2024/05/06 06:30 | by Konan | コメント(0)
Vol.232: 日銀金融システムレポート
金融システムレポートは毎年4月、10月と2回公表され、日銀の金融システムの安定性に関する評価が示されます。旧ひとり言の頃から毎回取り上げてきました。今回は不動産リスクと金利リスクに焦点が当てられています。
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金融システムは安定
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「わが国の金融システムは、全体として安定性を維持している」が総括評価です。金融仲介活動は円滑に行われ、大きな不均衡は認められません。また、様々なストレスに耐え得る、充実した資本基盤と安定的な資金調達基盤を有しています。
ただし、テールリスク(確率は小さいが起きると大変なことになるリスク)への警戒は引き続き重要ともされます。世界的な金融引き締め継続とそれに伴う海外経済の減速懸念など、ストレス局面は一段と長引く可能性があります。このため、不動産リスクと金利リスクに的確に対処し、金融システムの安定性を将来にわたって確保していく必要があります。
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不動産リスクに耐え得る?
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不動産市場に関しては、「一部に割高感が窺われる」「海外投資家が昨年後半に4年振りの売り越しに転じた」「米国ではオフィス空室率が上昇し、オフィス向け貸出延滞率が上昇している」など、気になる点が指摘されます。
そして、「海外市場の調整を契機に、日本の都市圏の商業用不動産価格が局所的に調整する」リスクが想定され、分析が行われています。邦銀の海外不動産貸出が毀損する可能性、世界分散投資を行う海外ファンドを介して日本の不動産市場に影響が及ぶ可能性が主なルートです。前者のルートについては、邦銀の海外不動産ファイナンスは僅少で、追加損失は限られます。
他方、後者のルートについては、わが国金融機関(地域銀行や信用金庫も含めて)の都市圏の不動産に対する共通エクスポージャーは拡大しています。このため、「都市圏の商業用不動産市場に限定された局所的なショックであっても、業態を問わず、全国の幅広い金融機関に影響が及び得る」と結論付けます。
少し敷衍すると、日本の金融システム全体でみれば、こうしたリスクに耐え得る状況です。しかし、個別金融機関レベルで見ると、不動産向け貸出・有価証券双方を通じ生じ得る損失の規模が、自己資本や収益力との関係で相応に上る先の存在が指摘されます。油断禁物ということですね。
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金利リスクは?
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金融機関の金利リスク対応については、「銀行部門の円貨金利リスク量は資産サイドと負債サイドで概ねバランス」「有価証券デュレーション短期化などで、金融機関の金利上昇に対する耐性は改善傾向」などポジティブな評価がみられます。
ただし、金利上昇が金融機関収益に及ぼす影響は、貸出や預金の金利追随率に依存します。また、預金の粘着性(簡単に引き出されないか)にも注意が必要です。
家計部門は、全体としては金利上昇はプラスに働きます(運用資産の利息増加を通じて)。ただし、当然ながら住宅ローンを借りている場合はマイナスに働きます。企業部門は、全体としては金利上昇に耐え得る収益力を持っています。ただし、これも当然ながら企業により異なります。
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その他
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上記以外では、企業倒産の増加、株価上昇、海外プライベートファンドの急成長が話題として取り上げられていますが、ここでは省略します。
尻切れトンボで申し訳ありませんが、今回はこの辺で。
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