2020/11/16 06:30 | by Konan | コメント(0)
Vol.80: 日銀と金融庁の地域金融機関支援策
今回も短く、日銀と金融庁の地域金融機関支援策を紹介します。
日銀は、10日に「地域金融強化のための特別当座預金制度の導入について」を公表しました。また、まだ公式な公表はありませんが、金融庁も似た制度を検討しており次期通常国会に法案が提出されるとの報道が12日にありました。
公表された日銀の制度は、地域金融機関の経営基盤強化に向けた取り組みを後押しするため、3年間の時限措置として、日銀に預ける当座預金に+0.1%の金利を付すというもので、対象は「地域経済の持続的な発展に貢献する方針であること」and「一定の経営基盤の強化を実現することor経営統合等により経営基盤の強化を図ること」を満たす地域金融機関です。
報道された金融庁の政策は、金融機能強化法を改正し、再編の際に必要となるシステム統合費用を預金保険機構の剰余金を原資に30億円ほど補助するというものです。
日銀の(必要以上に?!)格調高い公表文では、「地域の企業や家計が活力を高め、地域経済ひいてはわが国経済が持続的に発展していくために、地域金融機関の役割を欠くことは出来ない」とされ、「その際、必要になるのは、将来にわたって地域を支えていくための十分な資本と収益力を確保していくこと、地域が抱える様々な課題を解決する付加価値の高い金融サービスを提供していくことである」とされます。
考えてみると、地域金融機関が苦しむ背景は日銀の金融政策で、その超本人から差し伸べられた救いの手に地域金融機関も戸惑っているかもしれません。また、仮に1千億円当座預金を預けたとしても、得られる金利収入は3年間で3億円です。雀の目の涙です。これに比べれば、報道された金融庁の案の方に有り難味があると思います。そのうえで、日銀がこうした施策に踏み切り、同じ週に金融庁の案が報道されたことは偶然とは思えず、何らかの連携を感じます。また「地銀再編」を唱えると言われる菅総理の思いに応えたとも言えます。
さて、ややテクニカルな話しを。金融政策に興味がある方からみると、「これで今後マイナス金利深掘りは無くなったのか」という疑問が湧くと思います。これまで黒田総裁は、「必要があれば更なる緩和を躊躇しない」と発言し、その際のメニューにマイナス金利深掘りを含めていました。片方で+0.1%を付利し、他方でマイナス金利幅を拡大することがあり得るのか?という疑問です。
「テクニカル」と書いたのは、あまり知られていませんが、日銀の最高意思決定機関である政策委員会(会社なら取締役会でしょうか。黒田総裁はじめ9名で構成されます)は、2種類の会合を開催します。ひとつは有名な金融政策決定会合で、年8回開催され、金融政策に関する決定を行います。もうひとつは俗称「通常会合」と呼ばれる金融政策以外の重要事項(例えば日銀の予算など)を決定する会合で、毎週2回(も)開催されます。今回はこの通常会合で決定されました。要は「金融政策とは違うよ」と言う訳です。90年代以降の日本の金融危機の際、日銀特融が何度も発動され金融システムの崩壊を防ぎましたが、これも通常会合の決定でした。金融政策の選択肢を縛らないという意味合いもあって、今回通常会合で決定されたのだと想像しています。
今回は以上です。
米国は何となくトランプ大統領も「転進」を図る気配が出てきたように思います。JDさん如何でしょうか?早く落ち着いて欲しいと思いますが、ジョージア州の決選投票でよほど神風が吹かない限り、上下院のねじれは不可避のようですね。
気になるのはコロナの感染拡大です。春頃に比べ対応能力が高まったことは間違いないと思いますし、今のところ緊急事態宣言が必要とも思いませんが、医療機関の方々の疲労も高まっているように思います。医療体制が崩壊しないか否かが鍵と分かってきましたが、この点が大丈夫か気になるこの頃です。
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