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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2024/02/05 06:30  | by Konan |  コメント(0)

Vol.222: IMF世界経済見通し


今回は1月30日に公表されたIMF世界経済見通し(World Economic Outlook: WEO)を簡単に紹介します。毎年4回、1月、4月、7月、10月に公表されますが、4月と10月は分厚く、1月と7月は簡略なものが出されます。

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見通し上方修正!
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今回の世界経済見通しの表題は「Moderating Inflation and Steady Growth Open Path to Soft Landing」、日本語訳は「インフレ率の鈍化と安定的な成長 ソフトランディングへの道開ける」。前回までのやや暗めなトーンから、明るく前向きなトーンに変わりました。直前に公表された米国2023年第4四半期GDPの強さや主要先進国でのインフレ率鈍化を踏まえ、舵を切った感じです。

世界全体の経済成長率は、2022年+3.5%から2023年+3.1%へと鈍化した後、2024年+3.1%と横ばい、2025年は+3.2%予想です。2024年は+0.2%上方修正、2025年は据え置きです。ただし、この水準は「歴史的(2000~2019年)平均である+3.8%を下回る」とされます。

このうち先進国は2022年+2.6%、2023年+1.6%、2024年+1.5%、2025年+1.8%で、2024年+0.1%上方修正、2025年据え置き。米国は2022年+1.9%、2023年+2.5%、2024年+2.1%、2025年+1.7%で、2024年+0.6%とかなりの上方修正、2025年は-0.1%下方修正。ユーロ圏は2022年+3.4%、2023年+0.5%、2024年+0.9%、2025年+1.7%で、2024年-0.3%、2025年-0.1%の下方修正。日本は2022年+1.0%、2023年+1.9%、2024年+0.9%、2025年+0.8%で、2024年-0.1%下方修正、2025年+0.2%上方修正です。米国の強さと欧州の弱さが目立ちますが、所謂ハードランディング(インフレ率低下の過程でマイナス成長など景気が急速に落ち込み)は避けられる予想です。

新興国・途上国は2022年+4.1%、2023年+4.1%、2024年+4.1%、2025年+4.2%で、2024年、2025年とも+0.1%上方修正。うち中国は2022年+3.0%、2023年+5.2%、2024年+4.6%、2025年+4.1%で、2024年+0.4%上方修正、2025年据え置きです。

世界のインフレ率は2022年+8.7%から2023年+6.8%、2024年+5.8%、2025年+4.4%と鈍化していくことが予想されます。とくに先進国は、2024年+2.6%(-0.4%下方修正)、そして2025年+2.0%(-0.2%下方修正)と、来年には多くの中央銀行の目標値に着地していくことが見込まれます。この点が「ソフトランディングへの道開ける」とのタイトルにつながったのだと思います。

リスクについても、前回までの「下振れ方向に傾いている」との判断から、「概ね均衡がとれている」に変更されました。主なリスク要因として、上振れ方向では「ディスインフレの加速が金融環境のさらなる緩和につながる可能性」が、下振れ方向では「紅海における攻撃などの地政学的ショックや供給の混乱による一次産品価格の再高騰で金融政策引き締めが長期化する可能性」「中国における不動産部門の低迷の深刻化」などが挙げられています。

今回はこの辺で。

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