2022/11/28 06:30 | by Konan | コメント(0)
Vol.174: 月例経済報告とFTX破綻
今回は簡単に24日に公表された内閣府月例経済報告を紹介します。その後、最近話題のFTX破綻について一言。
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現状、先行きとも判断維持
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内閣府月例経済報告では、景気の現状、先行きとも判断が維持されました。目立つ変更点は、先行き基調判断の中で、「ウィズコロナの新たな段階への移行が進められる中」との従来の表現が「ウィズコロナの下で」とされたこと。「もうウィズコロナなのだ」との宣言でしょうか。
(現状)
・基調:景気は、緩やかに持ち直している
・個人消費:緩やかに持ち直している
・設備投資:持ち直している
・住宅建設:底堅い動きとなっている
・公共投資:底堅く推移している
・輸出:おおむね横ばいとなっている
(先行き)
・基調:ウィズコロナの下で、各種政策の効果もあって、景気が持ち直していくことが期待される。ただし、世界的な金融引締め等が続く中、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクとなっている。また、物価上昇、供給面での制約、金融資本市場の変動等の影響に十分注意する必要がある
・個人消費:ウィズコロナの下で、持ち直していくことが期待される
・設備投資:堅調な企業収益等を背景に、持ち直し傾向が続くことが期待される
・住宅建設:底堅く推移していくと見込まれる
・公共投資:関連予算の執行により、底堅く推移していくことが見込まれる
・輸出:当面横ばい圏内で推移することが見込まれる。ただし、海外景気の下振れ等による影響に注意する必要がある
日本経済については、物価上昇の影響から良いニュースは余り聞かれず、「円安で潤う大企業がある」程度が相場観と思います。また、7~9月期GDPもマイナス成長になりました。そうした中でも「緩やかに持ち直している」とされるのは、コロナ対応に気を使う余り欧米に比べ昨年の成長が低かったことの反動と、米欧中とも苦しみながらもプラス成長を続け、輸出が持っていることが理由と思います。このうち後者に関し、今後海外経済減速が明らかになる中、どこまで持ち堪えることが出来るかが焦点でしょうか。
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暗号資産(仮想通貨)
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海外ではFTX破綻が大きな話題です。他方、最近日本でも「日銀とメガバンク、来年春にもデジタル円を実証実験」と報道されます。
銀行預金が実質的に通貨として機能していることからも分かるように、民間主体が通貨の重要な発行者です。同時に、言わずもがなですが、中央銀行も通貨の発行者です。こうした発行者の違いに加え、「ステーブルか否か」「ブロックチェーン技術を用いるか」により、仮想通貨を含む各種通貨は分類されます。日銀のデジタル円は中央銀行が発行するステーブルなブロックチェーンは用いない通貨、ビットコインは民間が発行するステーブルでないブロックチェーンを用いた通貨、などです。先に言うべきでしたが、ステーブルとは、その通貨の価値が中央銀行や政府が発行する資産により裏付けられていることを指します。
岩井克人先生ではないですが、通貨の世界は謎に満ちています。1万円札をなぜ皆信用するのか、考え始めると意外に答えが出ません。「1万円札には1万円分の価値がある」と皆が信じているから価値があるという、トートロジーのようなことかもしれません。
ステーブルでない民間通貨も、参加者が「価値がある」と思うと価格が上昇します。その逆も起こります。FTX破綻については、業者による何らかの不正行為と、FRBの利上げ等の環境変化の中で、民間発行のステーブルでない通貨への信認が低下しがちな環境にあることが重なったとも言われます。
これ以上深掘りする知見はありませんが、この問題には興味を持ち続けたいと思います。今回はこの辺で。なお次週は事情により休載します。
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