2024/10/28 06:30 | by Konan | コメント(0)
Vol.251: IMF世界経済見通し
次に、24日に日銀金融システムレポートが公表されましたが、この紹介は次々回(11月11日予定)に回します=次回(11月4日)は日銀金融政策決定会合と内閣府月例経済報告の紹介です。次々回の際には、トランプとハリスの決着も(多分)ついているのですね。
前置きが長くなりました。今回は22日に公表されたIMF世界経済見通しを紹介します。ベースラインの見通しより、あたかもトランプ当選を見越したリスクシナリオ分析が話題になりました。
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成長率はほぼ不変・横這い
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世界経済見通しは年4回公表されます。4月と10月は分厚く本格的なもの、1月と7月は中間レビュー的なものです。今回10月号のタイトルはPolicy Pivot, Rising Threats (政策の転換、高まる脅威)。結構おどろおどろしいタイトルですね。ただ、世界経済全体のベースライン見通しは穏当(退屈)です。
すなわち、世界全体の実質経済成長見通しは、2024年は+3.2%で前回と変わらず、2025年は+3.2%で-0.1%下方修正。うち先進国はそれぞれ+1.8%、+1.8%で、2024年は+0.1%上方修正、2025年は変わらず。新興国・途上国はそれぞれ+4.2%、+4.2%で、2024年は変わらず、2025年は-0.1%下方修正です。
ただし、国・地域ごとに景色が異なります。
上方修正組の代表は米国。2024年+2.8%、2025年+2.2%成長で、それぞれ+0.2%、+0.3%上方修正。
下方修正組の代表例を3つ挙げると、ドイツは2024年+0.0%、2025年+0.8%成長で、それぞれ-0.2%、-0.5%下方修正。中国は2024年+4.8%、2025年+4.5%成長で、2024年-0.2%下方修正(2025年変わらず)。メキシコは2024年+1.5%、2025年+1.3%成長で、それぞれ-0.7%、-0.3%下方修正。
世界全体の物価上昇率は2023年+6.7%、2024年+5.8%、2025年+4.3%、うち先進国はそれぞれ+4.6%、+2.6%、+2.0%と予測され、インフレは終息しつつあります。実際に中央銀行の利下げも始まっています。ただ、成長率が冴えないこと、国・地域により良し悪しがはっきりしていることがIMFの主な懸念で、それがタイトルに表れています。
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景気後退確率上昇
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今回の見通しでは、2通りのリスク分析・評価がなされています。まず、上記ベースライン見通しが下方に崩れる可能性の評価。具体的には、米国雇用市場の弱さが米国、そして世界の景気を下押ししてしまう可能性です。
米国の2025年成長率が0.8%以下に落ち込む確率は25%と試算され、4月時点での17%から上昇しました。これを受け、世界経済の2025年成長率が2%以下に落ち込む確率は17%(4月時点で12%)と試算されています。ものすごく小さい確率という訳でもありませんね。
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悪いシナリオが重なると
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もうひとつのリスク分析・評価はシナリオ分析。強弱両方のシナリオが用意されています。
景気悪化方向のシナリオは、トランプ政権誕生を見越してか、「関税引き上げ(米国の引き上げに加え中欧の対抗措置も勘案)」「不透明感拡大に伴う投資減速」「米国トランプ減税延長」「米欧での移民抑制」「債務問題等の影響によるリスクプレミアム拡大」の5つ。この5つの影響が全て顕在化した場合、世界のGDPはベースラインシナリオ対比で2025年-0.8%、2026年-1.3%低下するとされます。かなりの大きさです。
良い方向のシナリオは、「中国国内消費回復方向での政策実施(社会保障制度改革等)」と「欧州での投資増加策実行」。両方が実施されれば、世界のGDP成長率を2025年+0.5%押し上げるとされます。
今回はこの辺で。
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