2022/10/17 06:30 | by Konan | コメント(0)
Vol.169: IMF世界経済見通し
円安が進行しましたね。今回は11日に公表されたIMF世界経済見通し(World Economic Outlook=WEO)の紹介です。毎年1月、4月、7月、10月に公表されますが、4月と10月は分厚い本格版となり、これに合わせてデータベースも更新されます。
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世界経済は今回も下方修正
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今回のIMF世界経済見通しの表題はCountering the Cost-of-Living Crisis(生活費危機への対処)。世界経済の切羽詰まった状況が表れています。この一言で今回のレポートの内容は尽きていますが、少し数字を紹介します。
世界全体の経済成長率は、昨年+6.0%と2020年のコロナ禍による落ち込みから立ち直った後、2022年+3.2%、2023年+2.7%と予測されました。前回7月時点の予測対比では、2022年は横這いですが、2023年は-0.2%の下方修正。「世界経済の約3分の1を占める国が今年または来年にマイナス成長となる」と予想されます。
このうち先進国は2021年+5.2%、2022年+2.4%、2023年+1.1%で、2022年-0.1%、2023年-0.3%の下方修正。米国は2021年+5.7%、2022年+1.6%、2023年+1.0%で、2022年-0.7%下方修正(2023年は横這い)。ユーロ圏は2021年+5.2%、2022年+3.1%、2023年+0.5%で、2022年は+0.5%上方修正ですが、2023年は-0.7%の大幅下方修正。日本は2021年+1.7%、2022年+1.7%、2023年+1.6%で、2022年横ばい、2023年-0.1%の下方修正です。
新興国・途上国は2021年+6.8%、2022年+3.7%、2023年+3.7%で、2022年+0.1%上方修正、2023年-0.2%の下方修正。うちロシアは2021年+4.7%、2022年-3.4%、2023年-2.3%とGDPは落ち込みまずが、前回予測対比では2022年+2.6%、2023年+1.2%の上方修正。中国は2021年+8.1%、2022年+3.2%、2023年+4.4%で、2022年-0.1%、2023年-0.2%下方修正です。
世界のインフレ率は2021年+4.7%から2022年+8.8%に急上昇(ピーク時は+9.5%)。その後2023年+6.5%、2024年+4.1%と2年間かけてようやく落ち着く予想です。
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下振れリスクが依然大
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下振れリスクが依然高いとされます。
・不確実性が高く脆弱性も増す中、金融、財政、金融監督における政策の調整を誤るリスクが急激に高まっている
・金融市場に混乱が生じれば、世界の金融環境は悪化し、ドル高がさらに進んで、投資家が安全資産に向かう可能性がある。そうなれば世界の他の地域、とりわけ新興市場国や発展途上国では、インフレ圧力と金融脆弱性に拍車がかかるだろう
・インフレは、またしても予想以上に長期化しかねない。労働市場の極度の逼迫が続いた場合はなおさらである
・ウクライナでは激しい戦闘が続いており、さらにエスカレートすれば、エネルギー危機が深刻化する可能性がある
そして、2023年の世界経済成長率は、約4分の1の確率でベースラインの+2.7%から歴史的な低水準の+2%を下回る可能性があると予想します。リスクの多くが現実化した場合には、2023年の1人当たり所得はほぼ停滞し世界経済成長率は+1.1%にまで落ち込むと考えられ、その確率は10%から15%とします。
世界を生活費危機が襲います。この対応には適切な金融政策と財政政策が必要です。この点で、名指しこそ避けていますが、「財政政策は、金融当局によるインフレ抑制の取り組みを妨げるような働きをしてはならない。最近の出来事からわかるように、インフレ抑制努力と相反する働きはインフレを長引かせるだけで、深刻な金融不安定性を招きかねない」と英国を批判します。
また「主要経済国の政策経路が異なる方向に進むことで、米ドルが一段と強くなることも考えうる」ともします。神田財務官、頭が痛いですね。
今回はこの辺で。
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