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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2011/09/12 00:00  | by Konan |  コメント(5)

Vol.105: 菅内閣を振り返る


連載105回目。1年52週なので丁度3年目に突入したことになります。今後どれほど続けられるか自信はありませんが、もう少し頑張ってみたいと思います。

本ブログの初回は自民党から民主党への政権交代を取り上げました。今回は今般退陣した菅内閣を振り返りたいと思います。私は菅内閣に好意的という点で少数派に属してきました。「人格に問題はあるが、やっていることが変と思わない」と何度か書きました。人格の点で言えば、いろいろな人から良く「菅さんの目付きがおかしい」との声を聞きました。私も彼の目付きは気になっていました。震災後の疲れ、支持率低下への苛立ちなど理由は色々あったのでしょうが、「彼は他人を信じることが出来ないのだな」「それが目付きに表れているのだな」と感じたことがしばしばありました。あの目付きで支持率を維持することには土台無理があったのだと思います。

では、やっていることは変でなかったか。例えば震災対応のもたつきで菅さんは強い批判を受けました。総理なのでもたつきの責任があるのは当然です。ただ、この点彼に同情的なのは、もたつきは菅さん個人の問題ではなく、民主党政権の宿命と思うからです。政治主導を掲げた民主党は官を頼ることが許されない政権です。政に官を使いこなす度量があれば良いのですが、残念ながら民主党の中に全省庁の閣僚ポストを満たすだけの度量ある人材は存在しません。そうなると政は空回りし、官は政に責任をなすりつけサボる構図になります。この構図は、菅さんであろうと誰であろうと、民主党の政治家に実力が伴わない一方で「政治主導」を主張し続ける限り、変わりません。
具体的政策の中では、税と社会保障の一体改革、新たな開国と銘打ったTPP参加などの経済開放政策、生き残り最後のあがきと揶揄されたエネルギー政策(逆に言えば東電に代表される財界の既得権益潰し)などは、日本を維持・再生していくうえで不可欠な取り組みであり、その着手は評価できると思います。1か月前(8月12日)の朝日新聞で國分功一郎さんという学者が「市民が行政権に主権者として関与するための制度作り」の発想が菅さんにあった点を評価していましたが、國分さんは流石にほめ過ぎとしても、確かにそうした面はあると思います。

麻生さんや鳩山さんに比べると、事後検証に値する「面白い」「記憶に残る」政権だった気がします。

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5 comments on “Vol.105: 菅内閣を振り返る
  1. ベルドン より
    振り返る

    そりゃ・・又・・好意的な・・・
    では・・
    当方も・・

    写楽に・・
    描いてもらえば・・
    ミエも・・
    様になったか・・
    それでも・・
    売れただろうか・・・?

  2. st より
    菅問題

    目付きの問題じゃないだろう、拉致容疑者とズブズブの関係の政治団体と深い付き合いをしていたんでしょう、完全にアウトです、そりゃ次の選挙の組織固めに必死になっているだろうが、必ず落とされる、一線を越えちゃ駄目だ。

  3. Cielon より

    いつも興味深く拝読しています。
    3年目も楽しみにしております。

  4. Audley End より
    「福島第一」の事故に対する

    菅政権の初期対応の遅れにより、はからずも、世界に露呈してしまったことがあります。 日本は戦後、復興のために「経済」に特化しましたが、当時、その選択は正しかったと思います。 ですが、そのために犠牲にしたものも、決して小さくなかったことを、あらためて実感しました。 「教育」を根本から問い直すタイミングにきているような気がします。

  5. hkawa より
    政権交代に思うこと

    毎週楽しみに拝読させて頂いております。

    菅政権については怒りを覚えることはいっぱいあり、なんども讃美歌13番をリクエストしようかと・・・。

    が、それでも政権交代して良かったなぁと思うことはそれなりにあります。
    わかりやすいとこでは国会TV充実や事業仕訳等のネット中継など情報公開はその一つと
    思いますが(情報公開が進んだからボロが出て逆に支持率が落ちてる側面もあるような・・)、なかでもNPO法改正と税額控除を盛り込んだ新寄付税制のセットは、画期的な気がしてます。
    政権交代時によく聞いた「新しい公共」、この考えに賛同した私は2年前に投票した覚
    えがあります。最近すっかり耳にすることもなくなり残念に思っていましたが、これな
    ど具体策の1つと思いますが、あまり報道されてないように思います。

    機会があれば解説およびご見解を頂けると嬉しいです。

    野田政権に変わっても急に何かが進み始める(「良い方に」という意味です)ことはな
    いと思いますが、少しでも前に進めてくれることを期待してます。ただ、方向転換の香
    ばしい臭いが気になります。
    何が「良い方向」かは人により組織により異なるのでややこしいですが・・、ここで
    は(個人的には)、マニュフェスト(の理念的なもの)を指してます。
    ちなみに私の理解は以下の通りです。
    (1)フェアな社会:公平公正で機会均等な社会
    機会(スタートライン)は政治が保障。社民主義的な結果平等ではない。
    (例)あくまでこの理念の下での「子供手当」、高校・大学までの教育機会の平等
    (2)セイフティネット:最低限は保障するので安心して新しい分野で競争してね
    (3)情報公開:国民に判断材料を積極的に提供
    (4)地域主権:より住民に近いとこで意思決定を行う
    (5)包摂と寛容:民主主義へ参加する国民
    1〜2、3〜5はそれぞれセットかな。
    民主党のアイデンティティについて最近ラジオでの議論を聞く機会があり、それを自
    分なりの言葉にしてメモしてみました。(人様のblogコメントをメモ代わりにしてス
    ミマセン)

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