2020/12/07 06:30 | by Konan | コメント(0)
Vol.83: 2冊の本
今回はとても短く、最近出版された2冊の本を紹介します。
安倍・菅政権vs.検察庁 暗闘のクロニクル 村山治著 文芸春秋
ドキュメント日銀漂流 試練と苦悩の四半世紀 西野智彦著 岩波書店
本のセールスを支援する積もりもありませんし、ネタバレもしたくありません。そのうえで、テーマも筆致も取材アプローチも異なるこの2冊には共通の大切なテーマがあると思いました。
検察庁と日銀、全く異質な組織に見えます。その業務は交わりません。更に言えば西野氏の本にも出てきますが、1998年に日銀は検察庁の捜査を受け職員が起訴され、敵対しました。
しかし、ひとつ共通点があります。検察庁も日銀も「独立性」がキーワードです。行政と司法の接点に位置する検察庁には総理を起訴する権限があります。日銀は政府が嫌がる時でも利上げすることが可能です。
現実にはとくに「人事」面で政府が強く関与します。村山氏の本では、安倍政権退陣のひとつの契機となった黒川氏の定年延長問題を始めとする官邸と検察庁の間の人事抗争が描かれます。西野氏が対象とした期間、日銀は松下、速水、福井、白川、黒田の5人が総裁を務めました。松下総裁は不祥事を理由に辞任、速水総裁は途中で辞任騒ぎを起こしました。福井総裁は村上ファンド問題で辞任の瀬戸際となりました。白川総裁はごく短い日数ですが任期前に退任しました。そして当時の安倍総理の肝入りで黒田総裁が誕生しました。
日本の制度の中で、検察庁や日銀が完全に独立することは考えられません。政府、国会、ひいては国民の目で牽制されます。その牽制の度合いが強まるか、逆に言えば検察庁や日銀が自主性をどこまで確保できるか、最後は検察庁や日銀が真っ当な実績を挙げられるか否かに依存します。検察庁の場合、デュープロセスを順守する中で権力に怯むことなく淡々と捜査や起訴を行えるか、日銀の場合、デフレでもインフレでもない健全な経済と金融システムの安定を実現できるかが評価軸でしょうか。
検察庁は今桜を見る会問題で安倍前総理にどう対峙するか問われています。日銀は新型コロナウイルス感染症で傷付く日本経済の舵取りの一翼を担います。この2つの組織に一段と注目したいと思わせた2冊でした。
超短いですがこの辺で。
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