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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2021/11/15 06:30  | by Konan |  コメント(0)

Vol.131: 政治のこと(その1)


旧ひとり言では、時々政治の話しを書きました。今は公の世界を離れインサイダー的な情報が減り、また何と言っても永田町さんが執筆陣に加わったので、出る幕が無くなりました。ただ、今回の選挙結果を見て何か書きたくなりました。悩んだ結果、過去を振り帰り政権交代と経済の関係を整理しようと思い立ちました。その系で、今回の選挙でも話題になった成長と分配についても触れてみようと思います。2回の予定です。

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高度成長期と55年体制
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私が生まれた時、総理大臣は池田勇人でした。自民党総裁選の際に岸田さんが所得倍増を言いましたが、まさにその所得倍増に取り組み成果を上げました。日本経済は戦争の混乱から完全に立ち直り、後を継いだ佐藤栄作総理の時代にかけ、東京五輪や大阪万博も成功裏に開催しました。1968年には世界第二位の経済大国に躍り出ました。国民は一億総中流とも言われ、成長と分配の好循環が実現しました。

このように経済が順風満帆だったため、所謂55年体制下の与野党(=自民党vs.社会党)の最大の対立軸は憲法9条問題だったと思います。今の若い方には想像もつかないと思いますが、1979年に大学生になった私は「自衛隊は違憲である」との授業を小林直樹先生から受けました。憲法改正が実現していないということは、大雑把に言って1/3以上の人がその野党を支持し続けたことを意味します。

そうした中で忘れてはならないのは美濃部東京都知事の誕生です。マルクス経済学者で社会党・共産党の支持を受けた美濃部さんが都知事に就任したのは1967年。高度成長期の真っ只中です。因みに同じ野党系の黒田大阪府知事も1971年に誕生しました。美濃部知事の二大テーマは公害対策と福祉政策でした。公害は高度成長の歪みそのもので、東京でも光化学スモッグが大問題でした。また、当時は英国の揺り籠から墓場までが一種の憧れで、知事は老人医療費助成などに取り組みました。美濃部都政は財政面で破綻していきますが、一億総中流が実現していく中で、都市部と地方の格差が広がり始めたこと、その都市部でより進んだ分配面の配慮が求められたことの象徴的事例と思います。

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高度成長の終焉とロッキード
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さて、1972年に佐藤総理を引き継いだのはあの田中角栄。ロッキード事件で退任した田中総理は今流で言う「政治と金」の問題を憲法問題と並ぶ対立軸にした点でも意味がありますが、実は彼の頃から世界経済は大きな変化を迎えました。就任の前の年ニクソンショックが起き、米国経済の圧倒的な優位さが崩れ始めました。また、田中政権下で第一次オイルショックが起き、列島改造ブームの影響も合わせ日本は狂乱物価を経験しました。こうした変動を世界で最も上手く切り抜けた日本はバブル崩壊まで世界経済の中での地位を高めていきますが、順風満帆の高度成長から、様々な課題を抱える中での中位成長に移行した訳です。

政治と金の面では、1974年に田中総理の後をクリーンなイメージの三木武夫が引き継ぎましたが、流石に総理の疑獄事件を受け自民党は選挙で苦労します。その頃は自民党が保守、社会党などが革新と呼ばれましたが、国会は保革伯仲となります。また、新自由クラブが1976年に設立されたことがエポックメーキングです。それでも自民党政権は維持され、三木総理の後、1976年から1987年までの間、三角大福中と呼ばれた人たち(三木、角栄、大平正芳、福田赳夫、中曽根康弘のことです。大平総理が急死されたため鈴木善幸総理も挟まりました)が総理を務めました。この間様々なことがありましたが、経済との関係で大事なのは財政赤字が問題になり始めたことと思います。今となっては微々たる額ですが、私が社会人になった1983年には国債残高100兆円が話題になっていました。このため、新たな対立軸である「行財政改革」も急務とされました。その代表例である土光臨調が発足したのは1981年のことです。また、1986年に出された前川レポートも重要です。それまでの輸出主導の経済成長から内需主導への転換が謳われました。

この頃までに出揃った対立軸は、憲法、政治と金、福祉、行財政改革、公害となります。今の言葉で言えば、安全保障政策、政治と金、分配(大きな政府)、成長(小さな政府)、環境問題でしょうか。自民党は揺らぎながらも派閥領袖の交代で政権を維持し続けました。

