2021/01/11 06:30 | by Konan | コメント(0)
Vol.88: 今年のこと(2)政治
今年の展望、今回は政治(日本の)です。コミュニティの準レギュラーである永田町さんに付け加えることはありませんが…
前回も、菅政権浮揚の鍵はオリンピック・パラリンピック開催くらいしか思い当たらないと書きました。それほど昨年末にかけての菅政権の支持率低下は急激でした。全ての政権に支持率の上下は付き物で、菅内閣の支持率がオリンピック・パラリンピックを待たずして回復することは無論あり得ます。ただ、安倍内閣終盤を引き摺る形で、国民の信認確保面で構造的な問題を抱えている気がしてなりません。
経緯からみると、派閥も持たない菅さんが総理・総裁に選ばれたことには、安倍前総理の急な退陣、対立候補の石破さんや岸田さんの不人気、他の潜在的候補者の力不足の中、消去法的・棚ぼた的な面がありました。各派閥の領袖からみると、「派閥が動けばいつでも首を挿げ替えることが出来る」との思いが消えない中での総理・総裁就任だったと思います。
それ故に、菅さんは成果を出すことに拘り、携帯料金引き下げ、不妊治療拡充、デジタル庁創設など具体的かつ人気上昇に結び付く政策を矢継ぎ早に打ち出しました。そこまでは良かったのですが、そこで浮上したのが日本学術会議問題でした。
関係者に大変失礼な言い方になりますが、取るに足らない問題で菅総理は意地を張り、かつ訳の分からない説明を繰り返しました。その過程で、菅総理の「権力欲」「頑固さ」「説明下手」などいくつかの欠点が浮き彫りになりました。そして、この問題の対応に政治的資本を費やしました。
そうした中でコロナ禍が急拡大しました。しかし、総理はGoTo維持に固執する姿勢を取りました。このことは、旅行・飲食関係者には大歓迎ですが、国民の多数には不可解なものでした。森友・加計・桜など各種スキャンダルを乗り越えながらも、最後は弱りつつあった安倍内閣が、コロナ禍対応の不手際で急激に支持率を下げたことと同じ構図です。
昨年よく「どの国の大統領や首相がコロナ禍に上手く対応したか」語られました。メルケル首相やアーダーン首相の人気が高い一方、安倍総理は低評価に止まりました。アベノマスクや星野源などの失策はさて置くにしても、「安倍総理の言葉が心に響かない」とよく言われました。菅総理も同様と思います。
作家の村上春樹さんは、あるインタビュー記事の中で「原稿を読むしかしないから」と話していました。一理ありますが、近時は全ての総理が原稿を読んできたとも言えます。元官僚のJDさんや私からみて、総理や大臣が読む原稿や想定問答を書くことは極めて重要な仕事です。そのために多くの時間と労力を費やします。別の言い方をすると、原稿通り読んでもらえないことは大事件です。官僚が書くものが人の心を掴むことは極めて稀です。
それにしても、安倍前総理や菅総理の言葉が響かなさ過ぎる印象も持ちます。二人の個性の問題もあるのでしょうが、選挙での余りの強さ、国会での圧倒的多数に胡坐をかき、「悪夢のような」野党を馬鹿にする姿勢が身についてしまったからではないかと思います。この緊張感が戻らない限り、菅総理の言葉は変わらないように思います。
しかし、野党が選挙に勝つ展望もありません。それだけ民主党政権が酷かった、そのトラウマを克服できないということになりますが、与党との議席差が余りに大きく、森友・加計・桜・日本学術会議を叩く以外に目を引く活動が出来ていないことが原因と思います。悪循環です。
このため、菅総理からみると「解散」も選択肢です。オリンピック・パラリンピック開催が決断できれば、開催前の段階で解散してしまう手もあります。開催・終了後の高揚感の中での解散は既述の通りです。
他方、オリンピック・パラリンピック中止を余儀なくされた場合(再延期は考察外とします)、菅さんで持つか良く分かりません。中止ということはコロナ禍対応に失敗していることを意味します。それでも負けないと思い、一か八か(自暴自棄に)解散する可能性もあります。他方で、党内で菅下ろしが起こるかもしれません。既に4月25日の2つの補選で負けたら政局との発言も飛び出しています。その際の顔になれるとすれば、岸田さんでも石破さんでもなく、河野太郎くらいでしょうか。野田聖子さんは力不足な気がしますし、安倍さんの再々当番はさすがに論外です(ただ待望論もあるようです)。
昔このコーナーで自白したことがありますが、民主党政権発足時の選挙で私は民主党に投票しました。その頃それほど自民党政権に絶望していました。また、その時は民主党に勢いがあり、「もしかすると」との期待感を抱かせました。しかし、その期待は鳩山総理の余りのひどさと東日本大震災で打ち砕かれました。役人仲間(とくに厚労省)も政権に虐められ、愛想を尽かしました。
かつての自民党には党を割って出る活力もありましたが、今の自民党にそうした活気を感じることは出来ません。小選挙区制の帰結なのでしょうか。
こう書いてくると出口は見出せません。あえて言えるとすれば、菅総理にもう少し謙虚さを持って欲しいこと、自民党内で中堅がもっと力を付けて欲しいこと、野党が今度こそスキャンダル叩き以外の政策に真面目に取り組み発信して欲しいこと、などでしょうか。
様々な政治の対立軸があり得るでしょうが、少子高齢化・人口減少の中で経済や社会制度をどうするか、米中対立の中で日本の立ち位置をどう取るか、この2点が最大の論点と思います。こうした点に骨太の考え方を示すことが出来る政党や政治家が登場することを祈りつつ、今回はここで終えます。
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