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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2024/02/19 06:30  | by Konan |  コメント(0)

Vol.224: 10~12月期GDP


今回は、15日に公表された2023年10~12月期GDPの紹介です。予想に反し2期連続マイナス成長でしたが、そのことよりも2023年暦年の名目GDPがドイツに抜かれ世界4位に転落したことの方が話題になりました。

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2四半期連続マイナス成長
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ポイントは以下の通りです。

・前期比-0.1%、年率-0.4%。2四半期連続のマイナス成長。寄与度は内需-0.3%、外需+0.2%と内需が足を引っ張りました。

・内需では、民間最終消費支出が前期比-0.2%(寄与度-0.1%)と3四半期連続のマイナス。設備投資が前期比-0.1%(寄与度-0.0%)とこちらも3四半期連続のマイナス。他の需要項目では、住宅投資が前期比-1.0%(寄与度-0.0%)、公的需要が前期比-0.2%(寄与度-0.1%)でした。

・外需では、輸出は前期比+2.6%(寄与度+0.6%)と好調。輸入は前期比+1.7%(寄与度-0.4%)でした。

・実質雇用者報酬は前年同期比-1.9%と、賃上げが物価上昇に追い付かない状況が続きます。

今回は輸出が頑張りましたが、内需は総崩れとなりました。個人消費は天候要因が影響していると思いますし(暖かいと冬物衣料が売れないなど)、コロナ下で我慢していた消費のリベンジが一段落してきた面もあると思いますが(飲み会や旅行を一通り終えた)、やはり実質賃金マイナスが下押し要因であることは否定できません。

設備投資は、日銀短観等のアンケート結果と異なるマイナスの連続ですが、人手不足や資材高騰による工事等の遅れや、各種アンケートは名目値なので物価上昇で水膨れした面があることが背景と思います。

輸出は北米向け自動車輸出や、GDP統計上輸出にカウントされるインバウンド需要に支えられました。

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ドイツに抜かれ世界4位に
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以上は全て実質GDPに基づく話ですが、今回は10~12月期の計数が出たことに伴い、2023年暦年の名目・実質GDPも公表されました。前年比では実質+1.9%、名目+5.7%とそこそこの成長、3年連続プラスとなりました。実数では実質558.7兆円、名目591.5兆円です。

ところが、この名目値をドイツと比較すると抜かれた訳です。ドイツは2023年の実質経済成長率-0.3%とマイナス成長に落ち込みました。この2023年に抜かれることには釈然としない面もありますが、理由は各種報道通り対ユーロでの円安と、ドイツの方が物価上昇率が高いことにあります。

そのうちインドに抜かれ世界5位になることも間違いないですし、1人当たりGDPでは様々な国に抜かれているので今更ショックもありませんが、ドイツと日本をあえて比較すると、以下の違いがあると思います。

日本は1980年代以降の急激な円高と90年代のバブル崩壊の2つに直面しました。このため、生産拠点の海外移転と国内でのリスク回避的な縮小・デフレ傾向が同時に進行し、GDPが伸び悩みました。

他方、ドイツは東西統一という大変な出来事を乗り越えた後、統一通貨ユーロ誕生という幸運に見舞われました。ユーロ圏の中で最強経済であるドイツに取り、ユーロ圏の平均的な経済ファンダメンタルズに影響されるユーロは「安い」水準が維持されました。安いので輸出に有利です。最近では中国投資も増えていますが、それでも国内に製造業の基盤を残しやすい環境にありました。またEU域内の労働力の活用も可能です。単純に言えば、EUやユーロという第二次世界大戦を戦った国々を結びつける取り組みが、ドイツに有利に働いた訳です。ここは日本との大きな違いと言わざるを得ません。

今回はこの辺で。

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