2009/11/30 00:00 | by Konan | コメント(0)
Vol.12: 羽田国際化
インフルから復帰しました。。。
今回も自分の所掌と遠い題材を取り上げます。1月ほど前に話題になった、前原大臣の「羽田空港ハブ化」発言についてです。すでに三原御大(まだお目にかかったことはありませんが)やぐっちーも取り上げた話題なので、三番煎じになってしまいますが、病み上がりということで、ご容赦ください。
航空行政や成田空港の歴史に詳しい訳でもなく(羽田空港国際化に力を入れていたある著名な政治家の方に何度かお会いし、影響を受けたことがある程度です)、的を射たコメントが出来る訳ではありません。また、前原発言(ダム、JALと、現政権では亀井大臣に次いで話題を振り撒いていますね)が、実現に向け具体的にどう動いていくのか、まだみえません。実際、直後の森田知事との会談の中では、「羽田と成田の一体的な発展」といったコンセプトにややトーンダウンしたようにもみえます。ただ、新政権下の各大臣の発言の中ではじめて、日本の今後の経済成長戦略を考えていくうえでのとても重要な論点を提供した発言として、注目に値すると感じた次第です。
前原大臣の発言は、いくつかの点でとても合理的にみえます。第1に、羽田を国際化すること。考えてみると、国内線で飛んできてすぐ国際線に乗り継げる、国際線で飛んできてすぐ国内線に乗り継げる、ということはとても便利です。第2に、羽田の方がどうも拡張性がありそうで、かつ、東京湾を使えば、24時間空港化も容易にみえます。第3に、成田もかなり便利になったとは言え、羽田の方が都心に近く、この点でも便利です。直感的にはシンガポールの空港のようになる余地は成田より大きい気がします。第4に、この構想を契機に羽田がいろいろなしがらみから解き放たれ、発着陸料引き下げにも結びつけば、世界の航空会社にとっての魅力も増すかもしれません。
なお、以上は「旅客」の視点に過ぎず、貨物については、すでに倉庫等の整備が成田中心に進んできており、簡単に羽田に舵を切れないという話しもよく聞きます。その意味では、「羽田と成田の一体」という感覚は、単に妥協の産物と言うより、何がしか必要な論点なのかもしれないということは、付け足しておきたいと思います。
さて、以上は素人による在り来たりの話しに過ぎませんが、なぜ前原大臣の発言に着目したかについて、以下で2点補足したいと思います。
第1に、いつか取り上げようと思いますが、日本の成長戦略を考える場合、人口減少問題の対応が難しい(不可能でないとしても時間がかかる)中、効率的に資源を集中することと、海外とのつながりを今まで以上に大事にすることが、とても重要になると思います。羽田ハブ化は、空港に関する資源配分を羽田に集約しようとする点で、また、羽田をもう一度アジア有数の空港に復活させ、アジアの中核都市としての東京を世界に訴えていこうとする点で、方向感に共鳴するわけです。ちなみに、このうち前者の点(効率的な資源集中)について、あるとき、元国税庁長官で、一時商工中金の副理事長をつとめられていた大武さんという方の講演を聞いたことがあります。彼は、これまでの日本の政策(どんな地方にも各種施設を行き渡らせる)は限界に来ていて、むしろ、例えば地方都市に家を集め、医療施設等を集約したうえで、例えば農地に耕しに出かけるような発想の転換が必要と説かれていましたが、効率的な資源の使い方という意味で、羽田ハブ化はこの発想に通じる点があります。
第2に、政権交代の意味は実はこうした点にあるかもしれないということ。国際的な公約は、政権が代わったからといって軽々に変える訳にはいきませんが(基地問題を巡る現政権の右往左往についても、いつか触れてみたいと思います)、国内におけるこれまでの政策は、官僚主導と呼ぶかどうか別にして、50年間にわたり基本的に自民党が行ってきたものです。政権が代わったのだから、「過去は過去」と切り捨てることが(少なくとも自民政権より)容易なはずですし、実際、事業仕分けはそうした発想に基づいています。過去の積み重ねは官僚の利権とも重なる面が多いので、官僚政治からの脱却と言ってもあながち間違いではないのかもしれませんが、恐らく事の本質は、日本経済が成長していたバブルまでのモデルが崩壊し、逆に縮小に向かいかねない中で、どのようなモデルを構築していくか、というより大きな視点と思います。本件に即して言えば、成田にこれまで関わられてきた方々にとり、成田の重みが小さくなるような政策転換は受け入れ難いことと思います。しかし、まさにそういう転換も辞さないというのが、8月末の選挙による国民の判断であり、成田関係者だけが例外的立場に置かれる訳ではありません。
こうした意味で、羽田については前原大臣にエールを送りたいと思います。
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