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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2023/02/06 06:30  | by Konan |  コメント(0)

Vol.181: IMF世界経済見通し


今回は1月31日に公表されたIMF世界経済見通しの紹介です。

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2023年見通し上方修正
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世界経済見通し(World Economic Outlook: WEO)は4月、10月に本格的で分厚いものが、1月、7月にその間を補う短いものが公表されます。今年の公表は例年より少し遅めでした。報道によると、中国のゼロコロナ政策解除を受け、分析のアップデートに時間をかけたようです。

今回のタイトルはInflation Peaking amid Low Growth(緩慢な経済成長 インフレ、ピークに達する)です。

世界全体の経済成長率は、2022年+3.4%から、2023年+2.9%へと鈍化した後、2024年には+3.1%へ加速するとされます。2023年は+0.2%の上方修正、2024年は-0.1%の下方修正です。この成長率は「歴史的(2000~2019年)な平均である+3.8%を下回っている」と指摘します。なので「緩慢な成長」という訳です。

このうち先進国は2022年+2.7%、2023年+1.2%、2024年+1.4%で、2023年+0.1%上方修正、2024年-0.2%の下方修正。米国は2022年+2.0%、2023年+1.4%、2024年+1.0%で、2023年+0.4%上方修正、2024年-0.2%下方修正。ユーロ圏は2022年+3.5%、2023年+0.7%、2024年+1.6%で、2023年+0.2%上方修正、2024年-0.2%下方修正。日本は2022年+1.4%、2023年+1.8%、2024年+0.9%で、2023年+0.2%上方修正、2024年-0.4%下方修正です。

新興国・途上国は2022年+3.9%、2023年+4.0%、2024年+4.2%で、2023年+0.3%上方修正、2024年-0.1%下方修正。うち中国は2022年+3.0%、2023年+5.2%、2024年+4.5%で、2023年+0.8%の大幅上方修正、2024年は据え置きです。

世界のインフレ率は2022年+8.8%から2023年+6.6%、2024年+4.3%と鈍化していくことが予想されます。しかし、パンデミック前(2017~2019年)の+3.5%を上回るとされます。インフレ率の鈍化は、金融引き締めの効果や、国際商品価格下落が背景です。

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下振れリスクが依然大
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リスクは依然下振れ方向、ただし前回より和らいでいるとされます。

上振れリスクとしては、所謂ペントアップ需要(コロナ下で我慢していた需要)増加やインフレが予想より早く落ち着くことが挙げられます。

下振れリスクとしては、中国でのコロナ禍の再深刻化、ウクライナ戦争の激化、金融引き締めによる過剰債務問題悪化、金融市場における急激な価格調整、地政学的分断の一段の進行が挙げられています。

紹介は以上ですが、世界経済は難しい局面にあると思います。中国の成長率回復は良い話です。しかし、これが国際商品価格の再高騰につながると、インフレ収束が遅れます。そうなると世界の中央銀行の利下げが遅くなり、結果的に景気が悪化します。こうしたややパラドキシカルな状況に陥っている訳です。今回のWEOはこうした面の指摘が弱く、少し楽観的にみえます。いかがでしょうか。

今回はこの辺で。次回は来週か再来週か不確実ですが、日銀総裁人事を扱います。

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