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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2021/02/22 06:30  | by Konan |  コメント(0)

Vol.94: GDPと月例経済報告


再びグリーン成長戦略をスキップし(汗)、先週公表された、昨年10~12月期のGDPと内閣府月例経済報告を紹介します。

GDPについては、予想を上回ったことに加え、発表当日に日経平均株価が1990年8月以来久し振りに3万円台に乗せたこともあって、話題になりました。この時私はまだ20歳代。年配の方は記憶されていると思いますが、長期金利が上昇しワイドと呼ばれる金融商品(当時の興銀等が発行した利付5年金融債)の金利が8%を付け、店頭に大行列が出来ました。年8%5年間の運用など今では夢のようです。また、この月には日銀が公定歩合を引き上げました。バブル崩壊とともにその後利上げの機会が遠のき、金融政策の指標も公定歩合から市場金利に変更されていったため、これが事実上最後の公定歩合引き上げとなりました。更に言えば、今に思えばこの時既にバブルの崩壊が始まっていました。金利より株価(1989年末にピーク)の方が先を見る力に優れていたということかもしれません。

思い出話しはさて置き、10~12月期の実質GDPは、前期比+3.0%、年率換算+12.7%とかなり高い伸びを示しました。+5.3%だった7~9月期を下回ったとは言え、2期連続のプラス成長です。

需要項目で見ても

・内需の寄与度+2.0%、外需(純輸出)の寄与度+1.0%と、内外需のバランスが取れている
・個人消費が+2.2%と、年末にかけ感染が拡大した割に結構伸びた=その分感染が拡大したと言えないでもありませんが
・設備投資も+4.5%と、前期、前々期のマイナスから復調
・住宅投資は+0.1%とほぼ横ばい
・公的需要は+1.8%と引き続きの伸び
・輸出は+11.1%の高い伸び、輸入は+4.1%

と、この四半期だけ取ればほぼ文句のない数字が並びました。

因みに2020年暦年では前年比-4.8%と極めて大きなマイナス成長を記録しました。また、10~12月期の季節調整済実質GDPの実額は543兆円。2016年10~12月期とほぼ同水準で、4年間分の成長が吹き飛んだ格好です。更に、緊急事態宣言が発動された今年入り後の落ち込みが見込まれます。こう考えると手放しで喜べないということでしょうか。

次に、内閣府月例経済報告です。まさに緊急事態宣言発動の影響が反映された内容となりました。

(現状)
・基調:景気は、新型コロナウイルス感染症の影響により、依然として厳しい状況にあるなか、持ち直しの動きが続いているものの、一部に弱さがみられる
・個人消費:このところ弱含んでいる
・設備投資:このところ持ち直しの動きがみられる
・住宅建設:おおむね横ばいとなっている
・公共投資:堅調に推移している
・輸出:増加している
・輸入:持ち直しの動きがみられる

(見通し)
・基調:緊急事態宣言の解除後も感染拡大の防止策を講じつつ、社会経済活動のレベルを引き上げていくなかで、各種政策の効果や海外経済の改善もあって、持ち直していくことが期待される。ただし、内外の感染拡大による下振れリスクの高まりに十分注意する必要がある。また、金融資本市場の変動等の影響を注視する必要がある
・個人消費:持ち直しに向かうことが期待されるが、感染拡大による下振れリスクに十分注意する必要がある
・設備投資:持ち直し傾向が続くことが期待される
・住宅建設:横ばいで推移していくと見込まれる
・公共投資:堅調に推移していくことが見込まれる
・輸出:増加が続くことが期待される
・輸入:持ち直しに向かうことが期待される

基調判断は、「持ち直しの動きがみられる」から「持ち直しの動きが続いているものの、一部に弱さがみられる」に下方修正されました。需要項目別には、個人消費が「持ち直しの動きに足踏み」から「このところ弱含んでいる」に下方修正、設備投資が「下げ止まりつつある」から「持ち直しの動きがみられる」に上方修正されました。妥当な修正と思います。

2月は早くも終わりが近付き、来月の日銀金融政策決定会合が視野に入って来ました。他方、先週バーチャルでサマーズさんのインフレ警戒発言を直接聞く機会がありました。雲の上の人で直接話したことはありませんが、身近で話を傍聴したことは何度かあります。長期停滞論(secular stagnation)論者だった彼が、本当にインフレを心配していることが伝わりました。

日銀もインフレもSaltさんがメルマガで詳しく追ってくれていますが、私も追随していこうと思います。今回はこの辺で。

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