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バブル崩壊と自民党の凋落
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三角大福中の後を継いだのは竹下登総理です。彼の就任は1987年。世の中がプラザ合意後の円高不況からバブルに向う転換点でした。平成(1989年)に入り女性スキャンダルで超短命に終わった宇野宗佑、三木総理同様クリーンさを売りにした海部俊樹、そして宮澤喜一と何とか自民党は政権を維持しますが、1993年この構図が崩れ細川護熙政権が誕生しました。その裏で暗躍したのは今回遂に小選挙区で落選した小沢一郎です。きっかけは政治上の野心と思いますし、宮澤総理不信任案に賛成するという暴挙に出た(その後、同じことが出来ず影響力を失ったのが加藤紘一さんですね)ほど、当時の政治家には凄みがありました。ただ、バブルが崩壊し日本経済が転落に向かい始めたことが、東京佐川急便事件のようなスキャンダルと合わせ政権への国民の不信を強めたという意味で、この政権交代の背景にあったとも思います。

細川総理の後、羽田孜、自社さ連立政権の村山富市と非自民党の総理が続き、社会党は遂に自衛隊違憲説を取り下げました。しかしこの構図は長続きせず、1996年以降2001年まで橋本龍太郎、小渕恵三、森喜朗と自民党の総理が続きます。この間、金融危機が起き日本経済は底に落ちました。逆に言えば、そうした中で自民党が政権を維持できたことは、1999年以降公明党が連立に加わり自民党を支えたこと、一旦政権入りを果たした社会党がその後自滅に向かい始めたこと、野党が乱立したことなど様々な理由はあると思いますが、自民党にとり幸運だったと言えるかもしれません。

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中興の祖から民主党政権へ
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その自民党を一時救ったのが小泉純一郎総理です。2001年から2006年まで政権を担い高い人気を誇りました。対立軸との関係では、政策面は改革一本槍でした。また、クリーンなイメージも人気を助けました。ただ、振り返ると小泉政権時代は世界経済の回復や中国の成長に助けられ、日本経済もバブル崩壊のどん底から這い上がりました。この経済面の安定が小泉政権を支えたことは間違いないと思います。

小泉総理はきっぱりと後進に後を譲り、安倍晋三が2006年に総理になりました。しかし長続きせず福田康夫、麻生太郎と1年ごとの政権交代が続きました。病気、失言など様々理由はありますが、2007年パリバショック、そして2008年のリーマン危機と、世界経済そして日本経済が急転落した時期とも重なります。こうした経済状態が政権運営の閉塞感を生み、早期の交代に追い込まれたことも間違いないと思います。

そして遂に自民党は下野に追い込まれ、2009年民主党政権が誕生したのは記憶に新しいところです。民主党政権が後に「悪夢のような」と言われる低調なパフォーマンスであったことは論を待ちません。そのうえで、民主党政権下の2009年から2012年の間は、世界経済はリーマン危機の後遺症やユーロ危機で低空飛行を続け、加えて日本を東日本大震災が襲いました。この意味で不運な環境下での政権であった点は、少しだけ同情の余地があるのかもしれません。

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そして安倍長期政権へ
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ここからは余り書く必要もありません。2012年に誕生した安倍政権は最長不倒を記録しました。アベノミクスは少なくとも当初人気を集めました。悲願の憲法改正は実現しませんでしたが、安全保障面でも大きく歩を進めました。「成長」と「強い国(美しい国)」というシンプルなメッセージが、彼を忌み嫌う1/3の人たちを押しのけ絶対的な安定政権を築きました。

彼にとって幸運なのは、アベノミクス前半は世界経済もリーマン危機から立ち直る時期と重なったことです。経済の安定が政権を支えたことは間違いないと思います。また、世界第二の経済大国になった中国や暴発リスクを抱える北朝鮮の脅威も安倍総理支持につながりました。逆に言えば、安倍政権末期、そして菅義偉政権を苦しめたのはコロナ禍です。コロナ禍は人命の危機であるとともに、世界経済がリーマン危機時を上回る落ち込みを記録した経済危機でもあります。そうした中、新型コロナウイルス感染症新規感染者数急減と重なった岸田文雄総理は幸運の持ち主と言えるかもしれません。

今回は、政権交代や政権の揺らぎとその時々の経済状況に何某か関連がありそうなこと、経済と関係する対立軸として「改革=成長」と「福祉=分配」があったこと、その他の主な対立軸が「憲法=安全保障」、「政治と金(クリーンさ)」と「公害=環境」だったことを振り返ってきました。次回は、このうち経済に焦点を当てようと思います。

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