2010/05/24 00:00 | by Konan | コメント(3)
Vol.37: 英国議会選挙回顧
今回は、前回に続き選挙ネタで。最早旧聞になってしまいましたが、6日に行われた英国総選挙について、感想を述べたいと思います。2大政党制の教科書のように思われていた英国で、自由民主党という第3党の勢いが増す中、どのようなな結果になるか注目されていましたが、ご存知のように、保守党が議席を大きく挽回するも過半数に達せず、労働党は惨敗し、結局、保守・自由民主の連立政権が誕生し、5年間政権運営を担うことになりました。こうしたある種不安定な政権は、1970年代半ば以来のことのようです。
今回の結果についてはいろいろ論評されていますが、私は以下の点が面白いと思いました。
(1)労働党の「惨敗」の最後の引き金となったのは、選挙直前のブラウン前首相のある老女に関する失言だった。麻生自民の惨敗と同じ構図。英国は政治の先進国と思われ勝ちだが、こうした面で余り違いは無い。
(2)自由民主党の得票率が意外に伸びなかった。事前の予想、あるいは3党首討論後の支持率の比較では、自由民主党は3割程度の得票も予想されたが、結局2割少々。小選挙区制の下、死に票になることを覚悟して自由民主党に投票するより、保守、労働のいずれかに投票することを選択した有権者が意外に多かったことを意味する。英国民の安定政権を望む気持ちの現われと考えることもできる。
(3)結局保守と自由民主の組み合わせで政権が発足したが、「5年間解散しない」ことが連立の前提となっている。ここでも、英国において安定した政権に関する強い価値観が現れたと考えられる。
では、今回の結果から日本が学ぶべきことがあるのでしょうか?
(1)小選挙区制度でも、必ずしも2大政党の一方が勝ち、安定政権が生まれる訳ではないことが示された。では、日本でも小選挙区制度を取り止め、比例制の比率を高めるべきなのだろうか?そうした論評も多いが、むしろ、「小選挙区制は多くの場合安定政権を生むが、世論の分裂が激しい激動期には1党が過半数を制することが出来ず、少数政党に配慮した政権運営を行う体制を生む余地もある点で、思ったより柔軟な制度である」と捉え直すこともできるのではないか。
(2)2ヵ月後の参議院選挙では、民主党が「衆議院と合わせた安定政権を今後3年間続けることで、必ず政治を良い方向に変える。3年間チャンスを与えてくれ」という訴えを行うことが、支持率挽回の最後の切り札になるのかもしれない。
(3)日本のように中長期的な戦略の構築・実行が求められ、安定政権が不可欠な中で、衆参の2院を持ち、参議院も予算を除き重要な決定権を持つ一方、衆参の政党の構成が大きく異なり得るような制度は、不幸かもしれない。参議院の廃止ないし大きな権限縮小を本当は考えるべきかもしれない。
いかがでしょうか?
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3 comments on “Vol.37: 英国議会選挙回顧”
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>>今回の結果から日本が学ぶべきことがあるのでしょうか?
これは・・
誘導灯のように・・闇夜に・・眩く輝き・・着陸する・・滑走路を教えてくれる・(笑)・・
イギリスの選挙を・・熟慮して・・吟味して・・タイムズ・オブ・ロンドンを読み・・
参院選挙に望む・・国民ばかり・・我国は・・
異国のマスコミは・・沖縄で・・
水飲みダチョウに似た・・我国の首相を・・放映続けている・・
自民党を始め・・弱小野党の野心は・・
多分
打ち砕かれる・・鳩さまの土下座で・・
あの方は土下座で・・済むなら・・支持率が上がるなら・・毎日披露されるだろう・・国中を巡業されるだろう・・
名門出の首相に・・資産家の首相に・・土下座されて・・悪い気持ちに・・なる国民はいない・・
イギリスも
次回から・・取り入れるかも知れない・・
英国も日本から・・学ぶ事はある・・・
< 2ヵ月後の参議院選挙では、民主党が「衆議院と合わせた安定政権を今後3年間続けることで、必ず政治を良い方向に変える。3年間チャンスを与えてくれ」という訴えを行うことが、支持率挽回の最後の切り札になるのかもしれない。>
これで勝てる様な気がしてきました。
いつも拝見させて頂いております。
聞いている限りにおいては、英国の今回の選挙では与野党の争点の対立構造が不明確であり、政策において決定的な対立があまりなく、結果としてどちらに投票しても国家としての大きな方向性を決定づけるような点はなかったように思います。
(その点を先送りする・自民党に妥協しても致命的な影響ではないという意味において)
私見ですが、日本においては、このような争点が多岐にわたりかつ整理されていないという点にまず問題があるように思います。根本的な外交政策や経済・財政政策について、自民党・民主党大多数は、ある意味目先の有権者集団に迎合的な対応に終始しており、明確な哲学・運営方針が不在に思われます。
これらが明確になれば、国民の意思の存在もマニフェスト等を通じ、明確になるものに思われますが、その次の課題として懸念があるのは党議拘束の問題であろうかと思います。
事実や政策間の因果関係が明らかになり、現実的に妥当な対応が不可能な場合に、過度に党議拘束により一元化を図る現在の政党は、実質的な意味で、憲法にて国民の代表とされる議員の活動(を通じてなされるべき国民の意思の発露)を、明確な根拠もなく(政党法はありますが)妨げているように思われます。
英国においてはこれらの点において日本と異なり、2大政党制が機能するように思いますが、日本においては英国と条件が異なるので難しいように感じるのですが如何でしょうか?