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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2010/04/26 00:00  | by Konan |  コメント(1)

Vol.33: ユーロ雑感


今回は、前回予告の通りユーロについて採り上げます。ギリシア問題については、ギリシア国債の格下げに続き、ついにギリシアがEU、IMFに緊急融資を要請するなど、事態は緊迫しています。また、ギリシア以外の国の不安定要素もあります。そうした状況を受けたユーロ相場の見通しのような問題は専門家のぐっちーや前橋さんにお任せし、ここでは、ユーロのように多国間で用いられる単一通貨の原理的な問題は何かについて触れたいと思います。

ドイツでも、フランスでも、イタリアでも、スペインでも、ギリシアでもユーロが使えるというのは、大変な驚きです。また、これだけ状況が違う地域で、欧州中央銀行(ECB)が唯一金融政策を行う主体である(=政策金利は欧州域内で単一である)というのも驚きです。その驚きの背後に潜む難しさは何か、説明できればと思います。

さて、考えてみると、日本でも東京と沖縄との間では、随分景気の状態が異なります。米国でも、ニューヨークと他の地域の間で景気格差が存在すると思います。それでも円、ドルといった単一の通貨が使われ、中央銀行も日銀、FRBとそれぞれひとつです。こうしてみると、欧州とそう違いが無いようにも思えます。

しかし、日本・米国と欧州では、2つの点で大きな違いがあります。第1に、日米は国が財政機能を用い景気の悪い地域に支出を回すことが可能ですが、欧州では財政機能は国ごとに属すため、例えばフランスの税収をギリシアに回すことは出来ません。実際、この点がドイツで盛んに議論され、メルケル首相がギリシア支援に厳しい姿勢を取る背景ともなっています。第2に、日米では景気が悪い地域から良い地域に働きに出る(そして悪い地域に仕送りする)ことに制約はありませんが、欧州の場合、自由化されてきたとは言え、言語や文化の壁まで考えると、日米ほど自由とは言えません。要は、日米では財政、労働移動により地域間の景気格差を均す仕組みがあるのに対し、欧州ではそうした仕組みが無い(弱い)という違いがあります。日米では景気格差が均されるので、中央銀行(政策金利)が国内単一でも何とかなりますが、欧州はそうは行きにくい構図です。

そうだとすると、欧州では「ある国では政策金利が景気実態対比低過ぎるため、景気が更に過熱する」「ある国では政策金利が景気実態対比高過ぎるため、景気が更に悪化する」という形で、国の間の景気格差が増幅される可能性を内包していることになります。こうした国ごとの差は、普通は為替相場で調整される(景気が悪い国の通貨が弱くなり、輸出が増え、景気が回復する)訳ですが、欧州の国々の間には為替変動もありません。

このように原理的に極めて困難な問題に欧州は挑戦しています。この点、私は彼/彼女たちの意思の強さに感服します。ただ、感服するだけで問題は解決しません。どうすれば良いのでしょうか。

結局のところ、ぐっちーが指摘するようなユーロからの離脱を選択肢から除外するとすれば、景気が悪い国は、財政規律も課される中で、自国経済の成長力を上げるため、規制改革・構造改革を進めていくしかありません。逆に、景気が良い国では、企業収益の向上分を労働者に分配してしまう、即ち賃上げをしてしまうと、コストプッシュ型のインフレに陥る恐れがあります。それを回避するためには、税の形で企業収益を国が吸い上げ、過去に発行した国債を償還する、あるいは将来に向け積み立てていくことが求められます。

こうした努力を、相対的に景気が良い独仏、悪いPIGS諸国がそれぞれ行うことが出来るかどうか、問われていくことになります。また、ユーロに加入しなかった英国の「賢さ」が理解されてくるかもしれません。そのうえで、長年の歴史、とくに20世紀の2つの大戦の憎しみを越え、統一に向けて舵を切り、必死にその維持に努力している欧州諸国の奮闘を祈りたいと思います。

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One comment on “Vol.33: ユーロ雑感
  1. ぺルドン より:
    ュ・・ロ・・

    有史以前から、
    あの一帯は・・仲が悪く・・戦にあけくれていた・・

    盾を・・亀甲に構えると・・防御には強いが・・長年の鍛錬がいる・・
    としても・・
    ドイツは計算していた・・判っていた・・読んでいた・・稼いだ・・作戦通り・・

    ブリテンは・・仏ともドイツとも・・仲が悪い・・
    ジャンヌダルクを忘れていない・・

    ユーロはどうなるか?
    ドイツは次を・・如何に読んでいるか?・・
    プロシャ伝統・・モルトケは・・生きている・・・

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