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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2024/04/29 06:30  | by Konan |  コメント(0)

Vol.231: 日銀金融政策と月例経済報告


連休の谷間の今日は、日銀金融政策決定会合(25、26日開催)と内閣府月例経済報告(23日公表)を紹介します。円安が進む中、日銀の会合は注目を集めましたが、予想通り政策変更はありませんでした。日銀については今回は淡々と紹介することにとどめ、来月落ち着いて書こうと思います。

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景気判断は概ね不変
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今回のように展望レポートがある月(1月、4月、7月、10月)とない月(3月、6月、9月、12月)では表現が異なり比較が難しい面もありますが、判断はこれまでと概ね不変でした。

(現状)
・基調:一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している
・個人消費:物価上昇の影響に加え、一部メーカーの出荷停止による自動車販売の減少などがみられるものの、底堅く推移している
・設備投資:緩やかな増加傾向にある
・住宅投資:弱めの動きとなっている
・公共投資:横ばい圏内の動きとなっている
・輸出:横ばい圏内の動きとなっている

(先行き)
・海外経済が緩やかに成長していくもとで、緩和的な金融環境などを背景に、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まることから、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる

(リスク要因)
・海外の経済・物価動向
・資源価格の動向
・企業の賃金・価格設定動向
・金融・為替市場の動向やそのわが国経済・物価への影響

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物価見通し2026年度2%超え
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展望レポートの中では、植田総裁を含む9人の政策委員会メンバーによる実質GDP・消費者物価指数の見通しが示されます。中央値(9人のうち上からみても下からみても5番目の数字)は以下の通りです。除く生鮮食品・エネルギーの消費者物価は、2024年度・2025年度とも+1.9%とされ、3か月前の見通しが維持されました。そして、今回初めて見通しが出された2026年度は、+2.1%とついに2%目標を超えました!

(実質GDP)
2023年+1.3%(前回+1.8%)、2024年度+0.8%(前回+1.2%)、2025年度+1.0% (前回+1.0%)、2026年度+1.0%

(消費者物価指数=除く生鮮食品)
2023年度+2.8%(前回+2.8%)、2024年度+2.8%(前回+2.4%)、2025年度+1.9%(前回+1.8%)、2026年度+1.9%

(消費者物価指数=除く生鮮食品・エネルギー)
2023年度+3.9%(前回+3.8%)、2024年度+1.9%(前回+1.9%)、2025年度+1.9% (前回+1.9%)、2026年度+2.1%

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政策変更無し
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3月に政策変更を行ったばかりの日銀は、今回は政策を維持しました。この結果、日米金利差拡大の思惑から円安がさらに進みました。

5月に改めて書きますが、以下のように受け止めています。

・為替相場の水準を動かすことは日銀の仕事ではありません。単に円安を是正するため日銀が利上げすることは考えられませんし、日銀法で与えられた日銀の権能を超えています。

・ただ、話は単純ではありません。円安は2つの点で金融政策と関係してきます。

・ひとつは、円安は物価上昇を招く可能性があり、また、人々の物価観・インフレ期待を上方に動かす可能性もあります。要は、円安と(円高も)物価が関係してきます。

・もうひとつは、円安は日本の金利水準が本来あるべき水準より低いことを示唆している可能性があります。

・今回、政策変更はありませんでした。市場は年内あと1回利上げがある(短期金利が0.25%に引き上げられる)と予想していました。円安は、利上げ時期の前倒し、あるいは1回が2回に(場合により3回に)増えることにつながっていく可能性があります。こうした観点で次回6月以降の金融政策決定会合を見守ろうと思います。

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内閣府も景気判断維持
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内閣府の景気判断は、現状、先行きともに一言の変更も無く、維持されました。

(現状)
・基調:景気は、このところ足踏みもみられるが、緩やかに回復している
・個人消費:持ち直しに足踏みがみられる
・設備投資:持ち直しの動きがみられる
・住宅建設:弱含んでいる
・公共投資:底堅く推移している
・輸出:持ち直しの動きに足踏みがみられる

(先行き)
・基調:雇用・所得環境が改善する下で、各種政策の効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待される。ただし、世界的な金融引締めに伴う影響や中国経済の先行き懸念など、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクとなっている。また、物価上昇、中東地域をめぐる情勢、金融資本市場の変動等の影響に十分注意する必要がある。さらに、令和6年能登半島地震の経済に与える影響に十分留意する必要がある
・個人消費:雇用・所得環境が改善する下で、持ち直しに向かうことが期待される
・設備投資:堅調な企業収益等を背景に、持ち直し傾向が続くことが期待される
・住宅建設:当面、弱含みで推移していくと見込まれる
・公共投資:補正予算の効果もあって、底堅く推移していくことが見込まれる
・輸出:海外経済の持ち直しが続く中で、持ち直していくことが期待される。ただし、海外景気の下振れリスクに留意する必要がある

今回はこの辺で。

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