2024/01/08 06:30 | by Konan | コメント(0)
Vol.219: 今年の日銀
今回は今年の日銀の金融政策を予想します。Saltさんと見立ては違いますし、Saltさんの方が的中する可能性が高いとも思います。ただ「一筋縄ではいかない、意外に難しい」という点を理解頂ければ幸いです。
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4月に起きること
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現在の金融政策の核は、短期金利と10年物国債金利の双方を操作する所謂イールドカーブ・コントロール(YCC)と、短期金利をマイナス0.1%に誘導するマイナス金利政策です。長期国債を大量に購入する量的緩和の側面、ETF・REITを購入する質的緩和の側面も重要ですし、とくにETFについては面白い話題もあります。ただ、今回はYCCとマイナス金利政策に的を絞ります。
植田総裁就任直後、昨年4月28日の金融政策決定会合で日銀は「金融政策運営について、1年から1年半程度の時間をかけて、多角的にレビューを行う」と宣言しました。また、この会合以降一貫して「賃金の上昇を伴う形で、2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現することを目指していく」としています。「1年程度」が到来するのも春闘の状況が見えるのも、この4月です。
他方で、欧米ではインフレ率が顕著に低下し始め、既に利上げは停止され、いつ利下げが始まってもおかしくない状況です。欧米が利下げを始めてしまうと日銀は動きづらいところです。
今年は当面1月23日、3月19日、4月26日に会合での決定内容が公表されます。4月26日では欧米に出遅れるリスクがあり、春闘集中回答(昨年は3月15日)を見て3月に決定することもあり得ますが、一応オーソドックスに4月の会合で金融政策の枠組み変更が行われると予想します。
その内容はマイナス金利政策を終了しゼロ金利政策に「復帰」することと、10年物国債金利の操作を取りやめること(ただし急騰時には介入するなどのセーフガードを設ける可能性あり)。すなわちマイナス金利政策もYCCも終了することです。
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変更できるのか
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上記は多くのエコノミストやアナリスト、マスコミと同じ見方で、新鮮味はありません。ただ、マイナス金利政策終了は僅か+0.1%とは言え利上げですし、YCC終了も長期金利上昇を招く可能性があります=既に10年物国債金利コントロールは緩くなっているので、左程上昇しないとの見方もありますが。こうした「利上げ」を行う度胸が日銀にあるか、疑う向きもあります。変動・固定双方の住宅ローン金利上昇に結び付きますし、円高になれば産業界も黙っていません。
しかし、この機を逃してしまうと植田総裁の残り4年の任期一杯何もできないことになりかねません。マイナス金利政策は導入当初から失着で、一刻も早くやめたいのが本音と思います。0.1%くらいで日本経済ががたつくとも思えません。YCCにより長期金利がマーケットの様々な見方を反映しない形で形成されてきたことも、日本経済にとりマイナスだったと思います。仮に日銀が政治に弱いとしても(この点は次回取り上げる予定です)、流石にこの程度の決定は出来ると思います。
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問題はその先
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上記の後どうなるか?短期金利についてはゼロ金利がずっと維持されるとの予想が多い一方、長期金利は1%台の予想が多いと思います。しかし、この2つは両立しません。
ゼロ金利維持は、日銀の度胸はマイナス金利政策終了で使い尽くされ、その後の利上げは世間が許さないとの見方によるものです。他方、長期金利1%台は、所謂中立金利の議論からきています。日本経済にとって高くも低くもない「ほど良い金利」という意味ですが、潜在成長率(実質)がゼロ%台、物価上昇率が2%、合計2%台とすると、金利が少なくとも1%を超えてこないと見合わないとの考え方になります。
ところが、仮に短期金利がずっとゼロ%に維持されると予想されると、それに引きずられる形で長期金利も低下し、ゼロ%に近づいてきます。「両立しません」と書いたのはこのためです。
しかし、仮に1%台が「ほど良い金利」である一方、ゼロ金利継続予想により長期金利水準が下がってしまうと、円安、物価上昇、キャピタルフライトなどの問題が生じ得ます。そうなると、日銀は追い込まれる形で利上げに動かざるを得ません。また、別のシナリオとして、昨年・今年に続き、人手不足問題が解消されないことから、来年も相当の賃上げが行われる環境になると、利上げが一段と現実味を帯びてきます。
冒頭「一筋縄ではいかない、意外に難しい」と書いたのはこのためです。今年の日銀、4月よりも、その後の政策への注目が必要と思います。
今回はこの辺で。
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