2009/09/14 00:00 | by Konan | コメント(2)
Vol.1: 初めまして、そして政権交代
今回から本コラムを執筆します。よろしくお願いします。ぐっちーの発信内容の補完をメインに、違う内容も織り混ぜたいと思います。1、2週間に一度の更新を心掛けます。
さて、新政権発足目前の初回は、選挙結果について触れたい(触れざるを得ない)と思います。主なポイントは、官は政権交代の何が心配か、とくに経済政策について、自民党頑張れ?!です。
(政権交代、何が不安?)
感じ方は人それぞれです。また、組織・ポジションによっても、感じ方に違いが出ると思います。そのうえで、私の周辺の人たちが政権交代の何を不安視しているか、整理したいと思います。
まずは、政策の違い。選挙戦の中で「民主党と自民党のマニフェストが似通ってきた」と言われもしましたが、民主党の政策とこれまでの政策に違いがあることは間違いありません。金融分野の差は小さいかもしれませんが、公共事業の規模、道路特定財源の扱い、後期高齢者医療制度のあり方など、水と油ほど違います。これまでの政府・与党が「これしかない」と考えてきたものと違うことを行うとすれば、まさに自己否定であり、苦しいものがあります。第2に人の違い。党の会合への出席や個別レクなど、民主党の先生方との接触が全くなかった訳ではありませんが、やはり馴染みが薄い方が多い(新人議員の方は当然)。かつ、官が上げるものをまずは全否定されるでしょうから、そのプレッシャーは計り知れないものがあります。第3にプロセスの問題。国家戦略局(室)はどのような力を持つのでしょうか。経済財政諮問会議発足当初もそうでしたが、不透明な状況です。また100人政府入りにより、党のプロセスは本当に軽くなるのでしょうか。第4に処遇の問題。我々も人間ですので、人件費削減、天下り禁止となると、自分の人生はどうなるのか、不安に思わない訳はありません。
ただ、奇麗事に聞こえるかもしれませんが、官は政治に仕えるのが本来の役割。これまでの政策の論理や背景を説明し、そのうえで下される新政権の判断に従い誠実に実行すること以外に、選択肢はないと思います。考えてみると、戦後の高度成長期(バブルのピークまで)、日本はオイルショック等の下降局面が何度かあったとは言え、基本的に成功の連続でした。その時期は、誰が判断を行ったとしても、余り違いがなかったのかもしれません。むしろ、政治主導の最たる例である列島改造論の失敗を考えると、大きな上昇トレンドの中で官中心にファインチューニングする方がうまくいったということかもしれません。次にバブル崩壊後数年前までは、誰も解決策を見出せないという意味で、誰が判断を行ったとしても、余り違いがなかったのかもしれません。その中で、官に丸投げされたと思います(その点で画期的だったのは小泉政権。政治主導という点では今回の新政権の先導役なのかもしれません)。そして今回の新政権。政治主導と官主導の最大の違いは、官は小動きしかできないが、政治は、国民の支持を得れば大きく舵を切ることが出来る点にあると思います。丸投げ時代も、本来は先を見据えた大きな決断が必要だったはずです。判断が不要な時代、誰が判断してもうまくいかないため官に丸投げされた時代を経て、ようやく大きな判断を行おうとする時代になったということでしょうか。
なお、この点に関連し、官による政治家「操縦」の隠れた武器は想定問答です。大臣の国会や記者会見での答弁には想定問答が用意されます。「こう答えてください」ということが書かれたものですが、これはある種の言論統制、思想操縦です。政府に入る100人の新与党政治家の方々(因みに自公政権下でも70名政府に入っていたので、言われるほど増える訳ではありません。この辺は、民主党がうまく宣伝したという印象です)には、是非想定問答に依存しないようお願いしたいと思います。国会開会中、質問取り−想定問答作りで深夜労働が続きます。その無駄を是非省いて欲しいと思う官の人間も少なくないと思います。
経済政策について
民主党の経済政策をこれまでの自民党の政策と比べると、以下のいくつかの特徴があると思います。第1に、総歳出規模(=歳入規模)について、実は明確なイメージがありません。子育て等での歳出増を無駄のカットで賄うというのが大きな図式と思いますが、無駄のカットで足りない分の国債増発が否定されている訳ではなく、「どう転ぶかよく分からない」というのが現実と思いま
