2023/08/28 06:30 | by Konan | コメント(0)
Vol.205: 小噺・中国の不動産
既にSaltさんが解説してくれましたが、何人かから、中国不動産会社デフォルトに関して「なるほど」と思う話を聞きました。その横流しになってしまいますが、簡単に紹介します。
まず、日本の1990年代やリーマン破綻後のような金融危機の心配は無いという話です。日本の場合、銀行が不動産会社に貸し込み、不動産価格下落に伴いそれが不良債権化し、金融システムが崩壊しました。また、リーマンの場合、サブプライムローンを裏付けとした証券化商品価格の下落が、世界中の金融機関の健全性と流動性を奪いました。いずれも、資産価格と銀行を中心とした金融システムが強く結び付いていたため、危機が生じた訳です。
中国の場合、マンション完成前に全ての代金を払い込んでしまうと言われるように、不動産購入者が不動産会社の資金調達源です。また、信託商品を通じて富裕層から資金を調達することもあるようです。要は、資金調達を銀行システムに頼っている訳ではなく、不動産会社が倒産しても、損失負担が家計部門で分散され、金融危機を引き起こす可能性は小さい訳です。これは朗報です。
ただ、喜んでばかりはいられません。中国では一つの家計が保有する不動産の数が1戸を超えているそうですが、これは居住用だけでなく投資用が含まれている側面もありますし、夫婦がそれぞれの両親から家を受け継ぐケースもあります。しかし、一人っ子なので、夫婦の子供からみて、ふたつも家はいりません。そう考えると、これまで中国経済の成長を牽引してきた不動産投資に今後も期待することは難しくなります。
また、不動産とやや離れますが、若者の失業率の高さが話題になり、ついに統計公表取り止めとなりました。恐らく、仕事が無くても両親に支える余力があると想像しますが、経済の活力の面で良い話でないことは言うまでもありません。
そうした意味で、やや長い目で見た中国経済の停滞、それを契機にした社会の不安定化などのリスクに注意する必要があるかもしれません。BRICS拡大、日本の水産物輸入禁止など、中国の強い面も目立ちますが、弱さも抱えていると見る方が、フェアな気がします。
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