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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2022/01/24 06:30  | by Konan |  コメント(0)

Vol.140: 月例経済報告と金融政策決定会合


先週は内閣府月例経済報告(18日公表)と日銀金融政策決定会合(17、18日開催)が重なりました。また日銀利上げ議論との観測報道が事前に流れ注目を浴びました。黒田総裁は全否定でしたが、ここ何年も金融引締めと無縁だった日本では久方振りのニュースになりました。

今回は、月例経済報告、決定会合のうち景気判断、決定会合のうち先行き物価見通しと金融政策の行方に分けて説明します。

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月例経済報告;ほぼ前月通り
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月例経済報告は、現状判断、先行き見通しとも前月の表現が基本的に維持されました。あえて言えば、先行きに関し、感染症の影響が「注視」から「下振れリスクに十分注意」と警戒感が上がったことが変化でしょうか。

(現状判断)
・基調:景気は、新型コロナウイルス感染症による厳しい状況が徐々に緩和される中で、このところ持ち直しの動きがみられる
・個人消費:このところ持ち直している
・設備投資:持ち直しに足踏みがみられる
・住宅建設:おおむね横ばいとなっている
・公共投資:高水準にあるものの、このところ弱含んでいる
・輸出:おおむね横ばいとなっている
・輸入:弱含んでいる

(先行き)
・基調:感染対策に万全を期し、経済社会活動を継続していく中で、各種政策の効果や海外経済の改善もあって、景気が持ち直していくことが期待される。ただし、感染症による影響や供給面での制約、原材料価格の動向による下振れリスクに十分注意する必要がある。また、金融資本市場の変動等の影響を注視する必要がある
・個人消費:感染対策に万全を期し、経済社会活動を継続していく中で、持ち直しが続くことが期待される
・設備投資:企業収益の改善等を背景に、持ち直しに向かうことが期待される
・住宅建設:当面、横ばいで推移していくと見込まれる
・公共投資:弱含みで推移していくことが見込まれるものの、次第に補正予算の効果の発現が期待される
・輸出:海外経済が改善する中で、持ち直していくことが期待される。ただし、海外経済の動向や供給面での制約による下振れリスクに注意する必要がある
・輸入:感染対策に万全を期し、経済社会活動を継続していく中で、次第に持ち直していくことが期待される。ただし、感染症による影響や供給面での制約などによる下振れリスクに注意する必要がある

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決定会合:景気判断上方修正
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展望レポートが公表された今回とされない前回(昨年12月)とで書き方に違いがあるため正確な比較は難しいのですが、日銀の判断は上方修正されました。現状の基調判断は前回は「基調としては持ち直している」でしたが、今回は「持ち直しが明確化している」とされています。先行き見通しはほぼ前回通りです。

(現状判断)
・基調:内外における新型コロナウイルス感染症の影響が徐々に和らぐもとで、持ち直しが明確化している
・個人消費:感染症によるサービス消費を中心とした下押し圧力が和らぐもとで、持ち直しが明確化している
・設備投資:一部業種に弱さがみられるものの、持ち直している
・住宅投資:持ち直している
・公共投資:高水準ながら弱めの動きとなっている
・輸出:供給制約の影響を残しつつも、基調としては増加を続けている

(先行き)
・基調:新型コロナウイルス感染症によるサービス消費への下押し圧力や供給制約の影響が和らぐもとで、外需の増加や緩和的な金融環境、政府の経済対策の効果にも支えられて、回復していくとみられる。その後も、所得から支出への前向きの循環メカニズムが家計部門を含め経済全体で強まるなかで、わが国経済は、潜在成長率を上回る成長を続けると予想される

(経済のリスク要因)
リスク要因は以下が挙げられます。
・新型コロナウイルス感染症が個人消費や企業の輸出・生産活動に及ぼす影響
・海外経済の動向
・資源価格の動向
・企業や家計の中長期的な成長期待

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物価見通しと金融政策
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展望レポートの中では、黒田総裁を含む9人の政策委員会メンバーによる実質GDP・消費者物価指数の見通しが示されます。中央値(9人のうち、上からみても下からみても5番目の数字)は以下の通りです。

(実質GDP)
2021年度+2.8%(前回+3.4%)、2022年度+3.8%(前回+2.9%)、2023年度+1.1%(前回+1.3%)

(消費者物価指数)
2021年度+0.0%(前回+0.0%)、2022年度+1.1%(前回+0.9%)、2023年度+1.1%(前回+1.0%)

実質GDP見通しは今年度下方修正、来年度上方修正と結構大きく変わりましたが、報道では来年度の物価上昇見通しが+1.1%へと上方修正されたことが話題になりました。会合前の利上げ議論報道や欧米でのインフレ高進に引っ張られての報道振りと思います。

日本の物価に関し複雑な点は、携帯電話通信料引下げなど一時的要因の影響の大きさです。展望レポートの中では、2021年第4四半期の消費者物価指数前年比に関し:
・除く生鮮…+0.3%
・除く生鮮で携帯電話通信料等の影響を除く…+1.6%
・除く生鮮・エネルギー…-0.7%
・除く生鮮・エネルギーで携帯電話通信料等の影響を除く…+0.6%
との4つの数字が並びます。

生鮮食品は天候に価格が左右されやすく、それを除いて物価の基調を判断することが通常です(上記では+0.3%)。しかし、現状ではこれにエネルギー価格上昇という上向きの一時要因(上記の+0.3%と-0.7%の差分である+1.0%分)と、携帯電話通信料等という下向きの一時要因(上記の+0.3%と+1.6%の差分である-1.3%分)が働いています。この一時要因が先々消えていくと考えると、物価上昇率の実態は上記の+0.6%とみていることが表されます。

この+0.6%は日銀が目指す+2%には程遠いもので、黒田総裁は記者会見における「利上げを議論しているのか」との質問に「そうした議論は全く行っていない」と全否定しました。議事要旨や議事録が公表される金融政策決定会合で議論されていないことは間違いないと思います。ただ、Saltさんがメルマガで引用した元日銀審議委員(現在野村総合研究所)の木内さんが指摘するように、日銀の事務方は常に様々な議論を行っています。実際にも利上げは先の先とは思いますが、そうした事務方の議論に少しだけ現実味が帯び始めたという感じでしょうか。

今回はこの辺で。

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