プロが語る世界情勢・政治・経済金融の最前線!

The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2021/05/10 06:30  | by Konan |  コメント(0)

Vol.104: 延長…


今回は別稿を用意していましたが、先週木曜日に超満員の山手線に乗り合わせたことで気が変りました。

ご案内のように、東京の鉄道各社は連休明け6日に小池都知事の要請も踏まえ電車を減便しました。しかし、連休明けで久々に出勤する人の数が予想を超え、電車は超満員となりました。私は本当に久し振りにホームで電車を見送り、その後乗った電車もすし詰め状態。近くに感染者がいたら間違いなく感染するだろうとの恐怖感を覚えました。幸い20分ほどで下車し、帰宅時は電車も空いていました。山手線は翌日は通常運行に戻ったようです(7日は時差出勤のため実体験出来ませんでしたが)。

本件は、リーダーの言葉が空回りし伝わらない典型例です。リーダーの発想は、「減便する」「それを前提に出勤が控えられる」「電車は混まない(空く)」だったと推察します。しかし、実際には減便か否かと関係なく行動が決められ、4月30日は人が少なく問題は起きず、5月6日は問題が起きました。緊急事態宣言や小池都知事の言葉と無関係に、「休みやすい日に(だけ)休む」ことがスタンダードな行動だった訳です。

在り来たりの内容で申し訳ありませんが、在り来たりついでに。

8割おじさんこと西浦教授、残念ながらブレークし損ねましたが(苦笑)一時何度かTV出演した故ぐっちー・故マエストロ・私の高校同級生である土谷教授、最近脚光を浴びている仲田准教授。昨年3月以降様々な試算が行われてきましたが、その骨子はシンプルで、「1人が何人に感染させるか」一定の前提を置き試算が行われます。この数値は「ウイルスの感染力=例えば変異株は旧来のウイルスの1.5倍」と「人々の行動、感染機会」により規定されます。感染者ゼロでウイルスが持ち込まれない・自然発生しない環境であれば、当然感染者はずっとゼロのままです。初期の感染者数が多いほど、1人が感染させる人数が多いほど、感染者数は増えます。しかもネズミ算・指数関数的に!人々の行動が抑制される、ないしワクチン接種率上昇や(当初スウェーデンが目指し、今ブラジル大統領が目指そうとしていると言われる)集団免疫獲得に至れば、感染者数は減少に転じます。

感染すると一定期間後に治癒するか重症化・死亡します。この「期間」「治癒率」「重症化率」により、医療負担が算出されます。

大阪の状況も、インド・ブラジルは素より少し前の欧米に比べればずっとマシです。しかし、まん延防止等重点措置・緊急事態宣言を経ても医療崩壊を防ぐことは出来ませんでした。上記の枠組みで言えば、変異株の感染力の高さとの対比で行動抑制が弱かったこと、医療体制が脆弱なことが背景です。ワクチンの接種は今後急速に進むと思いますが、非高齢者・医療従事者の接種は早くても7月開始です。治療薬は噂には上りますが実用化の目途はありません。

菅総理や都道府県知事に求められることは、

・変異株と旧来のものの違いは何か
・変異株を前提として必要となる我々の行動変容は何か
・ワクチン接種はどうなるか
・医療体制はどうなるか
・行動変容から生じる経済損失をどう補うか

というとても基本的な点に関する明確で分かりやすいメッセージと実践です。菅総理は会見で謝りはしますが、謝れば済むものではありません。安倍前総理ほどでないにせよ、批判されるとムッとすることはTV画面を通じ手に取るように分かります。経済やオリンピック・パラリンピックを優先させたいことも滲み出ます。しかし、「感染を抑え込みワクチン接種率上昇との関係で何とか滑り込み4回目の緊急事態宣言を防ぐ」方が経済への悪影響が小さいことが、定説になりつつあると思います。

先日のオンライン懇親会で話題になったように、日本の感染状況は世界的にみれば大したレベルにありません。医療体制の問題さえ無ければ、喜んでオリンピック・パラリンピックを迎えることが出来たと思います。それが出来ないのは不幸です。ワクチン、医療体制を含め今後半年間の明確な道標を示すこと、このようにシンプルなことすら最早難しいのでしょうか…

超駄文で失礼しました。

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