プロが語る世界情勢・政治・経済金融の最前線!

The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2021/10/18 06:30  | by Konan |  コメント(1)

Vol.127: IMF世界経済見透し


今回は12日に公表されたIMF世界経済見通し(World Economic Outlook: WEO)を簡単に紹介しま。IMFと言えば、トップのゲオルギエバ専務理事に関し「世銀時代に中国に有利な方向で圧力をかけた」との疑惑が持ち上がり、辞任も囁かれましたが続投が容認されました。IMF専務理事は欧州から選ばれるとの暗黙の了解があり(ゲオルギエバさんはブルガリア、前任のラガルドさんはフランスなど)、欧州の中には辞任によるポストの空白を心待ちにした人もいたと思います。

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健康、供給、物価
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今回のWEOのサブタイトルは「パンデミック中の回復:健康上の懸念、供給混乱、物価圧力」(Recovery during a pandemic: Health concerns, supply disruptions and price pressures)です。「世界経済の回復は続いているが勢いが鈍化し不確実性が高まっている」(Global recovery continues, but the momentum has weakened and uncertainty has increased)ともされます。

健康上の懸念はまさにコロナ禍のことです。日本でも起きたように、デルタ株の脅威とワクチン接種率上昇が競い合う事態が世界中で起きています。そして、一般論としてはワクチンへのアクセスや政策支援の面で先行する先進国の回復が順調なのに対し、とくに低所得途上国の状況は厳しいままです。

供給混乱は、半導体不足、コンテナ不足、労働力不足などを指します。急激な巣ごもり需要増加の影響で半導体が不足し、物を運ぶコンテナも不足します。コロナの影響で出稼ぎ労働者が帰国してしまった結果、トラック運転手なども不足します。EUを離脱した英国の状況は特に深刻です。供給の混乱が、自動車メーカー等の業績にも悪影響を与えます。

需要増加に供給が追い付かないので、当然物価は上がります。Saltさんのメルマガで詳しく説明されているように、FEDは「そのうち供給力は元に戻り、巣ごもり需要やリベンジ需要も落ち着くだろうから、物価上昇は一時的」と高を括ってきましたが、「インフレ懸念は持続的かもしれない」と徐々に雰囲気が変化しています。因みにIMF年次総会時に開催されたG20財務大臣・中央銀行総裁会議では「中央銀行は、現下の物価のダイナミクスを緊密にモニタリングしている。彼らは、一時的なインフレ圧力を見抜くが、政策スタンスに関する明確なコミュニケーションにコミットしつつ、物価の安定を含む自らのマンデートを果たすために、必要に応じて行動する」とされました。

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2021年は-0.1%下方修正
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2020年に-3.1%と大きく落ち込んだ世界経済は、2021年+5.9%、2022年+4.9%と回復が見込まれます。

このうち2021年は前回7月見通し対比-0.1%下方修正されました。

先進国:2020年-4.5%の後+5.2%成長。回復としては順調で2019年水準に戻る格好ですが、夏場のデルタ株流行の影響や供給の混乱で、米国は7月対比-1.0%も下方修正されたほか(それでも+6.0%成長)、日本も-0.4%下方修正されました(+2.4%成長)。他方で、夏場も好調さを維持したユーロ圏は+0.4%上方修正(+5.0%成長)されるなど明暗が分かれました。先進国全体では7月対比-0.4%下方修正です。

新興国・途上国:2020年-2.1%の後+6.4%成長。7月対比でも+0.1%上方修正されました。ただし、中国、インド、ASEAN諸国を含むアジアは-0.3%下方修正(+7.2%成長)。他方で資源価格上昇に助けられ、サウジアラビア+0.4%上方修正(+2.8%成長)など一部資源国の見通しは上方修正されました。

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2022年は明暗
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2022年(+4.9%)は7月見通しが据え置かれましたが、先進国上方修正、新興国・途上国下方修正とやや明暗が分かれました。

先進国は+4.5%成長と、2021年(+5.2%)対比少し低下するとは言え確りとした成長が見込まれています。7月対比+0.1%上方修正です。来年にはコロナの収束も見通せ、また予算の審議は難航していますが、米国の財政支出も期待されます。

新興国・途上国は+5.1%成長と、2021年(+6.4%)を下回ります。7月対比-0.1%下方修正です。ワクチンの普及の遅れや政策支援の少なさが足を引っ張る格好です。

成長率は「下振れするリスク」が、物価は「上振れするリスク」が大きい(大きくなっている)とされます。新たな変異株の可能性を含め「不確実性が高まっている」ともします。

やや尻切れトンボ的ですが、今回はこの辺で。

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One comment on “Vol.127: IMF世界経済見透し
  1. oda_susi より
    ようやく、来ました?

    長かった。ようやく、来そうです。平成とコロナの次が。

    世界で見ると途上国ワクチンはまだ途上ですが、日本でも変化が見えてきました。大多数の日本人が45歳でクビになり、120歳まで生きるならば、行政があと75年間の面倒を見ざるを得ないので、そこも心配していません。70歳位からの親介護が始まっても、それがメジャーになれば何とかなる筈です、きっと。

    最近脳科学を勉強していると、日本人遺伝子はセロトニントランスポーターや新規探索の遺伝子が、世界一レベルで保守的なようです。要は、欧米人と比べて日本人は、革新的な事は出来ない脳構造(遺伝子)をしている。イノベーションには不向きな遺伝子です。改善的な製造業は、この遺伝子に凄くマッチしたのでしょう。遺伝子は、100年程度では変わり得ません。日本人は何か、この遺伝子に合う次のものを、見つけないとイケナイ。

    それは、何なのでしょう?
    毎度ご主旨から脱線して恐縮ですが、本日はこの辺で。

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