2020/12/14 06:30 | by Konan | コメント(0)
Vol.84: 経済対策
最近は短文続きですが、今回も短く8日に閣議決定された「国民の命と暮らしを守る安心と希望のための総合経済対策」を紹介します。コロナ禍が深刻化し始めた春頃は経済対策が話題を呼びましたが、今回は静かな受け止めだった印象です。自粛疲れならぬ対策疲れでしょうか。「国民の命と暮らしを守る」との言葉自体は真っ当ですが、菅総理の手垢がついてしまった気もします。
今回の対策は総事業規模73.6兆円、うち財政支出分40.0兆円(うち財政投融資を除く国・地方の歳出32.3兆円)、実質GDPの押上げ効果(試算)3.6%と結構大きなものです。ただ、下記のように今年度予算の予備費も含むなど、見掛け倒しとの声もあります。
内容は大きく3つに分類されます。また「万全の守りを固めるとともに、新たな時代への攻めに軸足を移すという、2つの大きな視点からなる」とされます。何となく「二兎を追う者は一兎をも得ず」を思い浮かべる表現です…
1.新型コロナウイルス感染症の拡大防止策・・・財政支出5.9兆円
・医療提供体制の確保と医療機関等への支援、検査体制の充実、ワクチン接種体制等の整備、知見に基づく感染防止対策が主な内容で、コロナ対策に直結します。
2.ポストコロナに向けた経済構造の転換・好循環の実現・・・財政支出18.4兆円
・財政支出の規模も大きいですが、種種雑多な施策が含まれます。
・デジタル・グリーン社会の実現:2050年カーボンニュートラル目標に向けた革新的な技術開発に対して継続的な支援を行うための2兆円の基金の創設が目玉です。
・経済構造の転換・イノベーション等による生産性向上:実質無利子融資などもありますが、金額的には10兆円の大学ファンド創設が目立ちます。
・地域・社会・雇用における民需主導の好循環の実現:ここにGoToトラベル事業の延長、GoToイート事業の食事券追加発行、雇用調整助成金特例措置の延長、2030年5兆円の農林水産業輸出実現など農林水産業活性化、ひとり親世帯臨時特別給付金の年内目途の再支給などが含まれます。
3.防災・減災、国土強靭化など安全・安心の確保・・財政支出5.6兆円
・文字通り国土強靭化を目指します。
上記のほか「4.新型コロナウイルス感染症対策予備費の適時適切な執行」との項目があり、令和2・3年度合わせて10兆円程度とされています。
今回の対策の特徴は以下と思います。
(菅総理や二階幹事長の思いに沿っている)
・菅総理肝入りのGoTo、二階幹事長の持論である国土強靭化が確りと据えられています。
(ごった煮でコロナ対策が万全か分からない)
・政府の経済対策は常にごった煮です。また、今回の対策の3つの柱自体がおかしい訳でもありません。
・ただ、国民の期待は新型コロナウイルス感染症対策であり、そのことを前面に押し出す方が国民の理解も容易だった気がします。何度か書きましたが、医療体制の脆弱さを考えると、経済活動を抑制する一方、影響を受ける飲食等の産業を保護する(ないし構造転換を支援する)ことがシンプルな発想です。そうした焦点がぼけ、一方で医療体制がどこまで強靭になるか分からない、他方で飲食店等がどこまで救済されるか分からない、中途半端な印象が残ります。
・別の言い方をすると、菅内閣が本当に何をしたいか、携帯料金引下げなど一部の政策を除き理解が進んでいる訳ではありません。そうした中、グリーン、イノベーションと言われてもピンと来ないのではないでしょうか?繰り返しですが、グリーンやイノベーションは大事ですし先送りは出来ません。ただ、コロナ対策と分けて、その重要さを確りと説明する方が訴求力がある気がします。
(財務省は引き続き負けたように見える)
・夏の異動で主計局長になった矢野氏(官房長時代、当時の福田次官セクハラ事件対応で批判を浴びた経歴があります)は財政再建論者として知られています。しかし、今回も結構な財政規模となりました。
・第3波に襲われる日本でコロナ対策費を絞ることは容易でありません。相応の財政規模となることは不可避です。そのうえで、「ワイズスペンディング」の用語が何度も登場しますが、真に必要な施策や事業への絞り込みが必要な気がします。「調子に乗って予算を付ける」感じが気になります。
・公明党との歌舞伎で基準は切り上がりましたが、高齢者医療負担引き上げを決めたことで一矢報いたということでしょうか。
やや辛口かもしれませんが、印象を並べてみました。今回はこの辺で。
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