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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2022/05/02 06:30  | by Konan |  コメント(0)

Vol.151: 日銀金融政策決定会合と130円台


今回は4月27、28日に開催された日銀金融政策決定会合を紹介します。金融緩和を継続する姿勢が一段と明確になり、円相場は130円台に下落しました。

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景気判断は維持
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今回のように展望レポートが合わせて公表される月(1、4、7、10月)とその他の月(3、6、9、12月)でスタイルが異なるため比較が難しい面はありますが、景気の基調判断は維持されました。

・基調:新型コロナウイルス感染症や資源価格上昇の影響などから一部に弱めの動きもみられるが、基調としては持ち直している
・個人消費:感染症によるサービス消費を中心とした下押し圧力が和らぐもとで、再び持ち直しつつある
・設備投資:一部業種に弱さがみられるものの、持ち直している
・住宅投資:横ばい圏内の動きとなっている
・公共投資:高水準ながら弱めの動きとなっている
・輸出:供給制約の影響を残しつつも、基調としては増加を続けている

先行きに関しては、見通し期間(2024年度まで)の序盤・中盤と中盤以降に分け、以下のように予想しています。

(序盤から中盤にかけて)
・資源価格上昇による下押し圧力を受けるものの、感染症や供給制約の影響が和らぐもとで、外需の増加や緩和的な金融環境、政府の経済対策の効果にも支えられて、回復していくとみられる

(中盤以降)
・資源高のマイナスの影響が減衰し、所得から支出への前向きの循環メカニズムが経済全体で徐々に強まっていくなかで、わが国経済は、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。ただし、ペントアップ需要の顕在化による押し上げ圧力が和らいでいくため、成長ペースは鈍化していく可能性が高い

物価については、「消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、携帯電話通信料下落の影響が剥落する2022年度には、エネルギー価格の大幅な上昇の影響により、いったん2%程度まで上昇率を高めるが、その後は、エネルギー価格の押し上げ寄与の減衰に伴い、プラス幅を縮小していくと予想される」とします。この点が政策との関係で重要なメッセージとなります。

リスク要因は以下が挙げられています。
・新型コロナウイルス感染症が個人消費や企業の輸出・生産活動に及ぼす影響
・資源価格の動向
・国際金融資本市場・海外経済の動向
・企業や家計の中長期的な成長期待

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成長率と物価の見通し
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展望レポートの中では、黒田総裁を含む9人の政策委員会メンバーによる実質GDP・消費者物価指数の見通しが示されます。中央値(9人のうち、上からみても下からみても5番目の数字)は以下の通りです。2024年度の見通しが出るのは初めてです。

(実質GDP)
2021年度+2.1%(前回+2.8%)、2022年度+2.9%(前回+3.8%)、2023年度+1.9%(前回+1.1%)、2024年度+1.1%

(消費者物価指数=除く生鮮食品)
2021年度+0.1%(前回+0.0%)、2022年度+1.9%(前回+1.1%)、2023年度+1.1%(前回+1.1%)、2024年度+1.1%

(消費者物価指数=除く生鮮食品、エネルギー)前回は予測せず
2021年度-0.8%、2022年度+0.9%、2023年度+1.2%、2024年度+1.5%

ウクライナ情勢を受け、2022年度の成長見通しが下方修正される一方、物価見通しが上方修正されたことが特徴です。また、今回初めて生鮮食品に加えエネルギーも除いたコアコア物価見通しが出されました。これが2%の物価目標に達していないことが、政策決定の鍵を握っています。

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緩和姿勢維持を明確化
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政策面では、「10年物国債金利について0.25%の利回りでの指値オペを、明らかに応札が見込まれない場合を除き、毎営業日、実施することとした」との文言が加わりました。黒田総裁のこれまでの発言が明確に裏付けられた格好で、これを受け円相場は130円台に下落しました。

実は先週、執筆者の集まりがありSaltさんと政策の予想を行いました。「流石に変更は無いだろう」との意見で一致しましたが、その予想より更に明確に日銀の姿勢が示された感じを受けます。

まだ日銀の公式な文書は出ていませんが(本日日銀HP掲載予定)、日経新聞報道で黒田総裁会見の模様を読むと、「資源価格が上昇を続けるとは想定していない」「2%の物価安定目標を持続的に実現するには、現在の強力な金融緩和を粘り強く続けていくことが適当」との言葉が並びます。為替相場について「最近の過度な変動は先行きの不確実性を高め、企業の事業計画の策定を難しくする」と一応牽制しましたが、これを政策変更の理由とはしませんでした。

実体経済が良い訳でなく、仮に利上げを行うと、円安是正・物価落ち着き効果が得られるとしても、コロナ禍で弱った企業にマイナスの影響が及びます。任期残り1年を切った黒田総裁の選択肢は極めて狭いということが裏付けられた会合となりました。

今回はこの辺で。

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