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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2022/10/31 06:30  | by Konan |  コメント(0)

Vol.171: 金融政策決定会合と月例経済報告


先週は内閣府月例経済報告(25日)、日銀金融政策決定会合(27、28日)、総合経済対策(28日)と続きました。今回は、月例経済報告と金融政策決定会合を淡々と紹介します。来週以降、総合経済対策を取り上げようと思います。

順番は逆ですが、日銀の方から。

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金融政策不変、物価見通し上方修正
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最早説明の必要もありませんが、今回も超緩和的な金融政策は維持されました。円安に利上げで対応する選択は行われず、決定後は若干ですが円安に動きました。「今は物価が上昇しているが、前年比+2%の上昇が安定的に実現する状況にはなっていない」「利上げで景気の腰を折ってはならない」との趣旨の説明が繰り返されました。

因みに年8回開かれる金融政策決定会合のうち、4回(1月、4月、7月、10月)は展望レポートが公表され、その中では黒田総裁を含む9人の政策委員会メンバーによる実質GDP・消費者物価指数の見通しが示されます。中央値(9人のうち上からみても下からみても5番目の数字)は以下の通りです。

(実質GDP)
2022年度+2.0%(前回+2.4%)、2023年度+1.9%(前回+2.0%)、2024年度+1.5% (前回+1.3%)

(消費者物価指数=除く生鮮食品)
2022年度+2.9%(前回+2.3%)、2023年度+1.6%(前回+1.4%)、2024年度+1.6%(前回+1.3%)

(消費者物価指数=除く生鮮食品、エネルギー)
2022年度+1.8%(前回+1.3%)、2023年度+1.6%(前回+1.4%)、2024年度+1.6%(前回+1.5%)

このうち「消費者物価指数(除く生鮮食品)2022年度+2.9%」が話題になりました。前回対比+0.6%の上方修正です。そして足元の消費者物価上昇率は前年比+3%を超えました。しかし、来年度以降は+1.6%と2%目標を下回ります。黒田総裁は「2%の物価上昇実現には3%の賃上げが必要」と説明しましたが、そこには届かないことが暗示されます。この状況では利上げできないという訳です。

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景気判断は維持
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今回のように展望レポートが公表される月とそうでない月では表現が異なるため、比較は難しいのですが、景気判断は現状・先行きとも維持されました。

(現状)
・基調:資源高の影響などを受けつつも、新型コロナウイルス感染症抑制と経済活動の両立が進むもとで、持ち直している
・個人消費:感染症の影響を受けつつも、緩やかに増加している
・設備投資:一部業種に弱さがみられるものの、持ち直している
・住宅投資:弱めの動きとなっている
・公共投資:横ばい圏内の動きとなっている
・輸出:供給制約の影響が和らぐもとで、基調として増加している

(先行き)
・見通し期間(2024年度まで)の中盤にかけては、資源高や海外経済減速による下押し圧力を受けるものの、感染症や供給制約の影響が和らぐもとで、緩和的な金融環境や政府の経済対策の効果にも支えられて、回復していくとみられる
・見通し期間の中盤以降は、所得から支出への前向きの循環メカニズムが経済全体で徐々に強まっていくなかで、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。ただし、ペントアップ需要の顕在化による押し上げ圧力が和らいでいくため、成長ペースは徐々に鈍化していく可能性が高い

(リスク要因)
・海外の経済・物価情勢と国際金融資本市場の動向
・ウクライナ情勢の展開やそのもとでの資源・穀物価格の動向
・内外における新型コロナウイルス感染症が個人消費や企業の輸出・生産活動に及ぼす影響
・企業や家計の中長期的な成長期待

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月例経済報告も判断維持
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次に内閣府月例経済報告。設備投資がやや上方修正されたほかは、殆ど文言が変わらないほど判断は維持されました。

(現状)
・基調:景気は、緩やかに持ち直している
・個人消費:緩やかに持ち直している
・設備投資:持ち直している
・住宅建設:底堅い動きとなっている
・公共投資:底堅さが増している
・輸出:おおむね横ばいとなっている

(先行き)
・基調:ウィズコロナの新たな段階への移行が進められる中、各種政策の効果もあって、景気が持ち直していくことが期待される。ただし、世界的な金融引締め等が続く中、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクとなっている。また、物価上昇、供給面での制約、金融資本市場の変動等の影響に十分注意する必要がある
・個人消費:ウィズコロナの新たな段階への移行が進められる中、持ち直していくことが期待される
・設備投資:堅調な企業収益等を背景に、持ち直し傾向が続くことが期待される
・住宅建設:底堅く推移していくと見込まれる
・公共投資:関連予算の執行により、底堅く推移していくことが見込まれる
・輸出:当面横ばい圏内で推移することが見込まれる。ただし、海外景気の下振れ等による影響に注意する必要がある

少し淡々とし過ぎたかもしれませんが、今回はこの辺で。

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