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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2021/10/25 06:30  | by Konan |  コメント(1)

Vol.128: 月例経済報告とモノ言う犬


先週金曜日飲みに行き人の多さに驚きました。解除後感染も落ち着いた状態が続き、安心して集まる約束が出来るようになったということでしょうか。私も第6波を気にしつつも、11月中旬まで夜の予定が埋まってきました。

さて、今回は少し間が空いてしまいましたが、15日公表の内閣府月例経済報告を紹介します。次回は日銀金融政策決定会合、次々回は日銀金融システムレポートと、淡々と紹介物を続けます。

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現状:基調判断据え置き
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現状の基調判断は、(微妙な字句修正はありますが)据え置かれました。需要項目をみると、公共投資と輸出が下方修正されていますが、感染も収まる中であえて基調判断を変える必要も無いと考えたのかもしれません。

・基調:景気は、新型コロナウイルス感染症の影響により、依然として厳しい状況にあるなか、持ち直しの動きが続いているものの、そのテンポが弱まっている
・個人消費:弱い動きとなっている
・設備投資:持ち直している
・住宅建設:このところ持ち直しの動きがみられる
・公共投資:高水準にあるものの、このところ弱含んでいる
・輸出:増勢が鈍化している
・輸入:このところ持ち直しの動きに足踏みがみられる

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先行き:少し上方修正
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先行きの基調判断は少し上方修正されました。先月まで下振れリスクに含まれていた「感染症」という言葉がやや格下げされ、また「リスクの高まり」が単に「リスク」に修正されました。需要項目では、輸出に関し「供給面での制約」「原材料価格の動向」という言葉が登場し、下振れリスクに十分注意する必要性が指摘されました。

・基調:感染対策を徹底し、ワクチン接種を促進するなかで、各種政策の効果や海外経済の改善もあって、景気が持ち直していくことが期待される。ただし、サプライチェーンを通じた影響による下振れリスクに十分注意する必要がある。また、国内外の感染症の動向や金融資本市場の変動等の影響を注視する必要がある
・個人消費:感染対策を徹底するなかで、持ち直しに向かうことが期待されるが、感染症の動向に十分注意する必要がある
・設備投資:不透明感が残るものの、成長分野への対応等を背景に、機械投資を中心に持ち直し傾向が続くことが期待される
・住宅建設:持ち直しの動きが続くと見込まれる
・公共投資:弱含みで推移していくことが見込まれる
・輸出:海外経済が改善するなかで、増加傾向が続くことが期待される。ただし、供給面での制約や原材料価格の動向による下振れリスクに十分注意する必要がある
・輸入:持ち直していくことが期待されるが、サプライチェーンを通じた影響による下振れリスクに十分注意する必要がある

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モノ申した財務次官
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暫く前、財務省の矢野事務次官が文芸春秋に「財務次官、モノ申す このままでは国家財政は破綻する」と題する投稿を行い、話題になりました。遅まきながら読んでみました。

私は残念ながら矢野次官と面識がなく、ただ若いころから財政再建論者として知られ、財政再建に関する本を執筆したこともあるとの話しは聞いていました。その持論を全面に展開した内容と受け止めました。

「タイタニック号が氷山に向って突進しているようなもの」など強い言葉を用い、「古代ローマ帝国もバラマキで滅亡(自滅)した」とします。そして「国家公務員は心あるモノ言う犬であらねば」と言います。

主張の内容は財務省が長年訴えてきた内容そのもので新味はありません。少し前に流行ったMMT(modern monetary theory)の対極です。因みにぐっちーは国債暴落論を常に切り捨てていて、その意味ではMMTに近い立場でした。

この問題の難しさは、これだけ財政赤字が膨らみ国債発行が巨額になっても、国債価格が暴落する気配が微塵もないことにあります。矢野次官のような主張はオオカミ少年(あるいはモノ言うオオカミ?!)にしかみえません。経済学界では、この点に関し「複数均衡論」が有力です。同じ財政赤字の状況でも、今のような低位の国債金利を実現できる均衡点と、国債価格が暴落してしまう均衡点の2つがあり、一気に前者から後者に飛ぶ可能性があるとの考え方です。私も直観的にこの説を説得的と感じます。「今日まで大丈夫だから明日も大丈夫」と慢心せず、財政規律に注意を払うべきということでしょうか。矢野次官ほど情熱的に語る積もりはありませんが、本件に関しぐっちーと考えが異なっていたこと、そして旧ひとり言にそう書いたことを思い出しました。

今回はこの辺で。

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One comment on “Vol.128: 月例経済報告とモノ言う犬
  1. taktak より:
    ポジショントーク

    MMTと財政再建論の部分、もやもやしていたので、複数均衡論というのは目から鱗でした。少し勉強してみます。
    結局は財務省としては、狼少年と言われても、ポジションとして財政均衡を謳う役割がある、矢野次官も実は個人的には実は違う考えなのかもしれないのか、と思い始めました。高橋某さんが声高にMMT(とは本人は言ってないかもですが。)を叫び、財務省を批判するのも、実は裏で握られたプロレスだったり。
    とはいえ消費増税といった実害は看過できないですが、そんな見方もあるんだな、と感じました。雑多な感想で恐縮です。。

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