを無くす議論もできるかと。
官僚自身の利益は低リスクの安定と高給でまかなってもらい、国家の利益となる仕事に精を出してもらいたい。
賢いはずの官僚が利益誘導型の政治家のいらない空港等の箱物公共事業を心から望んでいるとは思えない。
それもこれも年を取ってから天下りとセットでしか、国家を考える官僚に報いる事ができない状態にしているのが問題かな。
あ、地方公務員は全く別ね。
いつも興味深く拝見しております。
医療従事者として、医療・年金といった社会保障の圧縮に興味をもっており、今回コメントさせて頂きます。
なかでも医療保険の問題は、患者自身が全額を負担するわけでなく(さらに高額療養費制度で上限がありますから)できることならなんでもやっておこうとなりますし、提供サイドは自律尊重原則(患者意志の尊重)、善行原則に従ってサービスを提供しますから、医療費は増大するという傾向となる(マクロでみた際の分配的正義は優先順位が低くなる)点にあります。
医療費抑制のために、病院や薬局からの請求を粗探しして「削る」ということも行われていますが、それは焼け石に雀の涙程度の効果しかない上、現場の意欲を削ぐものになっています。総額抑制の為には、さらに一歩進んだ管理化が必要だと感じます。
例えば、、、健康食品やかぜ薬・虫刺され薬などのOTC薬など一定額まで給付を認めるとか、75歳以上の人が5年間受診しなかったら旅行をプレゼントするといった、一定額の範囲内において患者自身にインセンティブや選択権を与える方法もあると思います(いま適当に考えたので稚拙ですが・・・)。
1年で国民1人38万、高齢者83万の医療費が掛かっているのですから、5年で旅行プレゼントぐらいやってもお釣りくるんじゃないかな・・・?
私は研究に携わる専門職公務員です。
政策の失敗、天下り、何の関係もありません。
そもそも政策の失敗の大部分は政権政党に帰せられるのに、なぜ我々が反省しなくてはならないのか?
「公務員」と一くくりにされますが、大学教員、医師から、警官、自衛隊員、単なる事務職まで、ありとあらゆる人がいます。
これが会社でしたら、羽振りが良い時はボーナスを年に何回ももらったり、20代で年収1000万超えたり、いいことがいろいろありました。公務員は、売れ線商品を開発したり、新しい販路や業態を開発したりして、売り上げを大きく伸ばすようなことはできません。
公務員に関しては、職種に応じて、世間並みに妥当な給料を出す、ということしかありえない。
既にそこそこの給料しかもらってないんだから、減らされたらショックでかいよ。自力で増やせるあてがないんだから、士気が下がるだけ。いきおい公務員の人件費圧縮というのは、人員削減が中心になるけど、それぞれの業務とかは法律等で細かく決められているから関連する法律整備から進めないと。小泉政権下で相当減らしたばかりなのに、みんなの党はさらに20%減らせるなんて言ってるけど、どれくらい困難なことかわかっているのか。
私も公務員ですが、みどりいぬさん、端株株主さんに全く同感です。
借金を作ったのは、公務員ではなく、有権者にいい顔をしたい国会議員達ですよ。公務員は、政治家の指示に従うだけです。
プライマリーバランスをプラスにするのは簡単です。赤字分だけ国家支出をカットすればいいだけですから。でも、それは公務員の仕事ではなく政治家の仕事でしょう(そして、選挙を抱えている政治家達は、それができないというのが現状なのではないでしょうか)。公務員に権限を与えてくれるなら、ためらいなくやると思いますよ。