2022/04/18 06:30 | by Konan | コメント(0)
Vol.149: パラダイムが転換する時…
思いのほか忙しい日が続き悩みましたが、2週連続の休載も躊躇われたので、短く書くことにしました。JDさんとSaltさんの架け橋のような内容です。
***********
パラダイムは変わるのか
***********
私が大学生の頃(1979~83年)、トーマス・クーンの「科学革命の構造」が必読書のひとつでした。その中でパラダイム転換という言葉を知りました。単純に言えば、物を見る見方の枠組みが変わると、同じ物が全く違って見えるようになるという話です(乱暴な要約で申し訳ありません)。
冷戦終結以降、グローバル化が大きく進みました。JDさんの整理で言えばリベラリズムですが、お互いを信じ依存し合い、最も安く作れる国から安心して物を買い、各国は得意分野に特化し、国際貿易が拡大する構図です。この流れが新興国・途上国の成長を齎し、先進国の物価安定や金利低下を生みました。様々な地域で紛争は起きましたが、世界全体では安定と平和が続きました。
その流れが変わる契機は(9.11を別にすれば)リーマン危機だったのかもしれません。先進国中心に経済は大きく落ち込み、貧富の差が拡大していきます。それを尻目に中国は高成長を続け、いつしか世界第2の経済大国になりました。そこに習近平という強力なリーダーも誕生しました。
そうした中で誕生したトランプ政権が、流れを更に大きく変えました。米国独自の利益に拘り中国との対立を深めます。世界は米国と中国の間で選択を迫られます。米国派は中国市場へのアクセスを躊躇します。中国から直接ではなく東南アジアなどを迂回した対米輸出も増え始めます。
そしてコロナ禍。マスクを自国で賄えないことが恐怖感を呼びます。国際的な物流もロックダウン等の影響で混乱します。この混乱に米国の異常なまでの巣ごもり需要が拍車をかけ、半導体不足、コンテナ船不足を生みます。海外に依存した長いサプライチェーンのままで良いか、疑念が膨らみます。
流石に「ここからは改善」と思った矢先のウクライナ侵攻。冷酷なロシアの攻撃に立ち向かうウクライナ国民を支援するため、西側諸国は強力な制裁に踏み切ります。ロシアへのエネルギーや食糧の依存は悪になります。必死に供給経路を変えようとしますが、その摩擦で価格は上昇しインフレが起きます。いつの間にかFEDはbehind the curveと批判され始め、金融緩和を維持する黒田総裁を円安が襲います。
***********
JDさんの世界、Saltさんの世界
***********
こうしてJDさんの世界情勢の世界とSaltさんの経済の世界がつながり、リベラリズムがリアリズムに取って代わられ、グローバル化・低インフレが短いサプライチェーン・地産地消・インフレに変わっていく…今まさにこうした局面に立っているのだと思います。
これは現実です。ただ非合理です。非合理を合理に戻せるとしたら、それは民の力なのか、巨人のような国際政治家の誕生を待つしかないのか。そうした気持ちでJDさん、Saltさんのメルマガを読み続けようと思います。
来週以降、IMF世界経済見通し、日銀金融システムレポート、内閣府月例経済報告、日銀金融政策決定会合と定例物の紹介が続きます。今月末の日銀金融政策決定会合は注目ですね。
当社に無断で複製または転送することは、著作権の侵害にあたります。民法の損害賠償責任に問われ、著作権法第119条により罰せられますのでご注意ください。
いただいたコメントは、チェックしたのち公開されますので、すぐには表示されません。
ご了承のうえ、ご利用ください。