2023/04/17 06:30 | by Konan | コメント(0)
Vol.190: IMF世界経済見通し
今回は4月11日に公表されたIMF世界経済見通し(World Economic Outlook: WEO)を紹介します。毎年4月と10月に重厚なものが、1月と7月に簡略なものが公表されます。
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A Rocky Recovery
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今回のWEOの表題は「A Rocky Recovery」、日本語訳は「不安定な回復」です。ベースラインの経済見通しは前回1月と余り変わりませんが、下方リスクが強調されたレポートになりました。1月は、中国のゼロコロナ政策終了を受けIMFは強気化しました。今回は、インフレが思ったほど収まっていないことに加え、3月の金融危機を経て、再び弱気化した格好です。
世界全体の経済成長率は、2022年+3.4%から2023年+2.8%へと鈍化した後、2024年には+3.0%へ上昇するとされます。2023年、2024年とも-0.1%の下方修正です。
このうち先進国は2022年+2.7%、2023年+1.3%、2024年+1.4%で、2023年+0.1%上方修正、2024年据え置き。米国は2022年+2.1%、2023年+1.6%、2024年+1.1%で、2023年+0.2%上方修正、2024年+0.1%上方修正。ユーロ圏は2022年+3.5%、2023年+0.8%、2024年+1.4%で、2023年+0.1%上方修正、2024年-0.2%下方修正。日本は2022年+1.1%、2023年+1.3%、2024年+1.0%で、2023年-0.5%下方修正、2024年+0.1%上方修正です。なお、2023年はドイツが-0.1%、英国が-0.3%のマイナス成長が見込まれます。
新興国・途上国は2022年+4.0%、2023年+3.9%、2024年+4.2%で、2023年-0.1%下方修正、2024年据え置き。うち中国は2022年+3.0%、2023年+5.2%、2024年+4.5%で、2023年、2024年とも据え置きです。
世界のインフレ率は2022年+8.7%から2023年+7.0%、2024年+4.9%と鈍化していくことが予想されますが、鈍化のペースは当初予想より遅れています。さらに、変動の激しいエネルギーと食料を除くコアインフレ率は、多くの国で未だピークに達していないとされます。
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下振れリスク優勢
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上記のようにインフレ率が予想通り低下しないことは、金融引き締めが予想ほど早く終わらない可能性を示唆します。要は金利が簡単には下がらない訳です。そうなると、金融部門への深刻な副作用が心配になります。実際、3月のシリコンバレー銀行の破綻は、こうした心配が杞憂でないことを裏付けた格好になりました。
そうは言っても、「システミックな金融危機の状況に陥っているわけではない」とも強調されます。しかしながら、そこまでではないにしても、その一歩ないし二歩ほど手前、「経済成長が歴史的な水準と照らし合わせても低迷したままで、金融リスクが高まる中でも、インフレがまだピークに達していないという危険な時期に突入している」というのが、IMFの見立てです。このため、各国の金融・財政・規制当局には慎重かつ繊細な舵取りが求められます。
下振れリスクに関し、「銀行が資金調達コストの上昇に直面し、慎重に行動しなければならないことから、融資をさらに削減する」シナリオにおいては2023年マイナス0.3%下方修正(成長率が+2.5%程度に落ち込み)、「世界金融情勢が急速に引き締められるリスクオフが生じ、消費者信頼感の低下や家計支出と投資の減少が起き、世界の経済活動が大きく縮小する」深刻な下振れシナリオでは、2023年の成長率が+1%にまで落ち込むとされます。この深刻なシナリオの可能性は15%と意外に大きな数字です。
今回はこの辺で。
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