2022/01/10 06:30 | by Konan | コメント(0)
Vol.138: 今年のこと(その1)
今年の初回です。年初にいろいろ考えても、結局予想外のことで翻弄される年が続きますが…
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寅年を遡ると
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このためか、多くの人が過去の干支を遡ります。相場関係者はとくにそうでしょうか。最近の寅年を振り返ると、不思議な共通点があるように感じます。
・2010年:2008年9月のリーマン破綻後、2009年は日本を含め先進国中心に金融・経済の大混乱が続きました。日本では自民党が下野しました。2010年は底から必死に這い上がる年になりました。
・1998年:前年の1997年11月、拓銀・山一の経営破綻を機に日本では金融危機が深刻化しました。アジア通貨危機も襲いました。1998年は少しずつですが金融システム安定化に向けた制度整備等が進み始めた年でした。
・1986年:前年の1985年9月、プラザ合意がなされ急激な円高が進みました。1986年は円高不況真っ只中でしたが、少しずつバブルも芽生え始めました。
・1974年:前年の1973年10月、産油国が原油価格引き上げを発表し、第一次石油危機が起きました。1974年は狂乱物価に見舞われましたが、省エネルギーなどの対応も徐々に進み始めました。
こうして最近4回を振り返ると、その前の丑年が最悪、寅年はそこから這い上がった、あるいは這い上がる契機を掴もうとした年に当たりました。昨年2021年は、2020年に続きコロナ禍に翻弄されました。今年はそこから這い上がれるのか?
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コロナ禍がもたらしたこと
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コロナ禍は様々な形で経済、社会、政治に影響を与えました。影響は一様でなく、国により人により大きな違いを生みました。2020年春頃、そうしたことには思いも寄らず、単純にL字型回復かU字型回復かなどと議論していたことを懐かしく思い出します。デフレが懸念され、インフレが問題になると予想した人は私を含めほぼ皆無でした。
今回は経済に的を絞ります。各国でロックダウンを含む行動制限が取られ、飲食業、旅行業、対面型サービス業などが大打撃を受け、労働法制により差はありますが多くの人が職を失いました。この点は各国共通です。しかし、足元の経済状況には大きな違いがあります。違いを生んだ背景は以下と思います。
・行動制限の長さの違い:いろいろと議論されましたが、行動制限が短期間で済むほど経済の回復が早いことは間違いありません。行動制限を短期間で終わらせることが出来るか否か、当初は「ロックダウン法制の有無」などに着目されましたが、時間が経つにつれ、医療体制の頑健性やワクチン接種のスピードと、どの程度の感染を許容するか(=重傷者・死者の多さと行動の自由の間の選択についての選好関数の違い)に左右されるとの見方が増えたと思います。因みに、当初逸早くコロナ禍を克服した中国経済の不冴えが続きますが、「ゼロコロナ政策」が中国の政治体制下で余りに強く効きすぎ、飲食などサービス消費が全く伸びないことが大きな背景です。昨年夏場の欧州経済の急回復は、夏休みシーズンにコロナ禍が奇跡的に鎮静化したことが支えとなりました。日本の回復が先進国の中で遅れ菅内閣が倒れたのは、医療体制の頑健性の低さ・ワクチン接種開始の遅れ・自由より安全を選好する国民性によると思います。
・元々の裕福度や財政出動の余地の違い:貯蓄が多い、財政出動の余地が大きい環境なら、行動制限にも応じやすくなります。また、とくに米国ではこの余裕が巨額な巣ごもり需要を生みました。財の消費が爆発し、それが半導体やコンテナ船不足を生み、コロナ禍を契機とした自主的な退職の動きも相俟って、インフレを引き起こしました。米国の財消費のレベルはコロナ前を2割ほど上回る驚異的な水準です。多くの新興国・途上国にこうした余裕はありません。
今から思えばこうしたことは当たり前に思えますが、米国、欧州、日本、中国、新興国・途上国の間にかなりの違いが残ったまま新年を迎えました。
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インフレはどうなるか?
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オミクロン株の影響も心配ですが、今年の経済面の最大の着目点は米国のインフレの帰趨です。それをみながら実施されるFRBの金融政策が、為替相場、資産価格、新興国・途上国の資金フローなどに大きな影響を及ぼすからです。
Saltさんが確り追ってくれていますが、とても単純に言えば、物価は需要と供給とマインドで決まります。財政支援による更なる所得支援が流石に期待できない中、働くことが労働供給と所得・需要の双方を生みます。需要と供給の強弱次第で決まる物価の先行きはは読みにくいのですが、「働く・労働供給が増える=所得が増える=需要が増える」ことは典型的な経済の好循環で、普通に考えれば物価も上がります。他方、「働かない」場合は供給不足が続き、やはり物価上昇が続く可能性を生みます。既に5%台の物価上昇を経験し、日本のようなデフレマインドは払拭されたと考えて良いと思います。
他方で、物価上昇は前年比で測ります。+5%も上がった後、更に+5%もの上昇が続くと考えることも現実的とは思えません。結局のところ、昨年後半に比べ上昇率自体は落ち着くが、FRBが目標とする2%台の物価上昇は十二分に実現し、利上げに向けた環境が整っていくと考えることが、在り来たりながら常識的に思えます。
そのうえで、Saltさん指摘のように、焦点は最早利上げでなく、FRBバランスシート圧縮開始のタイミングかもしれません。コロナ前も、このQT(Quantitative Tightening)開始直後に市場で異変が起き、その後、トランプ政権下の米中貿易摩擦で景気がおかしくなり始め、そして2020年以降コロナ禍で世界経済は撃沈しました。
私の読みが当たるか否かさて置き、今年もSaltさんのメルマガから目が離せないというのが今年初回の結論です。
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