2011/11/28 00:00 | by Konan | コメント(1)
Vol.116: コーポレートガバナンス
事件の詳細は謎に包まれた面も多いですが、大王製紙では、オーナー一族である井川元会長に、大王製紙子会社から100億円の無担保融資が実行され、それがギャンブルに使われたとされます。オリンパスでは、解任された英国人前社長の証言と週刊誌報道を契機に、過去の有価証券投資損失の「飛ばし」の解消(隠蔽)のため、企業買収の際コンサルティング会社に数百億円単位の異常な報酬が支払われ、それが穴埋めに使われたことが会社側から公表されました。
他方、こうした問題が日本特有かというと、自信がありません。例えば、先日米国のMFグローバルが、欧州国債への過剰投資を契機に破たんしました。原因は元ゴールドマンCEOである経営者の自信過剰、そしてそれを誰も抑止できなかったこととされます。世界的な会計、監査、ディスクロージャー強化の動きの出発点となったエンロン事件も米国発です。
日本では米国型のガバナンス形態を取り入れた「委員会設置会社」や社外取締役導入企業も増えていますが、そうした会社のガバナンスが実際どこまで向上しているか、検証されてもいません(むしろ否定的な例も目立ちます)。
ただ、創業者やオーナーであろうと、雇われであろうと、「トップの地位に長くとどまると澱み腐る」点は一般的には当て嵌まる気もします。長くとどまることは、部下が息がかかった人間だけになることを一方で意味し、他方でアイディア枯渇の可能性(従って何か変なことを起こそうとするインセンティブの増加)も意味します。「多選禁止」を掲げる自治体首長がいますが、そうした問題を意識したうえでの主張と捉えることもできます(無論、人気取りのためのキャッチフレーズが主目的ですが)。米国大統領のように任期が憲法で画されていることも、この面での知恵の表れかもしれません。
長々とつまらない文章になってしまいましたが、ガバナンスの根幹は「院政を含めたトップ在任期間の長期化禁止」しかないように思います。そしてその経営トップに、小さな勇気(例えば経営と所有が分離されている場合、所有者であるオーナーに刃向う勇気)、愚直さ(ジョブズさんの言うfoolishさでしょうか)、謙虚さ(白川総裁は、政策当局者に必要な資質として”humble”の重要さを何度か指摘しています)が資質として加われば、更に良いということでしょうか。
最後に1点。オリンパスの件は1997年の山一證券破たんを思い起こさせます。ただ、オリンパスが有価証券投資失敗を一気に処理しようとしていたら、日本が誇る技術企業が消滅していた可能性もあります。本業以外に色気を出すことはそもそも問題ですが、本業が隆々としている場合、本業以外で生じた損失を本業での収益を使って時間をかけて解消していくことが本当に許されないことか、答えはひとつではないのかもしれません。
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One comment on “Vol.116: コーポレートガバナンス”
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はい・・
応えは・・
一つではないと思えます・・
ジョブスが・・
アップルから・・蹴り出されなければ・・
今日の成功は・・無かったかもしれません・・アップルを・・潰していたかも知れません・・
応えは・・運命の糸のように・・複雑に絡まっているのでしょう・・・