す。この点、自民党に「財源なきバラマキ」と批判されましたが、ぐっちーが何度か指摘していたように、自民党も国債残高を積み上げてきたわけで、同じ穴の狢ということで、選挙戦で余りよいカウンターパンチにはなりませんでした。第2は、歳出の経路は明らかに違うこと。端的には公共事業という建設会社経由の歳出が減る一方、子育て支援のような形で個人に直接歳出が届きます。経済的にどちらの歳出が需要創出効果があるか、これも確定的に分かるわけではありませんが、ただ、「国民の実感」は大分違います。昨年春、一旦ガソリンの価格が下がった際も、「税金を集めて道路を作る」ことと「税金を減らして国民の実質所得を上げ、それを消費に回す」ことが経済的には比較されたわけですが、今回も、「地方で道路を作る」ことと「子供が相対的に多い都会で支出が増え、関連業界が潤う」ことが比較される訳です。
第3は長期的にみた日本の潜在成長率をどう引き上げるかという意味での明確な「成長戦略」がないこと。これは、恐らくマニフェストの必然的な帰結と感じています。要は4年間で行うことを約束する中に、20年先を見据えた政策は入りづらいということと思います。ただ、自民党の成長戦略に説得力がなかったこともあり、その点は結局余り目立ちませんでした。わかり易い例として、民主党幹部の方は「高速道路料金をゼロにすると環境に問題と言われる。それはその通りだし、長い目で見て電気自動車を立ち上げるといった政策は必要。ただ、そのことと当面数年間景気が悪くてもよいということは別問題であり、高速道路無料化は必要な政策」といったことを話されていた記憶がありますが、まさに、マニフェストに長期の話しが入りづらいという典型例と思います。なお、成長戦略については、またいつか触れてみたいと思います。
自民党頑張れ?!
民主党に刺されそうな表現ですが、要は、自民党崩壊するな、ということです。今回、国民は09年体制の始まり(民主党政権が今後50年間続くこと)を選択したとは思えません。米英に典型的にみられるような健全な政権交代が今後また起こることを期待しつつ、政治の責任としての大きな判断を放棄してきた自民党を捨て、今後4年間を民主党に委ねたということと思います。しかし不安なのは、野党慣れしていた民主党は、郵政選挙惨敗後も臥薪嘗胆をかさね、参議院選挙で与野党逆転を果たし、今回ついに政権を奪取しました。しかし、与党なれしている自民党にそうした根性があるのでしょうか?党が瓦解し、民主党に入党したり、新党を作って民主政権に閣外協力したり、そうしたことにならないでしょうか?その点は非常に不安です。自民党が好きということではなく(実際、今回比例区は民主党に入れました!)、この一点で、来年の参議院選挙、頑張って欲しいと思います。しかし、現時点では民主、社民、国民新党は318議席で、再可決に必要な320に僅か届いていないんですね。来年の参議院選挙で仮に自公でまた過半数を取るような場合も想定し、中間政党がどう動いていくか、おもしろい展開を期待します。
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2 comments on “Vol.1: 初めまして、そして政権交代”
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政治に対する不信感からか、政治というものに対し思考停止してしまう日々。そんな中で、「中の人」が書いてくれた読み物は、とても参考になります。今後も、素直な感情や客観的な分析などを楽しみにしております。
連載第1回、とても興味深く拝読させていただきました。
政権交代の影響がどう表れるのか、政権交代しても変わらない部分とは何なのか、そんなことを考えながら、読みました。
マニフェストに徹底する姿勢を見せる民主党閣僚の姿は、これまでにない印象を与えていますし、今後はその内容に含まれる問題をどう処理しつつ具現化していくのだろうかという点に焦点が絞られていくのでしょうね。
お忙しい中、執筆業務は大変なことと思いますが、とてもとても期待しています。