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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2012/02/13 00:00  | by Konan |  コメント(1)

Vol.127: 世界経済を振り返る(2)


前回は、「成長のためには振幅もやむを得ない」という主流の考え方に反抗した孤高の総裁が白川さんであるという文章で終えました。今回は、白川総裁の考え方を紹介したうえで、問題はそれでは終わらないという指摘を行いたいと思います。

白川総裁の考え方は各種の講演(日銀のホームページで読めます)で何度も繰り返されていますが、ここでは、日経ヴェリタス第199号(2012年1月1日〜7日号)に掲載された、編集部長吉次さんによる独占インタビュー記事から引用します。

総裁の発言は以下の通りです。「以前はいわゆるFed View(バブルが崩壊しても事後的に中央銀行が積極的な金融緩和をすれば経済の落ち込みを防げるという考え方)が、政策当局者も含めて主流でした。しかし、今回のバブル崩壊によって、そうした考え方は見事なまでに否定されました。バブルを防ぐための事前の努力が大事だという理解が広まっていると思います。正解が得られているわけではありませんが、金融政策や規制・監督を含め、この面で議論が始まっています」。

「ノーベル経済学賞を受賞したクルーグマン米プリンストン大教授は米紙への寄稿で「米国の経済学者たちは日本に謝罪しなければならない」と述べています。だからといって我々が溜飲を下げたということではありません。先進各国は日本が経験してきたのと同じような問題に直面している。こうした経験を経て米国のアカデミズムの議論も相当変わってきたと思います」。

総裁の議論は、「振幅が大きくとも、落ち込んだ時に政策対応すれば良いので問題はない。そうであれば、市場経済や資本主義を信じて高い波を作り出す方が良い」という考え方は、「落ち込んだ時の政策対応が極めて難しく、落ち込みのコストが極めて高い。均してみても高い成長は望めない」との点で誤りであり、「そうであれば安全運転を日ごろから心がけた方が良い」と要約することができます。

具体的に言えば、日頃から引き締め気味に金融政策を行うべきであり、金融機関に対しては日頃から高い自己資本比率を求めるべきであり、財政政策も最小限にとどめた方が良いという考え方になります。「地味だが着実な成長を積み重ねようよ」との主張と言い換えることもできます。

私自身、この考え方に賛成です。実際、1990年代の日本におけるバブル崩壊後の苦しみ、あるいは今回の欧米における深刻な経済調整をみると、白川総裁の指摘は正しいと思います。しかし、そうは言っても、これだけでは問題は終わらないようにも思います。次回はこの点に触れたいと思います。端的に言えばJapanisation下の政策のあり方は何かという問題です。

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One comment on “Vol.127: 世界経済を振り返る(2)
  1. ペルドン より
    ベルト

    ズボンを止めるのに・・
    ベルトがいる・・

    穴が開いたベルト・・
    とは限らない・・
    滑り止めのベルトもある・・
    サスペンダーもある・・

    多分・・
    総裁は・・オーソドックスな・・穴あきベルトが・・お好みなのでしょう・・どれだけ太ったか・・すぐ分かる・・
    日本は・・目下・・
    フリースタイルのサスペンダーなのでは・・・?

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