2020/12/21 06:30 | by Konan | コメント(0)
Vol.85: 日銀短観と決定会合
今回は14日公表の日銀短観、18日公表の金融政策決定会合を紹介します。
まずは日銀短観から。意外に改善しました。代表的な指標である業況判断(ゼロが中間、プラスが大きいほど良く、マイナスが大きいほど悪い)は以下の通りです。
・最も注目される大企業製造業:-27(前回)-10(今回)-8(先行き見通し)
・全産業全規模合計:-28(前回)-15(今回)-18(先行き見通し)
・前回製造業で最悪だった自動車(大企業):-61(前回)-13(今回)-6(先行き見通し)
・前回非製造業で最悪だった宿泊・飲食サービス(大企業):-87(前回)-66(今回)-62(先行き見通し)
輸出が改善した自動車産業の大幅な好転が目を引きます。宿泊・飲食サービスは-66と引続きひどい状況ですが、それでもGoToのお陰か改善しました。全産業全規模合計の先行きは少し悪化を予想しますが、それほどでもありません。
他の指標は以下の通りです。全産業全規模合計の計数です。
・2020年度の売上高は前年比-8.6%とかなりの減少、前回調査対比でも-2.1%の下方修正。
・2020年度の経常利益は前年比-35.3%と大きな減少、前回調査対比でも-9.5%の下方修正。
・2020年度の設備投資は前年比-3.9%と減少、前回調査対比でも-1.3%の下方修正。
・雇用人員判断(マイナスが大きいほど不足感が強い)は-6(前回)-10(今回)-13(先行き見通し)と不足感拡大。
・資金繰り判断(プラスが大きいほど「楽」)は+5(前回)+7(今回)と楽である超を維持。
通常は売上高や経常利益が落ちると業況判断も悪化しますが今回はそうならず、また雇用人員や資金繰りは改善するなど、ややちぐはぐな感じです。ワクチン接種開始など明るい話題はありますが、世界的にコロナ禍の影響が再拡大している状況を見ると、次回調査で再び業況判断が悪化してもおかしくない気もします。
次に今年最後の金融政策決定会合。予想外で「2%を実現するためのより効果的で持続的な金融緩和の点検」が公表され、来年3月に向け検討されることになりました。
まずは景気判断から。
(現状)
・全体:内外における新型コロナウイルス感染症の影響から引き続き厳しい状態にあるが、持ち直している
・個人消費:飲食・宿泊等のサービス消費は依然として低水準となっているが、全体として徐々に持ち直している
・設備投資:減少傾向にある
・住宅投資:緩やかに減少している
・公共投資:緩やかな増加を続けている
・輸出:増加を続けている
(見通し)
・新型コロナウイルス感染症の影響が徐々に和らいでいくもとで、緩和的な金融環境や政府の経済対策の効果にも支えられて、改善基調を辿るとみられる。もっとも、感染症への警戒感が続くなかで、そのペースは緩やかなものにとどまると考えられる。その後、世界的に感染症の影響が収束していけば、海外経済が着実な成長経路に復していくもとで、わが国経済はさらに改善を続けると予想される
(経済のリスク要因)
・新型コロナウイルス感染症の帰趨や、それが内外経済に与える影響の大きさについての極めて大きい不確実性。特に、このところの内外における感染症の再拡大による影響
・企業や家計の中長期的な成長期待が大きく低下しないか
・金融システムの安定性が維持されるもとで金融仲介機能が円滑に発揮されるか
前回(10月)と大きな違いはありません。あえて言えば、輸出の判断がやや強まる一方、このところの感染症再拡大の影響にも言及されました。
政策面では、新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラムが、来年3月末までから9月末まで延長されました。またテクニカルですが、CP・社債追加買入れ枠(これまで7.5兆円ずつ)が合算運用されることになりました。この辺は予想通りです。
そのうえで、上記の通り「点検」が実施されることになりました。やや長くなりますが、引用すると、
「新型コロナウイルス感染症の影響により、経済・物価への下押し圧力が長期間継続すると予想される状況を踏まえ、経済を支え、2%の「物価安定の目標」を実現する観点から、より効果的で持続的な金融緩和を実施していくための点検を行う」
「その際、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の枠組みは、現在まで適切に機能しており、その変更は必要ない」
「この枠組みのもとで、各種の施策を点検し、来年3月の金融政策決定会合を目途にその結果を公表する」
という感じです。
何が行われるか、早くもアナリストが予想を始めています。「枠組みは変えないが長続きして効果がある」ということなので選択肢は限られますが、例えば、
・批判が多いETF買入れの1回当たりの買入れを減らす代わりに長くじわじわ買い続ける
・政府の経済対策に合わせ、デジタルやグリーンへの投資を支援するような枠組みを構築する
・金融機関の低収益環境に配慮し、イールドカーブ・コントロールの長い方を10年間から5年間ほどに短縮し、長めのイールドが立ちやすいようにする
などでしょうか。こうした点検は2016年9月にも実施され、その際はイールドカーブ・コントロール導入という大きな枠組み転換が行われました。今回はそうしたことはないと宣言しているのでマイナーチェンジに止まるはずです。ただ、米国が平均インフレターゲットを導入するなど「進化」を続ける中、フォワードガイダンスの運用も含め様々な検討が3か月間続くことになります。新年の楽しみが出来ました(笑)。
今回はこの辺で。
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