2023/10/16 06:30 | by Konan | コメント(0)
Vol.210: IMF世界経済見通し
今回は、10日に公表されたIMF(国際通貨基金)の世界経済見通し(World Economic Outlook)を紹介します。
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引続き冴えない世界経済
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今回の世界経済見通しの表題は「Navigating Global Divergences」、日本語訳は「格差広がる世界の舵取り」です。概要として、「世界経済の回復ペースは依然遅い。地域間の格差が広がる中、政策を誤る余地は限られている」とされ、引続き弱めのトーンになっていますが、だからと言ってとても悲観的でも無く、余り盛り上がりの無い内容でした。
世界全体の経済成長率は、2022年+3.5%から2023年+3.0%へと鈍化した後、2024年は+2.9%と若干弱含む予想です。2023年は据え置き、2024年は-0.1%下方修正です。この水準は「歴史的(2000~2019年)平均である+3.8%を大きく下回る」とされます。また、中期見通し(5年先の成長予測)が、新興国・途上国を中心に徐々に弱まっていることも指摘されます。
このうち先進国は2022年+2.6%、2023年+1.5%、2024年+1.4%で、2023年、2024年とも据え置き。米国は2022年+2.1%、2023年+2.1%、2024年+1.5%で、2023年+0.3%、2024年+0.5%とかなりの上方修正。ユーロ圏は2022年+3.3%、2023年+0.7%、2024年+1.2%で、2023年-0.2%、2024年-0.3%の下方修正。日本は2022年+1.0%、2023年+2.0%、2024年+1.0%で、2023年+0.6%上方修正、2024年据え置きです。2023年はドイツで-0.5%のマイナス成長が見込まれ、全体として米国対比でのユーロ圏の弱さが目立ちます。
新興国・途上国は2022年+4.1%、2023年+4.0%、2024年+4.0%で、2023年据え置き、2024年-0.1%下方修正。うち中国は2022年+3.0%、2023年+5.0%、2024年+4.2%で、2023年-0.2%、2024年-0.3%の下方修正です。
「格差広がる」は、結局のところ欧州と中国の弱さと、その他地域の相対的強さの差を意味していることになります。
世界のインフレ率は2022年+8.7%から2023年+6.9%、2024年+5.8%と鈍化していくことが予想されますが、変動の激しいエネルギーと食料を除くコアインフレ率の鈍化はより緩やかで、大半の地域で2025年まで目標値に戻らない見通しです。救いは、賃金上昇がインフレを生む賃金物価スパイラルが生じていないことでしょうか。
リスクは和らいでいますが、依然として下振れ方向に傾いています。主なリスク要因として、中国の不動産危機、気候や地政学的なショックにより一次産品価格がより不安定になる可能性、高すぎるインフレ率、財政バッファーの毀損などが挙げられます。
なお、9月26日公表の内閣府月例経済報告を紹介し忘れていたことに気付きました(汗)。申し訳ありません。住宅建設の現状判断が「このところ弱含んでいる」とやや下方修正された以外は変更無しでした。
今回はこの辺で。
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