プロが語る世界情勢・政治・経済金融の最前線!

The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2011/08/22 00:00  | by Konan |  コメント(1)

Vol.102: 通貨と国債の問題(2)


今回は米国格下げ以降の市場の混乱について触れたいと思います。なお、ぐっちーは「米国債の格下げではない」と何度も強調しています。この指摘は正しい(格付会社は国債の格付けは行っていない)のですが、国の格付けが下がると、仮に格付会社が国債の格付を行おうとした場合の格付の上限が国の格付で画されてしまうので、「米国債格下げ」との表現も、結果的には激しい間違いではないとも思います。
今回の混乱は格下げをきっかけに始まりました。経済学等の実証分析を行う際の論点として、「事象Aと事象Bが同時に生じた際、AがBの原因である場合と、偶然同時に生じた場合の双方が考え得るが、どちらかという判断は難しい」ということが良く言われます。今回の場合、格下げが原因なのか、単にきっかけに過ぎず混乱の原因は別にあるのか、判断は難しいという論点です。さらに言えば、今回は米国だけでなく、仏のような欧州大国の格下げも同時に問題となったため、この「原因かきっかけか」の判別が一段と難しくなります。

そのうえで、私は単にきっかけに過ぎず、原因は別途と思っています。もっとも単純な論拠は、flight to qualityの発生により米国債の金利が低下していることです。仮に本当に皆が「格下げは米国債の償還能力低下を意味する」と信じたとすれば、資金は国債市場から流出し、価格下落(金利上昇)や金のようなラストリゾート商品の更なる価格上昇、あるいは円やスイスフランの更なる上昇が生じていたはずです。付言すれば、日本の格付はAA−と格下げ後の米国よりさらに2ノッチ下ですが、この程度で何ら問題が生じていないことは、これまでの事実が示しています。

ではなぜ市場は乱高下を繰り返したのか。もともとぐっちーが正しく指摘を続けてきたように、米国経済について、資産バブル崩壊後の調整は生易しいものではないとの不安が底流にありました。具体的には、資産バブルの象徴である住宅市場の調整の問題、あるいは失業の問題です。また、欧州についても、米国の比ではないほと複雑な意思決定プロセスの問題を抱え、ギリシア等の問題への解決能力が問われています。

そうした不安感を抱えながらも、これまで市場が一方方向に振れる事態は何とか防いできたわけですが、「米国格下げ」というとてもキャッチーで分かりやすい事態を受け、市場参加者の多くが「とりあえず売りで儲けよう」と考えたというのが私の理解です。

逆な言い方をすれば、毎日NYダウが数百ドルずつ上下するような不安定さは収まると思いますが、なかなか上昇トレンドに復すことは難しい気がします(ただ、こうした市場予測はぐっちーや前橋さんの分野なので、是非2人の発信をご覧ください)。

次回もこの国債と通貨を巡る問題を続けます。

メルマガ「新・CRUのひとり言」を購読するためにはご登録のお手続きが必要です。

当社に無断で複製または転送することは、著作権の侵害にあたります。民法の損害賠償責任に問われ、著作権法第119条により罰せられますのでご注意ください。

One comment on “Vol.102: 通貨と国債の問題(2)
  1. ベルドン より
    問題2

    世界の投資家は・・
    思春期の乙女のように・・ナイーブだった・・
    ホワイトハウスの庭を・・黒猫が・・横切っただけで・・この世の終わりが来る・・と張り裂けそうに・・なつている・・

    プロは・・
    数か月は・・収まらないと・・現金を抱えている・・

    S&Pは・・ホワイトハウスに・・ボコボコにされている・・
    教訓を・・与えられている・・・

コメントを書く

* が付いている欄は必須項目です

*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>

いただいたコメントは、チェックしたのち公開されますので、すぐには表示されません。
ご了承のうえ、ご利用ください。