2022/07/25 06:30 | by Konan | コメント(0)
Vol.160: 日銀金融政策決定会合
今回は20日、21日に開催された日銀金融政策決定会合の紹介です。欧米の利上げと対照的に金融緩和継続を決めました。展望レポートも公表されました。
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金融緩和継続
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金融政策は維持され、超緩和的な金融緩和が継続することになりました。記者会見での以下の黒田総裁の発言が象徴的です。
・私どもとしては、イールドカーブ・コントロールのもとで金利を引き上げるつもりは全くありませんし、±0.25%というレンジを変更するつもりも全くありません。
・金利をちょっと上げたらそれだけで円安が止まるとか、そういったことは到底考えられません。本当に金利だけで円安を止めようという話であれば、大幅な金利引き上げになって、経済に大きなダメージになると思います。
これ以上の説明が不要なほど、明確な発言と思います。
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物価安定目標は達成するが…
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展望レポートの中では、黒田総裁を含む9人の政策委員会メンバーによる実質GDP・消費者物価指数の見通しが示されます。中央値(9人のうち、上からみても下からみても5番目の数字)は以下の通りです。
(実質GDP)
2022年度+2.4%(前回+2.9%)、2023年度+2.0%(前回+1.9%)、2024年度+1.3% (前回+1.1%)
(消費者物価指数=除く生鮮食品)
2022年度+2.3%(前回+1.9%)、2023年度+1.4%(前回+1.1%)、2024年度+1.3%(前回+1.1%)
(消費者物価指数=除く生鮮食品、エネルギー)
2022年度+1.3%(前回+0.9%)、2023年度+1.4%(前回+1.2%)、2024年度+1.5%(前回+1.5%)
今年度の消費者物価指数(除く生鮮食品)前年比が+2.3%とされ、黒田総裁悲願の+2%を上回りました。報道でもこの点が大きく取り上げられました。ただ、エネルギーも除くコアコアでは+1.3%にとどまります。また、来年度以降の見通しは+2%に達しません。
そして、黒田総裁は「経済の持続的な成長のもとで、物価が2%程度、持続的・安定的に上昇するというかたちになるためには、賃金のもう一段の上昇が必要であると思います。そのためにも、やはり日本銀行として、引き続きしっかりと経済を支えるために金融緩和を続けていく必要があると思います」とします。
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景気判断はやや上方修正
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今回のように展望レポートが有る月(1、4、7、10月)と無い月(3、6、9、12月)とでスタイルが異なるため比較が難しい面はありますが、景気の基調判断は、先月までの「基調としては」の語が削除され、シンプルに「持ち直している」とされる形で、やや上方修正されました。需要項目別では、個人消費が上方に、輸出が下方に修正されました。
・基調:資源価格上昇の影響などを受けつつも、新型コロナウイルス感染症の影響が和らぐもとで、持ち直している
・個人消費:感染症の影響が和らぐもとで、サービス消費を中心に緩やかに増加している
・設備投資:一部業種に弱さがみられるものの、持ち直している
・住宅投資:横ばい圏内の動きとなっている
・公共投資:弱めの動きとなっている
・輸出:基調としては増加を続けているが、供給制約の影響を受けている
先行きに関しては、以下のように予想しています。
(見通し期間の中盤にかけて)=2024年度までの3年間が見通し期間です
・資源価格上昇による下押し圧力を受けるものの、感染症や供給制約の影響が和らぐもとで、外需の増加や緩和的な金融環境、政府の経済対策の効果にも支えられて、回復していくとみられる
(見通し期間の中盤以降)
・所得から支出への前向きの循環メカニズムが経済全体で徐々に強まっていくなかで、わが国経済は、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。ただし、ペントアップ需要の顕在化による押し上げ圧力が和らいでいくため、成長ペースは徐々に鈍化していく可能性が高い
リスク要因は以下が挙げられています。
・内外における新型コロナウイルス感染症が個人消費や企業の輸出・生産活動に及ぼす影響
・ウクライナ情勢の展開やそのもとでの資源・穀物価格の動向
・海外の経済・物価情勢と国際金融資本市場の動向
・企業や家計の中長期的な成長期待
紹介は以上です。黒田総裁も残り約半年。盤石な岸田政権、かつ安倍元総理不在のもとで、内閣改造後から次期総裁選びが本格化すると思います。私の耳にも何人か候補者の名前が入ります。誰になっても、黒田さんと白川さんの間のように思います。政策そのものへの関心は薄らぎ、黒田後に焦点が移っていきますね。
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