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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2011/10/17 00:00  | by Konan |  コメント(2)

Vol.110: ソブリン危機とリーマン危機


仕事柄「今と3年前、どちらがひどいか?」との質問をよく受けます。簡単に私の答えを紹介したいと思います。「今回の方が厳しいかもしれない」というのがそのエッセンスです。理由は3つです。以下順不同で。

第1に、良く言われることですが、世界の中央銀行にこれ以上金融緩和する余地がなくなってしまったことです。リーマン危機の当初は、「バブル潰し」のため高めに設定されていた政策金利を引き下げる余地がありました。日本ですら福井総裁末期にゼロ金利政策から抜け出していましたので、金利引き下げが可能でした。今後もはやその余地は先進国ではほとんどありません。

第2に、リーマン危機後、先進国経済は大きく揺らぎましたが、新興国や資源国の景気は持ちこたえ、中国に代表されるような拡張的経済政策も手伝って、世界経済を支え、牽引しました。しかし、今皆が恐れるのは、中国経済の減速、更にはバブル崩壊に伴う経済の混乱です。日本にとり貿易面で最大の相手国となった中国経済の減速や混乱は大打撃となることは言うまでもありません。世界にとっても同様です。
第3に、そしてもっとも重要なポイントは、リーマン危機はサブプライムローン問題に端を発する民間金融機関や金融市場の混乱、そしてその実体経済への伝播が問題の根幹でした。逆な言い方をすれば、民の問題に対し、公が外部からそれを支える–例えば公的資本注入や銀行の負債に対する政府保証の形で–ことが可能でした。

ところが、ソブリン自身の信用力が疑われている今、安易に公がサポートを行うと、公の信認がさらに悪化するという悪循環に陥る恐れがあります。これは極めて深刻な事態です。

まとめて言えば、リーマン危機の際、それを緩和する方向に働いた、金融政策、財政政策、新興国成長の全てが機能しない恐れがあるというのが今回の危機の特徴であり深刻な点です。無論、例えばリーマン危機の際確立された先進国中央銀行間の協力体制、具体的には欧州中央銀行がFRBの助けを借りて欧州銀行にドル資金を供給できる仕組みなどの安全弁は、リーマン危機の初期より整っています。また、仮に米国について「楽観論」に立てば、バブル崩壊後の調整に目途が付き始めている可能性もないではありません。ただ、どうも事態は悪い方に進んでしまっていると考える方が良いのかもしれません。

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2 comments on “Vol.110: ソブリン危機とリーマン危機
  1. ベルドン より
    ソブリン・ルーレット

    ロシアン・ルーレット・・
    弾は一発・・
    これは・・四発・・
    EC・・米国・・中国・・日本の順で・・引き金を・・
    それでも・・
    参加者一同・・生き残るチャンスはある・・
    確率的には・・
    それに・・
    神の御加護もあるだろうし・・多分・・・

  2. 迷える羊 より
    どう対処すべきでしょう?

    とても興味深く読ませて頂きました。ぐっちーさんのメルマガでも危機の深刻さがひしひしと伝わってきますが、具体的にどう対処してよいのかわからずに困惑しています。
    フランスの銀行が満期時の元本を保証している投資信託は損を承知で今解約した方が良いのか、英国の銀行にあるなけなしのポンド預金は引き揚げるべきなのか、経済ニュースに一喜一憂しては思い悩む毎日です。

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