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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2022/02/21 06:30  | by Konan |  コメント(0)

Vol.143: GDP、月例報告、指値オペ


金曜日朝3回目のワクチン接種を受けたところ、翌朝まで副反応で節々が痛く辛い思いをしました。逆に言えば3回目の効果がありそうで、ホッともしています笑。

さて、メルマガ第2回となる今回は定例物を扱います。15日に公表された昨年10~12月期GDP、17日に公表された内閣府月例経済報告、そしてやや旧聞になりますが、バレンタインデーに実施された日銀指値オペの三題です。

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GDPは回復したが…
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まずはGDP。今回は比較的分かりやすい内容でした。昨年10~12月期GDPは前期比+1.3%、この勢いが1年間続くと仮定した年率換算では+5.4%と高い伸びでした。7~9月期は前期比-0.7%のマイナス成長だったので、2期振りのプラス成長となります。因みに前期比は2020年10~12月期以降プラス、マイナス、プラス、マイナス、プラスとジグザグで、コロナの影響をもろに受け続けています。

寄与度(+1.3%成長にどの需要項目が貢献し、どの項目が足を引っ張ったか)でみると、国内民間需要+1.3%、公的需要-0.2%、純輸出(輸出-輸入)+0.2%で、国内民間需要が好調だったことが分かります。国内民間需要の中でも家計最終消費支出(個人消費)が前期比+2.8%、年率換算+11.5%、寄与度+1.4%の高い伸びを示し、個人消費の復調が今回のGDP成長の主因であることが分かります。昨年10月に緊急事態宣言が解除された後、忘年会シーズンにかけてお店は劇込みでした。その勢いがそのまま表れた形です。

補足を3点。2021年暦年の成長率も公表され、2019年-0.2%、2020年-4.5%の後、+1.7%と漸くプラス成長に転じました。2019年は消費税率引上げやトランプ政権下での米中摩擦の関係で日本は世界でも数少ない(唯一かもしれない?)マイナス成長国になりました。そして2020年は他の国々同様コロナの影響で打撃を受けました。+1.7%は前年の大きな落ち込みを踏まえると余りに弱い数字です。

第2に、高い成長を示した10~12月期のGDPの金額は541兆円。コロナ前、消費税率引上げで落ち込んだ2019年10~12月期GDPの542兆円にも届きません。中国や米欧がコロナ前の水準を回復する中で、遅れが目立ちます。

第3に、本年1~3月期については、まん延防止等重点措置の影響で苦戦が予想されます。再びマイナス成長を予想するエコノミストもいます。

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月例経済報告は下方修正
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月例経済報告は、オミクロン株の影響を受け判断が下方修正されました。基調判断は前月の「新型コロナウイルス感染症による厳しい状況が徐々に緩和される中で、このところ持ち直しの動きがみられる」から「持ち直しの動きが続いているものの、新型コロナウイルス感染症による厳しい状況が残る中で、一部に弱さがみられる」に、個人消費は前月の「このところ持ち直している」から「このところ持ち直しに足踏みがみられる」への変更です。素直な判断と思います。細かく見ると、設備投資が上方修正、住宅建設が下方修正されています。

(現状判断)
・基調:景気は、持ち直しの動きが続いているものの、新型コロナウイルス感染症による厳しい状況が残る中で、一部に弱さがみられる
・個人消費:このところ持ち直しに足踏みがみられる
・設備投資:持ち直しの動きがみられる
・住宅建設:このところ弱含んでいる
・公共投資:高水準にあるものの、このところ弱含んでいる
・輸出:おおむね横ばいとなっている
・輸入:弱含んでいる

(先行き)
・基調:感染対策に万全を期し、経済社会活動を継続していく中で、各種政策の効果や海外経済の改善もあって、景気が持ち直していくことが期待される。ただし、感染拡大による影響や供給面での制約、原材料価格の動向による下振れリスクに十分注意する必要がある。また、金融資本市場の変動等の影響を注視する必要がある
・個人消費:感染対策に万全を期し、経済社会活動を継続していく中で、持ち直していくことが期待される
・設備投資:企業収益の改善等を背景に、持ち直し傾向が続くことが期待される
・住宅建設:当面、弱含みで推移していくと見込まれる
・公共投資:弱含みで推移していくことが見込まれるものの、次第に補正予算の効果の発現が期待される
・輸出:海外経済が改善する中で、持ち直していくことが期待される。ただし、海外経済の動向や供給面での制約による下振れリスクに注意する必要がある
・輸入:感染対策に万全を期し、経済社会活動を継続していく中で、次第に持ち直していくことが期待される。ただし、感染拡大による影響や供給面での制約などによる下振れリスクに注意する必要がある

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指値オペって何?
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最後は技術的な話題。日銀は、2月10日に予め予告したうえで、14日に「指値オペ」を実施しました。技術的ですが、日銀のスタンスを表すと関係者の間で話題になりました。

解説を始めると長くなってしまいますが、ポイントは以下の点です。

・2013年3月の黒田総裁登場以降、日銀は「量的質的金融緩和」を進めました。市場への資金供給量の圧倒的なまでの拡大(量)と、ETF(株式)やREIT(不動産)などリスクの高い資産の購入(質)の組み合わせです。その後いろいろな迷走を経て、日銀の金融政策は「金利」コントロールを軸足に据える方向に舵を切りました。2016年9月のことです。日銀も海外の中央銀行も以前は金利コントロール(=金利を上げたり下げたりすること)が金融政策の主な手段だったので、先祖返りのようなものですが、日銀オリジナルの「発明」として、長短金利操作を導入しました。以前はどの国の中央銀行も短期金利のコントロールに専念し、長期金利は市場での期待形成に委ねていました。しかし、日銀は短期金利だけでなく「10年物長期金利」も直接コントロールすると宣言したのです。当初は短期金利-0.1%、長期金利ゼロ%が誘導目標とされました。

・ただ、流石に10年物金利をピッタリとゼロ%に固定し続けることは難しく、少し幅を持たせていました。ただ、この幅がどの範囲を指すか不明確な面がありました。そこで2021年3月、この幅がプラスマイナス0.25%の範囲であると明確にしました。

・昨年後半以降、米国発でインフレ懸念が急速に高まり、世界的に長期金利は上昇傾向です。日本も0.25%を超える可能性が絵空事でなくなってきました。日銀の選択肢は2021年3月の決定を変え幅を広げるか、厳格に0.25%を守るか何れかでしたが、後者を選びました。

・ところで「指値」とは何かと言えば、普段日銀が市場から国債を購入する際は「入札」を行います。購入金利(価格)は市場参加者の応札状況に左右されます。指値は、入札でなく「0.25%で買う(0.25%以外では買わない)」と日銀が決めてしまうことを意味します。市場参加者からみると、長期金利が0.25%を超えそうになる都度日銀の指値オペが行われると思えば、0.25%超の金利をトライしなくなります。管理相場ですね。

以上が技術的な説明ですが、より大事なことは、世界的なインフレ懸念の中でも日銀の緩和姿勢は変わらないと宣言したに等しいことです。その是非はさて置き、海外金利が上昇する中で円金利は上がらないので、為替相場は円安方向に動きやすくなります(金利が付かない円の魅力が落ちるので)。最近は「悪い物価高」「円安は困る」といった論調も強まりつつありますが、それに背を向けた格好です。米国についてはSaltさんが詳細に追ってくれていますが、私も追々日銀の判断の是非について書いていこうと思います。

今回はこの辺で。次回は3月7日です。読者の方から「物価」についてのご質問がありました。それに答えたいと思います。

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